プレミアリーグ、ライブストリーミングに舵を切る

英プレミアリーグの幹部らは、ライブストリーミングの直接配信に乗り出すべきか、それとも、放映権料が高騰しているテレビ中継にこだわり続けるべきかを検討しているようだ。

この件に詳しい情報筋によれば、プレミアリーグは、ファンに直接試合をストリーミング配信することによって、テレビ局との契約から得ている莫大な利益が大きく損なわれることにならないかを評価する予定だという。この決定がなされたのは、プレミアリーグの下位リーグであるイングリッシュ・フットボールリーグ(English Football League:以下、EFL)のストリーミングサービスが、英国とアイルランド以外の地域に展開されることが決まってからわずか数週間後のことだった。ただし、EFLと違って、プレミアリーグにはOTT(オーバー・ザ・トップ)サービスの早急な展開を余儀なくされるような商業的プレッシャーはない。

もはや時期の問題

プレミアリーグは、2016年から2019年まで試合の放映権料として、82億ユーロ(約106億ドル)という莫大な額をテレビ局から受け取る。そのためリーグ幹部らは、こうした契約を損なう可能性がある取り組みには消極的だ。だが、ライブストリーミングが根本的な不均衡状態を是正する手助けになる可能性があるという考え方が、プレミアリーグのなかで受け入れられはじめている。試合の放映権料はうなぎのぼりに上昇しているが、英国のスカイ(Sky)や米国のNBCといったテレビ局が放送する試合の視聴者数は減少を続けているからだ。

そのため、プレミアリーグの試合が視聴者に直接ストリーミング配信されるのは、可能性の問題ではなく、時期の問題となっている。いま議論されているのは、どのようにストリーミング配信を行うのかということだ。FacebookやAmazonやTwitterといった企業に配信を依頼すれば、試合の視聴に関するデータは彼らのウォールドガーデン(閉ざされた壁)の向こう側に行ってしまうことになるだろう。だが、自前で独自のサービスを手がければ、コストとサービスの拡大によって利益が損なわれるという懸念がある。

プレミアリーグとともに仕事をしている情報筋によれば、後者に近いオプションが選ばれる可能性が高いという。つまり、独自のサブスクリプションサービスを一から構築するというギャンブルに出るのではなく、OTTサービスを手がけるスポーツメディアプロバイダーと合弁事業を立ち上げることになりそうだ。ただし、放映権料収入が大きく損なわれることがないように、比較的小規模な市場からはじめることになる。

具体的な実施プラン

NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)は、メディア企業のパフォーム・グループ(Perform Group)と提携することを5月に発表したが、プレミアリーグが構築を目指すCtoCビジネスもこのような形になる可能性が高いと、情報筋は述べている。

「今回の(NFL)の契約では、オーストラリア、アルゼンチン、韓国など100を超える市場で試合をストリーミング中継するために合弁事業が設立され、パフォームが(NFLの)CtoCサービスを売り込むことになっている。プレミアリーグも、英国外の市場でNFLと同じような取り組みをしたいと考えている。なぜならこうした市場では、人々がテレビに費やす時間がこれ以上増えそうにないからだ」と、この情報筋は説明した。

プレミアリーグの関係者は、ライブストリーミングに進出する可能性がある地域として、テレビを観る主な手段としてモバイル視聴が急速に普及しているアジアの小規模市場に以前から言及している。スカイやNBCのような放送局は、FacebookやTwitterといった企業とライブストリーミングのテストを行っているが、プレミアリーグの幹部らはこうした取り組みを傍観しているのが現状だ。

プレミアリーグは、ライブストリーミングに進出するにあたって、Netflix(ネットフリックス)が切り開いた道を忠実にたどれば、数百万ドルの利益を上げられるだろう。マイクロソフトのスポーツビジネス担当ゼネラルマネージャー、セバスチャン・ランセストリメーレ氏は、2017年初頭に開かれたイベントで、大手のフットボールクラブがストリーミング大手のサブスクリプションモデルを模倣することに成功すれば、収益を56倍に拡大できると述べた。

アジアが今後のカギ

プレミアリーグがライブストリーミングについて慎重に検討している事実は、大きな放映権契約の期限が近づくなかで、ほとんどの権利者にプレッシャーがかかっていることを示している。こうした契約のほとんどは2020年頃まで続くため、そのときまでは、プレミアリーグの幹部はライブストリーミングと一定の距離を保ち続けるだろうと語るのは、大手エージェンシーのハバス・メディア(Havas Media)が所有するスポーツエージェンシーのケイク(Cake)でCEOを務めるエイトリアン・ペテット氏だ。

「オンデマンドストリーミングサービスへの取り組みは急速に進んでいるが、切り替えが次の放映権契約の締結と同時に起こるかどうかはわからない」と、ペテット氏は語っている。「国外の市場、とりわけアジアが、今後の方向性を強く示唆することになるだろう」。

この件についてプレミアリーグにコメントを求めたが、本記事の公開前に回答を得ることはできなかった。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)