独ニュースアプリ「アップデイ」、ローンチ半年の成績表:媒体社発のキュレーションサービス

サムスン(Samsung)とドイツのメディア企業アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)のニュースアグリゲーター共同事業で、3月に正式にローンチしたアプリ「アップデイ(Upday)」。このアプリには、パブリッシャーがプラットフォーム企業からその権力を奪い返す狙いがある。しかし、「アップデイ」のユニークユーザー数は増加しているものの、まだパブリッシャーの収益に大きな影響を与えるに足る数とはいえないようだ。

「アップデイ」はアンドロイドアプリで、サムスンの最新スマートフォン、ギャラクシーS7(Galaxy S7)にプレインストールされている。「デイリー・テレグラフ(The Daily Telegraph)」や「BBCニュース(BBC News)」「フィガロ(Le Figaro)」「デア・シュピーゲル(Der Spiegel)」、アクセル・シュプリンガーの出版物など、パブリッシャー1200社のRSSフィードからニュースを集約している。コンテンツは現地の編集チームがピックアップした、「知るべき(Need to Know)」ニュースと、ユーザー個人の好みに合わせてアルゴリズム経由で提供される「知りたい(Want to Know)」ニュースの2つに分かれている。

同アプリのこれまでの成長は目標を上回ると主張している。だが、「ガーディアン(Guardian)」のマネージングディレクターで、テック&メディアネットワーク担当元責任者でもあるロビン・ヒュー氏は、これまでユーザー数を公表していない。同氏の7月のコメントによれば、アップデイの日間ユニークユーザー数は、英国のEU離脱の是非を問う国民投票が行われた月に倍増したという。

利用時間は拡大している

ヒュー氏は、米DIGIDAYに次のように語った。「衰えは見られない。そうした水準のユーザーアクティビティを維持・拡大することに成功してきた。鈍化の兆しはない。『アップデイ』を知れば、その有用性をわかってもらえる」。

これは、アプリ市場分析会社アップアニー(App Annie)のデータと一致する。同社のデータによると、7月は、世界全体の月間ユニークユーザー数が史上最高の25万人だった(一方、「アップデイ」の社内データでは、300万人に近いとされる)。サムスンのモデルがリリースされた3月にユーザー数が急増して以来、数字は減少していない。

アップアニー(App Annie)のシニア市場アナリストであるサム・チェイニー氏は、次のように語る。「もっとも人気が高いニュースアプリというほど不動の高さには達していないが、引けを取ってはいない。ニュースは人が殺到する分野なので、『アップデイ』は、ほかの中規模ニュースアプリと難なく共存している」。

「英国のニュースアプリ市場を一瞥すると、ダウンロード率は鈍化してきている。しかし全体的にみると、人々のアプリ利用時間は1日2~3分間で、前年の倍になっている。『アップデイ』の場合もそれに近い数字だ」とチェイニー氏は付け加えた。

読者は、ニュースアプリに1日約2~3分費やしており、「アップデイ」もそれと同程度だ

トピック選定は多面的に展開

もっとも、「アップデイ」の潜在ユーザーは小規模とされるが、これは対象がアンドロイドユーザーで、イギリス、フランス、ポーランド、ドイツの4カ国でしか利用できないためだ。ドイツに約70人編成のチーム、それ以外の国には、約7人構成の現地チームが稼働している。

今後の計画では、編集者がピックアップした記事のほかに、ユーザーの好みに基づいてアルゴリズムが選んだコンテンツも提供していく。人とアルゴリズムがニュースを集約するこのモデルは、微調整が必要であることは明らかだ。「編集者による掲載記事の選択に偏りがある」として批判を浴びたFacebookは、話題のトピックをピックアップする「トレンド」機能担当ニュースチームを解雇したが、その後、デマ記事がトレンドに表示される事態になった。

デジタルエージェンシー、デジタスLBi(DigitasLBi)のモバイル担当責任者イリコ・イライア氏が指摘するところでは、AppleのNewsやTwitterは、地域の編集チームがキュレーションを行うことで、コンテンツに地域色をもたらしているニュースプラットフォームだ。

「すべてのプラットフォームは、ニュースに簡単に素早くアクセスできるようにしなければならない。端末のニュースサイトにアクセスするだけで、そのサイトが自動的に絶えず更新される。この機能はサムスンに価値をもたらし、人々がモバイル契約を結び続ける理由にもなる」と、イライア氏は語る。

「アップデイ」の強味と弱味

その反面、アンドロイド端末の購入を是が非でも避ける者もいる。Appleの閉鎖的なエコシステムと比べると、キャリア次第でプレインストールされたアプリが肥大化する可能性が高いからだ。それに、プレインストールされているからといって、利用されるとは限らない。

「アップデイ」におけるもうひとつの大きな違いは広告だ。現在は、「アップデイ」のカード10枚ごとに1つの広告を提供しているが、近い将来、UXを詰め込みすぎないように、フォーマット数を増やす意向だ。アドブロックされることなく、「アップデイ」のローカルの販売チームによって取引される。

さらに、該当する国の法によっては、プラットフォームが稼ぐ広告売上の5%を、パブリッシャーに支払う計画を立てている。アクセル・シュプリンガーは、利益を生み出すようになるまでの方策として、売上の一部をロイヤリティとして徴収し、貯蓄している。同社は、Google検索結果の下にテキストの一部が表示されることを理由に、Googleニュースへの掲載を拒否し、その後撤回したものの、また掲載を再開するという歴史があるため、ニュース集約に対する報酬を提供するのもうなずける話だ。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)