ガーディアン、「バズ記事」に便乗できる広告枠の提供へ

新しい収益源を模索中の「ガーディアン(Guardian)」は、「バズった」記事に便乗できるチャンスを広告主に提供しはじめた。

長年、社内の分析ツール「オーファン(Ophan)」を使って、読者行動をリアルタイムで測定し、編集判断に活かしてきた同メディア。そのような情報を、広告ビジネスに活かしたいと考えているようだ。

新ツール「パルス(Pulse)」では、1分あたり300ビューのコンテンツという定義で「急上昇」記事を確定。その記事に対して広告を出稿できるようになる。広告主はオーディエンスセグメントを選択することも可能だ。サッカーファン、テクノロジー愛好家、政治と金融に関心が高い人など以外にも、「エンゲージメントがもっとも高いユーザー」といった、より一般的なセグメントでターゲティングできる。

「パルス」は現在、ディスプレイ広告のほぼすべての形式に対応しているが、まだそこに限定されている。やがては、動画とモバイルの両方に拡張されるはずだ。オークションベースなので、価格は需要によって決まるが、ガーディアン側が最低価格を設定することになっている。

本サービスは、7月末に提供を開始したばかりなので、いまのところ広告主は見つかっていない。これから数週間かけてエージェンシー行脚を実施し、新しい広告メニューのひとつとして「パルス」を売り込む計画だ。

「パルス」の対象となる記事

「パルス」では、突発的なバイラル記事の広告枠に、広告主がアクセスできるようになる。最近の英国で起きた予想外の熱波などは、その一例だろう。天候に関する記事は、年間を通じて話題になる。

ガーディアンのプログラマティック販売を統括するファビエン・パパニ氏は、「天候は、小売りの売り上げへの影響が大きいため、このサービスにとって興味深い分野だ」と述べる。

同紙は、印刷広告の売上が激減していることから財務的に切迫しており、コストを3年間で20%(5900万ポンド/約80億円)削減する計画のただなかにある。人員削減は250人の計画で、現在70人の希望退職を受け入れた。「フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)」は7月25日付けの記事で、ガーディアンの3月末までの1年間の営業損失は、1000万ポンド増の6900万ポンド(約93億円)になると報じている

EU国民投票の結果が出た直後に、「パルス」があれば、とても役立ったはずだ。大手ニュースはどこもトラフィックが急増し、ガーディアンも1日のユニークユーザー数が1720万人と、平均の2倍になった。史上もっとも読まれた記事になった中継ブログ記事は1000万ページビューを超え、ほかの個別記事もページビューが急増した。

「ガーディアン・ニュース・アンド・メディア(Guardian News and Media)」のコマーシャルディレクター、ニック・ヒューワット氏は、「そのときはまだ、『パルス』を販売していなかった。あのときでもいくらか儲けたが、もっと儲けることは可能だったはずだ。『パルス』があれば、あのような記事を広告主がリアルタイムで出稿対象にできるからだ」。

問題はクリエイティブ

メディアエージェンシーのマクサス(Maxus)でデジタルプランニングを統括するアレックス・スミス氏は、オーディエンスの獲得を保証するコンテンツと組み合わせる技術が「極めて重要」だと語る。それにより、エージェンシーがある話題について長い期間ターゲットにするのではなく、その瞬間の関心についてリアルタイムでオーディエンスへリーチすることに利用できるからだ。

「大きな出来事が起こった際に、信頼されるニュースソースにしっかりした意見を求めて、人々が殺到するのを何度も見てきた」と、スミス氏は語る。「ただし、プレミアム料金を払うのならば、利用するクリエイティブの検討が重要になってくる。それが、狙った話題とうまく合うようにしなければならない」とも指摘する。

「エージェンシーがいっそう個人にあわせた適切な方法でユーザーに訴求したがっているのに、クリエイティブが動的に作れないということは大問題だ」。

ニュースメディアの広告需要

ニュースメディアでのマネタイズが困難なことが多い理由のひとつは、広告主にとって連想されたくないたくさんのコンテンツが広告枠になり得るからだ。たとえば、テロ攻撃のニュースはたくさんのオーディエンスが集まるが、ほとんどの広告主にとって適切な文脈ではない。「パルス」なら、ビューがどんなに多くても表示されたくない話題を、広告主があらかじめキーワードで設定できる。

「突発的なコンテンツの多いニュースメディアは、プログラマティックで活用できなかった分野だ。しかし、『ガーディアン』のような質の高いメディアがこのような環境を提供するということを、我々は歓迎している。支持するつもりだ」と、グループM(Group M)のデジタルトレーディング担当マネージングディレクター、ロビン・オニール氏は語る。

急増するトラフィックのマネタイズを支援するツールをパブリッシャーが開発したのは今回がはじめてではない。「ニューヨークタイムズ(The New York Times)」、「コンデナスト(Cond Nast)」、「ブルームバーグ(Bloomberg)」はいずれも、バイラルニュースをマネタイズするツールを開発し、さまざまな結果を残している。

マクサスのスミス氏は、「デジタルメディアミックスのなかで、質の高いニュースには重要な役割がまだ存在している。そのようなメディア環境を活用することで、ブランドはたくさんのプラス要素を期待できる」と語った。

Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)