「デジタルメディアはあまりにも変化に乏しい」:「アウトライン」のジョシュア・トポルスキーCEO

アウトライン(The Outline)」の創設者で最高経営責任者(CEO)を務めるジョシュア・トポルスキー氏がスーパーボウルの中継を観ていたときのこと。画面には、新シーズンに突入するWebTVシリーズ「ストレンジャー・シングス」のトレーラーが流れてきた。同氏には次の展開が読めた。このトレーラーを埋め込んでページビューを稼ぐ口実に、怒濤の投稿ラッシュをかけるサイトがいくつも現れるだろう、と。

先日のDIGIDAYポッドキャストでトポルスキー氏は、「あらゆる意味でデジタルメディアはとてつもなく退屈だ。どれもが同じに見え、どれもが同じに聞こえる」と語った。

テックニュースブランド「ザ・バージ(The Verge)」開設の立役者であるトポルスキー氏は昨年、ブルームバーグメディア(Bloomberg Media)を去った。そしていま、ストレンジャー・シングスのプロモ動画を埋め込むことに忙しい、規模のことしか頭にないパブリッシャーとは一線を画すことを誓うデジタルメディア企業を自らの手で起こした。

「BuzzFeedやiPhoneで育ってきたオーディエンスは、こんなくだらないものを10年間も見てきたせいで、神経が麻痺しつつあるのだろう」と、同氏は付け加えた。

「新興のデジタルブランドが手を付けていない領域がある」と、トポルスキー氏は語った。「新興デジタルブランドが当座の目標に掲げるのは、『2000万、5000万のビジターにリーチしなければ』ということだ。彼らの頭にあるのは、ブランドや声といったものを育てることではない。我々は世界でもっともクールな広告プロダクトを手に入れているかもしれないが、我々が優れていなければ、興味深い存在でなければ、ほかと違っていなければ、リーチしたいオーディエンスに対して何らかの意味をもっていなければ、そんなものは重要ではない」。

デジタルメディアは文化的関連性のあるメディアをサポートできる

パブリケーションがこぞって低俗なコンテンツで規模を追い求めるせいで、デジタルメディアは変化に乏しくなっているというトポルスキー氏の気づきからアウトラインは生まれた。その単調さは、ニューヨーカー(New Yorker)など文化的に重要な雑誌に対して同氏が感じる最大の魅力とは対照的なものだった。アウトラインは、その中核にデジタルのみを据えて、まさにこれを行おうとしている。

「デジタルメディアに穴が開いるように私には感じられた」と、同氏は語る。「ストーリーがイマイチで、見せ方が古くさくて、広告が最悪で、自分たちが存在しているはずの世界の声と感性がそこにはない――そんなふうに見える穴だ」。

デジタルメディアのビジネスモデルは十分な進化を遂げていない

いまデジタルメディアが試練の時期を迎えていることは周知の事実だ。こうした状況のなか、トポルスキー氏は500万ドルを調達し、質の高いコンテンツを支えるための広告モデルを見つけることは可能だという考えから、アウトラインを開設した。もちろん、依然としてこうした考えに疑いの目を向ける人も大勢いる。

トポルスキー氏は次のように述べている。「我々は、このビジネスの何たるかに関する20年前の台本を使っている。デジタルの購読者数にさほどの価値はないという『うぬぼれ』があるのだ。Googleが登場したばかりのころ、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)がインターネットとは何かを解明しようと躍起になっていたころは、たしかにそうだった。だが、いまの我々は未知の領域にいる。物語を伝えることに関してSnapchat(スナップチャット)が行っていることに目を向ければ、デジタルは我々が思っている以上の存在たりえることは明白だ。我々はまだ、デジタルがどのようなものかを広い視野で捉えきれていない」。

「この業界の構造は古くさく、明らかに絶滅しつつあるものを複製するようにできている」。

規模は過大評価されている

アウトラインがめざすところは、オーディエンスで最大規模を誇るサイトの仲間入りを果たすことではなく、知性と影響力をもつ人々からなる、限定された貴重なオーディエンスをひきつけることだ。

「インターネットのトラフィックを獲得することは簡単だが、望ましいトラフィックとなると獲得は難しい」と、トポルスキー氏。「ネット上にはシステムを理解する方法が1000通りある。常に人をひきつけるストーリーを書く方法も1000通りある。もし目標が数字なら、そんなものは何の意味も持たない。規模は奇妙な代物だ。ネット上には30億の人々がおり、サイトがどの程度の規模にまで成長するか制限はない。だが、利益を生むオーディエンスの定義を知っていなければ、事業の経営はきわめて厳しいものになる」。

重要なのはデザイン

メディアは、ユーザーエクスペリエンスだけでなく、ブランド認知においてもデザインが果たしている重要な役割を見落としていることが多すぎる。

「スティーブ・ジョブズが創造した世界で我々は暮らしている」と、トポルスキー氏は語る。「Appleがこだわるのは見た目と手触りだ。だが、ニュースメディアは一般に、見た目と手触りは付け足しになっている。どのように言葉を詰め込むか、どのように並べるかなど、すべてが重要だ。デザインがパブリッシャーのアイデンティティと歴史を見る人に伝えるのだ」。

 

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Brian Morrissey (原文 / 訳:ガリレオ)