「媒体社のアドテクプロバイダー依存は、度を超している」:ワシントン・ポストのジャロッド・ディッカー氏

「ワシントン・ポスト(The Washington Post)」でコマーシャルプロダクトとテクノロジーの責任者を務めるジャロッド・ディッカー氏は5月25日(米国時間)、「Slack(スラック)」上で開催されたタウンホールミーティングに参加し、有料会員「Digiday+」(日本版は未対応)のメンバーに話をしてくれた。

ディッカー氏は、米DIGIDAYの編集者とDigiday+のメンバーに対し、ワシントン・ポストのアドテクへの投資やさまざまな編集業務におけるテクノロジーの導入について説明。また、プラットフォームやアドテクなど、さまざまな分野の取り組みでジェフ・ベゾス氏が同紙にどのような影響を与えたかを語ってくれた。

この記事では、ディッカー氏が話してくれた重要な内容の一部を紹介しよう。

実験することが大切だ

「これは言い古されたことのように聞こえるかもしれない。だが我々は、社内のすべてのテクノロジー関連部門が、業務内でも業務外でも、リスクを取るのを厭わないようになってほしいと考えている。我々の重要な目標は、編集部門、営業部門、研究部門を含む全社で、テクノロジーの導入を進めることだった。そのような取り組みを通じたテクノロジーの導入が、それぞれの業務のやり方に影響を与えている」。

アドテクを所有することは、いくつかのメリットをもたらす

「自社でアドテクを開発すれば、市場で(自社を)差別化し、いまは存在しないものを創り出せる。そのおかげで可能になったのが、ひとつはベンダーにかかる費用を節約すること。もうひとつは売上を生み出すテクノロジーをコントロールすることだ。外部のテクノロジーを利用することは必要だが、売上を増やすためにパブリッシャーがサードパーティーのアドテクにどれだけ依存しているか考えると、度を超しているとしか言いようがない。彼らはあまりにもコントロールする力を失っているのだ。我々は(制御力をもつことで)アドテクの「使いどころ」を明確にできるようになった。だから、いままでより高速なレンダリングシステムを開発し、軽快な動作を実現している。ブランドがパブリッシャーのように振る舞えるテクノロジーを開発しているのだ」。

こうしたテクノロジーの利用を自社だけに制限しない

「(ワシントン・ポストの研究開発チームである)レッド(Red)について言えば、どのテクノロジーもワシントン・ポストだけに利用を制限していない。表示機能(ポストパルス[Post Pulse])、動画広告(フレックスプレイ[FlexPlay])、パフォーマンス改善(ゼウス[Zeus])などのテクノロジーは、ワシントン・ポストのプラットフォームから切り離されている。レッドから見れば、ワシントン・ポストは、こうした製品の開発やストレステストを行うための実験場だ。その目標は、市場に影響を与え、あらゆるものを誰もが利用できるようにすることにある。『アークパブリッシング(Arc Publishing)』プラットフォームは、ワシントン・ポストのさまざまな開発チームがそれぞれのブランドのもとで構築し、外部にライセンス提供しているテクノロジーだ。この製品には、編集室に適したもの、ブランドに向けのもの、収益を重視したもの、分析用のものなどが存在する。我々の1カ月のユニークビジター数は8000万~1億人だ。したがって、あらゆる製品をテストし、さまざまな形で起こる市場の変化を確認するのに、最適な場所となっている」。

ベゾス効果はフォーカスすること

「我々には、フォーカスの維持に役立つジェフィズム(Jeffisms:ベゾス氏が口にした言葉を指す社内用語)がたくさんある。(アドテクへの投資は)ベゾス氏の影響だ。パブリッシャーがこの市場で抜きん出た存在になるには、さまざまなチームに投資する必要がある。しかし、そのために自社の中心的事業へのフォーカスが邪魔されることは望ましくない。組織の影響を受けるとしても、本当の価値をもたらすには独自の影響力をもつ必要があるのだ」。

プラットフォームは、短期的なリターンを得るためだけのものではない

「この全社共通のテーマはジェフの影響だ。そして私の考えでは、このおかげで、我々はプラットフォームに対して運用的なアプローチより教育的なアプローチを優先することができている。パブリッシャーの90%は、GoogleのAMP(Accelerated Mobile Page)やFacebookのインスタント記事から短期的なリターンを得ようとしている(たいていの場合、これらはCPMよりもリターンが大きい)。もちろん、我々もこうしたことを気にかけているが、我々にとってもっと重要なことは、そこから何を学べるか、学んだことを活用して製品や環境をどう改善できるかということだ。たとえば、『プログレッシブウェブアプリ(PWA)』『フューズ(Fuse)』『ゼウス』といった製品はみな、プラットフォームの影響を受けている。そしてもちろん、我々はいまもプラットフォームを利用して、実験を行っている。その目的は、サブスクリプションを拡大しながら『Facebook オーディエンスネットワーク(Facebook Audience Network)』やバックフィル(空き枠への広告配信)を利用して、その延長線上で売上を増やすことだ」。

Aditi Sangal(原文 / 訳:ガリレオ)