競合メディア間でデータを共有しあう、ポルトガルの事例:デュオポリーへの対抗策

苦しいときには、競い合っている者たちが共通の敵と戦うために、奇妙な同盟を組むことがある。2016年にGoogleとFacebookがデジタル広告の成長の68%を占めたポルトガルでは、商業メディア企業のトップ6社が、競争を脇に置いて、メディア企業間でログインデータをプールしはじめるという。

「インプレザ(Impresa)」「グローバル・メディア(Global Media)」「コフィナ(Cofina)」「メディア・キャピタル(Media Capital)」「パブリコ(Publico)」「ルネッサンス(Renascena)」の6社は、ポルトガルのインターネット月間アクティブユーザー650万人の85%を占めている。このメディア6社は、2年前から「ノーニオ(Nonio)」プロジェクトについて協議を続けてきた。

そのプロジェクトでは、2017年夏からインターネットユーザーに対して、各社メディアサイトへログインするよう呼びかけることが計画されている。ログインは1回だけでよく、その1回で、各社が所有する雑誌、ニュースブランド、テレビとラジオのオンデマンドサービスといった数百のサイトで認識されることになるようだ。

プロジェクトの全容

「インプレザ」でデジタルディレクターを務めるジョアン・パウロ・ルス氏は、「Facebookなどのプラットフォームが行っている強制的なログインを求めない場合、ブラウザのクッキーだけが頼りとなり、総オーディエンスの平均16~18%にしかリーチできない。これは大きな制限となる。データを集めても、これでは不十分だ」と語った。

ユーザーはFacebook、Twitter、LinkedInなどを通じたログイン(ルス氏によると、約半分がソーシャルログインを選択するという)と、年齢と性別を入力する登録を選択できる。ログイン後は、パブリッシャーがデバイス、行動、購入のデータや、Webサイトのセマンティックデータやコンテキストデータを収集。データは独立したデータ管理プラットフォームに集約される。プロジェクト「ノーニオ」では、この段階でメディアエージェンシーと広告主を参加させ、オーディエンスをどうセグメント化するか案内するという(「ノーニオ」は、ポルトガルの水夫が航海に使う道具の名前に由来する)。

パブリッシャー側の利点は、はるかに大きな匿名化集約データセグメントにアクセスして広告キャンペーンに活用し、ひいては広告料の引き上げにつなげられる点だ。パブリッシャーがセグメントを利用するために支払う料金は、選んだDMP(データ管理プラットフォーム)プロバイダーのビジネスモデルで決まる。

もたらされる利点

「我々には十分にその価値があり、人々はログインしてくれると確信している。ほかのパブリッシャーもログインしたユーザーがもたらす利点はわかっている。大きな障害を作ることでユーザーが離れるのを恐れているだけだ。みんな、それぞれが小さな市場であることを秘密にしている」と、ルス氏は語った。

もうひとつの利点は、これによりFacebookとGoogleとは別に、広告主とメディアエージェンシーのための市場標準が一組できることだ。ルス氏は、「現在、いくつものメディアグループに属する人々にメディアバイヤーがリーチするのは非常に難しい。混乱のきわみだ」と同氏。

競合する者同士で協力し合うという考え方の実例は欧州各地にある。スウェーデンではパブリッシャーがアドブロックユーザーをコンテンツから締め出しドイツではパブリッシャーたちがデータを共同でプールしている。本物の脅威に対してなら、欧州のパブリッシャーは矛を収めることができるのだ。

課題とその解決方法

しかし、垣根を越えたリーチに課題がないわけではない。メディア企業にはそれぞれ独自のビジネスモデルがある。「インプレザ」は収益の半分が広告で、もう半分がサブスクリプションだ。広告への依存度が大きいほど大きな博打になる。

次々と問題が浮上していることをルス氏は認めたが、「我々はパートナーだが、競争相手でもある。それでも、全員に利点をもたらす公平な活動の場を作ることは可能だと確信している」と説明した。

とはいえ、もっとも大事なのは、ユーザー体験を可能な限りスムーズなものにすることだ。「ログインを嫌う人が多いことは認識しており、このデリケートな問題には適切な方法で対処する必要がある」とルス氏。そのために関心を高めるメディアキャンペーンや、さまざまなクリエイティブメッセージのA/Bテストを実施。同氏によると、ログインしてくれたユーザーにはさらにターゲットを絞り込んだ広告を流し、プレミアムなコンテンツを提供することも検討しているという。

予測されるユーザーの反応

「最初にログインを要求するタイミングと場所については学ぶ必要がある」と語ったのは、メディア・キャピタル・デジタル(Media Capital Digital)のディレクター、リカルド・トム氏だ。「モバイルアプリのほうが情報の入力は受け入れられやすい。最初の1カ月に100万人が登録すれば成功だが、丁寧に実施しなければならない。最初の日にすべてを封鎖したりはしない」と、同氏は語った。

また、ルス氏は次のように述べている。「収益が増えれば、デジタルに投資できる金額がさらに増える。予算がなければ、質の高さを長期的に維持することはできない。ただ、これをこのまま説明することはできない。ユーザーはビジネス上の問題などに関心はない。ユーザーはただプレミアムコンテンツを見て、お金は払いたくないと考えるのは当然だ。そこに対処する必要がある」。

LUCINDA SOUTHERN(原文 / 訳:ガリレオ)
Image: courtesy of Ben Stephenson, via Flickr.