プログラマティック広告に「火がついている」?:Google CEO発言を深読みしてみた

この記事は、スペイン語学習サイト「スパニッシュ・ディクトコム(SpanishDict.com)」と「フレンシア(Fluencia)」を運営している企業キュリオシティー・メディア(Curiosity Media)のクリス・カミングスCEO(最高経営責任者)による寄稿です。

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Googleのサンダー・ピチャイCEOは先日、プログラマティック広告に「火がついている」と発言した。これはもちろん、プログラマティック広告売上の急激な成長に言及してのことだ。だが、「プログラマティック広告には広告品質に重大な問題が多く、業界に混乱をきたしている」という意味にも解釈できる。

音声の自動再生から、モバイルのリダイレクト、表示の遅い広告、データ漏洩やポップアップにいたるまで、プログラマティック広告は、インターネット全体でユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)を火あぶりの刑にさらしているのかもしれない。業界の話題が急速にアドブロックへと移行しているが、それとタイミングが同じなのは偶然ではない。アドブロックは、ユーザー体験の低下の派生物だ。パブリッシャーが自分で広告を配信すれば、こうした問題は解決できるのだろうか? そんなことは実現可能なのだろうか?

広告配信をやめたパブリッシャー

その昔、パブリッシャーたちは自分で広告を配信していた。広告業者と契約を結び、クリエイティブ(広告素材)をアドサーバーにアップロードすると、サイトに広告が配信された。ところが、プログラマティック革命のなかで奇妙なことが起こる。パブリッシャーたちは広告配信をやめ、JavaScript(ジャバスクリプト)で記述された広告タグを挿し込むようになった。

このJavaScriptへの移行は、最初のうちは良いことのように見えた。JavaScriptはデータを集め、アドエクスチェンジに広告をリクエスト(要求)し、広告がレスポンス(返答)される。実にシンプルだ。だが、水門を開き大洪水が起こる原因を作ってしまったことに、我々はほとんど気づいていなかった。

いま、いくつかのサイトでは、広告を1つだけロードすることを目的としていたはずのJavaScriptが、50以上ものファイルを次々とリクエストできるようになっている。データ追跡、Webビーコン、ページアナライザー、ビューアビリティー(広告の可視性)監査、そして広告そのもの、すべてがJavaScriptを介してやってくる。

より広い視点で見ると、広告の増大はインターネット全体の速度低下の原因になり得る。Webリサーチ企業HTTPアーカイブ(HTTP Archive)が過去4年間にわたって収集したデータによると、上位1000個のWebサイトからの総リクエスト数は、過去4年のあいだに40%以上も増加し、1ページあたり平均130件のリクエストをしている計算になるという。

ユーザー体験の低下という問題

JavaScriptベースのアプローチと、広告素材やマクロがアドサーバーに挿入されていた時代とを比較してみよう。かつては、1つの広告へのリクエストに対して、1つのファイル、つまり要求された広告が返されていた。そして、たぶんそれより重要なのは、昔は、Webサイトに現れるものをパブリッシャーたちがしっかり見張っていたことだ。

ユーザーを自動的にアプリストアへリダイレクトするような広告素材を挿入する者はいなかった。ユーザーの許可なく動画を再生し音声を鳴らし始めるようなこともなかった。パブリッシャーたちは、提示される広告を管理し、ユーザー体験も管理していたのだ。

ユーザー体験の低下という問題を排除しながら、「インプレッションベースでシームレスに広告売買を自動的に行う」というプログラマティック広告の利点を維持していくことは可能だ。だが、そのためには業界全体が変わる必要がある。まずはアドサーバーが、トラフィックを処理するだけのツールから、サーバーサイドのリアルタイム入札(RTB)プラットフォームへと進化しなければならない。

リアルタイム入札への新しい経路

アドサーバーは、広告業者が大量のトラッキングピクセルをロードしなくてもすむように、独自に検証可能な、信頼できるインプレッション解析やビューアビリティー解析を提供しなくてはならない。

パブリッシャー側もまた、こうしたリアルタイム入札サーバーをDSP(デマンドサイドプラットフォーム)用のマーケットプレイスにつなぎ、業界全体を通じてトラフィックを購入できるようにする必要があるだろう。最後に、交換されるものがJavaScriptではなく実際の広告になるように、リアルタイム入札へのアプローチをアップデートする必要がある。

驚きの展開も期待できる。もし、よりよいユーザー体験を提供するアドサーバーをパブリッシャーが自分でホスティングするようになれば、アドブロックという問題解決への大きな突破口ができるかもしれない。パブリッシャー自身が提供している広告は、アドブロッカーの標的になりにくいからだ。

JavaScriptの提供停止は、ユーザー体験の新時代の幕開けを意味する。1つのリクエストに対して1つの広告が提供される。これこそ、ユーザー体験を焼き尽くそうとする火を消し、反対に売上げ増加に火をつける鍵だ。

Chris Cummings(原文 / 訳:ガリレオ)
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