既存メディアに飲み込まれる、新興デジタルメディア企業:子どものままではいられない?

デジタルメディアスタートアップと既存大手メディア企業の歩み寄りが、ここのところニュースとなっている。そして、それは、今後の両者の関係を、深く暗示しているかのよう見える。

女性にフォーカスしたパブリッシャー、Refinery29(リファイナリー29)は8月11日、米ケーブルテレビ向け総合チャンネルのターナー(Turner)から、4500万ドル(約45億円)の資金を調達したと発表した。これは、既存大手メディア企業によるデジタルメディアスタートアップへの、一連の株式投資の一部にすぎない。実際、2013年以来、BuzzFeed、Refinery29、Vice Media、Vox Mediaの4社だけで、ディズニー(Disney)、NBCユニバーサル(NBCUniversal)、ターナー、そしてハースト(Hearst)などから、16億ドル以上(約1620億円)の資金を調達している。

これらの取引は、両者に恩恵をもたらす「戦略的投資」として、しばしば位置づけられる。テレビ業界は、より新しいプラットフォーム上で、若い世代のオーディエンスへリーチできる機会を得られ、デジタル業界は、成長を続けるための資金とリソースを手に入れるのだ。つまり、衰退する既存メディアのなかで、従来の体制を崩壊させると言われていた者たちが成功すれば、既存メディアも同様に成功するという、上手い駆け引きにつがなる可能性を明示している。そして、彼らはそれを確実に行っているのだ。

戦略的投資が意味するもの

「面白いことに、2〜3年前、これらデジタルメディア企業によって、テレビ業界は苦境に立たされていた。そのビジネスモデルには欠陥があり、ケーブルテレビ業界は終わりに向かっているとまで言われたほどだ。また、ソーシャルチャネルを通じて何百万、もしくはそれ以上の人間にリーチできる時代に、テレビに何ができるのかとも言われた。しかし、突然、考え方に変化が表れ、デジタルメディア企業すべてがテレビで取り上げられたいと願っている」と、デジタルパブリッシングスタートアップに投資している、大手メディア企業のある幹部は語った。

確かに、必要に迫られて投資が行われている。ニールセン(Nielsen)によると、18から24歳のアメリカ人は、前年同期と比較して2016年第1四半期は、1週間にテレビを観る時間が、およそ2時間短くなっているという。

「戦略的投資と買収のこの継続的連鎖は、ある特定のオーディエンスへコンテンツをリーチさせる必要がある新しい大手プラットフォーム、つまりこれらのデジタル企業が活躍している場所が存在することを、正当に評価している。そして、自らそれを構築する代わりに、彼ら(テレビ業界)はそうした企業(デジタル業界)に投資する、もしくは買収をしているのだ」と、メディア投資とアドバイザリーを行う企業、クリエイティービーメディア(Creatv Media)の創設者、ピーター・サティ氏は述べる。

BuzzFeedはテレビを欲している

たとえば、2014年にBuzzFeedがリリースしたプレゼンテーションを見て欲しい。この資料においてBuzzFeedは、CNN、MTV、そしてコメディ・セントラル(Comedy Central)よりも、多くの米国人へリーチできる方法を宣伝していた。ミレニアル世代のあいだでは、これら3つのケーブルネットワークをはじめ、大手放送局CBSとNBCよりもリーチ数が大きいと、BuzzFeedは主張している。その1年後、NBCユニバーサルは、同社に15億ドル(約1500億円)の価値を認め、1回の取引で2億ドル(約200億円)を投資した。

このパートナーシップにより、NBCユニバーサルは、BuzzFeedがより多くの専門知識を持つプラットフォーム上の、より若いオーディエンスへのアクセスが可能となる。たとえば、リオ五輪関連では、BuzzFeedによって、NBCユニバーサルのSnapchat(スナップチャット)期間限定「ディスカバリー」チャネルが運営されたのだ

しかし、BuzzFeedのエグゼクティブチェアマン、ケン・レラー氏がいったように、NBCユニバーサルとの取引発表時、BuzzFeedはNBCユニバーサルと協業で、映画やテレビのコンテンツを制作する予定もあった。「テレビより偉大」であっても、BuzzFeedはテレビを欲しているのである。

失敗しても問題ではない

同様に、ターナーのRefinery29への投資には、同社の基盤の中核である、ミレニアル世代の女性たちをターゲットにした動画コンテンツを両社で一緒に制作する計画が含まれている。そのコンテンツの一部は、ターナーのケーブルネットワーク向けに制作されるかもしれない。「すべて検討の段階にある」と、ターナーの広報担当者は語る。ターナーとブリーチャーリポート(The Bleacher Report)の取り決めと、それは同じだ。

ディズニーやNBCユニバーサル、ターナーのように財政的に力のある企業にとって、大手デジタルパブリッシャーへの投資は、マイナス面よりプラス面の方が多い。「我々にとって、ベンチャーキャピタル型の投資というよりも、存亡をかけた投資なのだ。ビジネスモデル上ではより寛容になることも、そして収益化の点で追加のリスクを取ることもできる」と、前述の放送局幹部は語る。

一方で、これらのデジタルパブリッシャーらは、いつの日か彼らへの高い評価を満足させるため、この機会からより多くのものを引き出そうとしている。動画に優れたデジタルパブリッシャーが最後に成功するかは定かでないが、最終的にそれは問題ではない。失敗しても既存メディアがそのスクラップを拾うだろう。

「これらのデジタルメディアスタートアップ企業のほとんどをひとつにまとめた場合、それらの最善の長期的なビジネスチャンスは既存の確立された巨大メディア企業とパートナーになるか、買収されるかだ」とガーションメディア社長、バーナード・ガーション氏はいう。「彼らは、実のあるビジネスを構築している。しかし、今から5年後に彼らの多くが独立した企業体で存続するかどうかは分からない」。

Sahil Patel(原文 / 翻訳 Conyac