NYT、すべての広告でプログラマティック販売をスタート:「もはやバナー広告のためだけではない」

ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)が、プログラマティックビジネスの拡大策として、自社のカスタム広告ユニットをコンピューターで販売できるようにした。

ニューヨーク・タイムズは、「フレックス・フレーム(Flex Frame)」と呼ばれるカスタム広告のプログラマティック販売を2017年度第3四半期に開始。その効果もあって、プログラマティックダイレクトの売り上げが前年同期比で2倍に増えたと、同社のプログラマティック広告担当ディレクター、サラ・バドラー氏は述べている。ただし、具体的な金額は明らかにしていない。同社はこの1年間に、プログラマティック部門のスタッフを3人から6人に倍増して、プログラマティックバイイングを世界的に拡大した。また、トップページや動画広告など、すべての広告製品をプログラマティックバイイングの対象にしている。

ニューヨーク・タイムズは、サブスクリプションを改めて重視するビジネスモデルへの転換を図ってきた。CEOのマーク・トンプソン氏は、印刷版の購読者を1000万人に増やせると自信を示している。また、第3四半期におけるデジタル購読からの売り上げは、前年同期比で46%増となる8600万ドル(約96億円)だったという。一方、同四半期のデジタル広告の売り上げは4900万ドル(約54億円)だった。広告ビジネスの停滞を避けるため、ニューヨーク・タイムズは広告製品をプログラマティックに開放。これにより、自動化されたチャネルに注ぎ込む広告費を増やしはじめたバイヤーに対応している。

「クライアントは、よりクールな広告をプログラマティックに購入したいと考えている」と、同氏は言う。「(プログラマティックは)もはやバナー広告のためだけのものではない」。

ダイレクト販売が成長

ニューヨーク・タイムズでは、いまもオープンエクスチェンジがプログラマティック広告からの売り上げの半分以上を占めている。だが、プログラマティックダイレクトが成長するにつれて、オープンエクスチェンジの割合は減少していると、バドラー氏は言う。ただし、具体的な割合には明らかにしていない。同社のads.txtads.txtファイルにリストアップされている業者をみると、GoogleとFacebookオーディエンスネットワーク(Facebook Audience Network:以下、FAN)が、同社のオープンマーケットインベントリーの大半を販売しているようだ。

だが、動画広告ユニットとカスタムユニットは、依然としてオープンエクスチェンジで販売していない。オープンエクスチェンジでは、広告レートが低くなる傾向にあるうえ、パブリッシャーが自社のサイトでブランドの広告の表示方法をコントロールすることが難しくなる。たとえば、広告主がプログラマティックを利用して自社専用のFlex Frame広告を購入すれば、広告の大きさをユーザーの画面に合わせて調整できるが、そのためにはプログラマティックギャランティードと呼ばれる取り引きをする必要がある。この取り引きでは、パブリッシャーとバイヤーが固定価格とインベントリー(在庫)のコミットメントについて事前に合意しなければならない。バドラー氏によれば、およそ20社のブランドがこの取引形態でFlex Frameを購入しているという。

プログラマティックギャランティードは、オープンエクスチェンジと比べて、パブリッシャーがインベントリーをコントロールできる余地が大きく、割増料金も請求できる。ニューヨーク・タイムズはおよそ1年前から、オープンエクスチェンジを通さない取り引きを希望するバイヤーに対して、Googleのプログラマティックギャランティード製品を利用。自社のファーストパーティーデータを使ったオーディエンスターゲティングを可能にしている。

メディア取引の未来

プロハスカ・コンサルティング(Prohaska Consulting)でグローバルテック戦略担当バイスプレジデントを務めるマイケル・ストッケル氏によれば、ほとんどのパブリッシャーは、いまでも直接販売用のカスタム広告ユニットを配置しているという。その理由は、プログラマティックが低価格化とコモディティ化を招いていると考えているためだ。2017年の段階でも、自社の直販部門から売り上げを食い荒らす不快な存在とみなされているプログラマティック部門といった話が、レガシーメディア企業のパブリッシャー幹部から聞かれることがある。

だが、プライベートマーケットプレイスでは、パブリッシャーがオープンマーケットより高いCPMを獲得しようと複数の取り引きをまとめるため、カスタムユニットや自社のオーディエンスデータの販売がますます一般的になっているとストッケル氏は指摘する。USAトゥディ(USA Today)やカフェメディア(CafeMedia)では、カスタム広告をプログラマティックに販売していることを広報担当者が明らかにした。カスタムユニットを中心とした広告ビジネスを構築しているSnapchatでさえ、プログラマティック販売を進めている

ニューヨーク・タイムズによるカスタムユニットのプログラマティック販売を、業界の大規模な変化を示す出来事だというのは、広告エージェンシーのクレーマー=クラッセルト(Cramer-Krasselt)でメディアおよび分析担当エグゼクティブディレクターを務めるクリス・ウェクスラー氏だ。プログラマティックがついに、「余ったバナーの在庫を一掃する手段」から「多くのメディア取引の未来を形作る重要なメカニズム」へと変容し始めたのだとウェクスラー氏は語っている。

Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)