メディアの本質的な価値はどこにあるのか?:パブ研が2017年の活動内容を発表

パブリッシング業界のサスティナブルなビジネスのエコシステム構築を目的とした、パブリッシャー・マネタイゼーション研究会。6月12日、今年で3年目となる2017年度の新体制と、スポンサーによる分科会の提供についての発表が行われた。

今年度、パブリッシャー・マネタイゼーション研究会が新しい取り組みとして実施する分科会は、アウトブレインジャパン株式会社、アマゾンジャパン合同会社、株式会社エスワンオーインタラクティブ、コムスコア・ジャパン株式会社、トレジャーデータ株式会社、PubMatic株式会社、株式会社Viibar、の7社がスポンサーとして提供することになる。

それぞれのスポンサー企業は今年度に年3回の分科会を開催し、参加パブリッシャーに向けてマネタイズのソリューション支援を行なう。当研究会の代表幹事、株式会社デジタルインテリジェンスの代表取締役、横山隆治氏は、「パブリッシャーが自社のデジタル資産をマネタイズできる施策を、包括的に学べる場を提供する」と冒頭の挨拶で発表した。

また、DIGIDAY[日本版]を運営する株式会社メディアジーンの芹澤樹は、「枠の価値を上げること、そしてそれを実現するためには安易な安売りはせず我慢する事が重要であり、そのためにはディスプレイ広告の収益以外のビジネスモデルを並走して構築することが必要になる。本年度はこの分科会を通じて媒体の本質的な価値をマネタイズする手法を見つけていきたい」とメディア各社へ呼びかけた。以下で、12日に発表された今年度の分科会の内容を紹介する。

各スポンサーの分科会

ネイティブネットワーク分科会
アウトブレインジャパン株式会社
クライアントとパブリッシャーのニーズを合わせていき、タイミングを重視したネイティブコンテンツの体験と、ユーザーがコンテンツを消費した後の動き、ポストクリックエンゲージメントを評価の対象に、コンテンツ戦略のインサイトを提供する。最終的にはCPCが100〜200円になるようなPMPを作れるようインフラ提供して支援を行なう。

アフィリエイトビジネス分科会
アマゾンジャパン合同会社
アフィリエイトを活用することで、ディスプレイ広告だけではないマネタイゼーション施策をパブリッシャーが展開できるよう支援。また、より適切なアフィリエイトビジネスを推進するためのサポートを行っていく。

パブリッシャートレーディングデスク分科会
株式会社エスワンオーインタラクティブ
パブリッシャーの営業支援、膨大にあるコンテンツ分析、商品開発、プログラマティック領域のマネジメントサービスを提供する。

オーディエンスメジャメント・アドベリフィケーション分科会
コムスコア・ジャパン株式会社
自社がもつインターネット視聴率、アドベリフィケーションサービスを活用したデータの知見を、分科会をとおしてパブリッシャーに知ってもらい、マネタイゼーションに活用。オーディエンスメジャメント(インターネット視聴率の)の概要や使用動向、国内外の活用事例などのデータを使って市場の可視化、そして、意思決定に繋がるデータを提供する。

Customer Data Platform分科会
トレジャーデータ株式会社
ドメインをまたいでユーザーを特定しにくくなるときに自社のソリューションでサポート、さらに、スポンサー企業とソリューション連携し、パブリッシャーがファーストパーティデータをどう活用していけばいいのかを支援し事例を作る。

プログラマティック分科会
パブマティック株式会社
パブリッシャーサイドのプラットフォームとして、プログラマティックがどれほどマネタイズの面で価値のあるビジネスになるのかを同社のグローバルイベントである「PubAcademy」の場を活用して紹介していく。スポンサー企業と連携したPMP提供を行なう。

動画活用分科会
株式会社Viibar
動画コンテンツの明確な事業計画を作れるサービス提供を目標とする。分科会では動画をどう作って、どう広め、マネタイズしていくのかの知見を共有。再生数の確保だけでなく、その次にどうすべきかを既存クライアントまたは参加メディア企業と取り組む。自社のケーススタディーを元に活用方法を紹介する。

目的は広告枠の最適化以上のマネタイズ方法を見出すこと

後半には当研究会の幹事によるパネルが行われ、メディアの価値の底上げについてどういったエコシステムが必要なのかを議論した。幹事の1人の前川洋輔氏は、「いつもの在庫をPMPに出すだけで高く売れるというのは、実態からかけ離れている。むしろ、もっとも質の悪い在庫がその媒体の評価となり、結果として広告主が掲載を止める判断をすることもある。広告枠だけを最適化し続けても、もはや収益の安定化にはつながらない。パブリッシャー各社の価値を最大化するためには、ディスプレイ広告以外の要素であるコンテンツやデータ等の様々なマネタイズ手法を、包括的に取り入れるべき。分科会を通じて、メディアの価値の最大化に皆さんと取り組んでいきたい」と、今年度の目標について話した。

同じく幹事の日本経済新聞社の國友康弘氏は、「広告担当者はもちろん、それ以外のスタッフもマネタイズを意識する目線をもつべき。一方で、『ウチと組めばこれだけ売上があがる』というテクノロジーベンダーの話は、安易なだけに、結果として自分たちの首を絞めることになる。メディアの努力を前提として、自社に適したテクノロジーを取り入れることではじめてマネタイズはうまくいく。そのための知見を分科会で学んでいきたい」とコメントした。

また横山氏は、「プログラマティック広告運用がより普及することで、ブランドごとに発注することはナンセンスになるはず。複数ブランドをもつ企業は、ブランド同士が入札でせり上げている状況がある。それをバルクで掲載面を購入し、ブランドを横断して最適なターゲティングをできるようになるべき。そこで蓄積したオーディエンスデータを参考に、パブリッシャーはコンテンツ開発を行える。それを一緒に研究したいと思っている」と語った。

今回、分科会を主催するスポンサー企業のひとつ、トレジャーデータの高木一成氏は、「ある媒体でユーザーが広告を見たが、最終的には違う媒体の面でコンバージョンが発生したとなると、そのリファラーが取れておらず、データの分断が起こる。それを、テクノロジーベンダーと協力して可視化できるソリューションで支援する」と分科会のテーマを説明。ほかにも、6つの分科会がそれぞれのスポンサーがもつ強みをもとに、コンテンツ戦略とデータのマネタイゼーションについて、本来パブリッシャーが評価されるべきタッチポイントを明確化し、実際に事例を作ることに取り組んでいく。

Written by 中島未知代
Image from GettyImages