新専門職「ニュースレター編集者」、なぜ重用されるのか?:再評価されるディストリビューション手段

パブリッシャーのあいだで、ニュースレター(メールマガジン)の再評価が進んでいる。

読者にリーチする手段として信頼度が高いというニュースレター。きわめて重要な「オーディエンスとの直接的なつながり」をもたらし、そうしたつながりこそがFacebookの流動的なアルゴリズムに対抗しうると、認識されつつある。

こうしたメール形式のニュースダイジェストの人気を受けて、パブリッシャー業界で台頭してきた新たな専門職もある。それが、ニュースレター編集者だ。

各社のニュースレター編集者

肩書きと役割は、パブリッシャーによって若干異なる。経済ニュースメディアの「クォーツ(Quartz)」には、メインの「デイリー・ブリーフ(Daily Brief)」ほか数本のニュースレターを監修する少規模な「プッシュ・チーム」が置かれている。クォーツのプロダクト担当バイスプレジデント兼編集長のザック・スーアード氏は、ニュースレターをこうした形で編成しているのは、彼らに専門のスキルがあると認めているからだと話す。同氏によると、デイリー・ブリーフは現在、購読者が20万人を超え、ユニーク開封率は40%に達するという。

米老舗日刊紙の「ワシントン・ポスト(The Washington Post)」では、記者と編集者がそれぞれの担当分野でニュースレターを書いており、総数は75を超える。その戦略を監修しているのは、ニュースレターおよびアラート担当編集者のテッサ・マガーリッジ氏だ。同紙は、この分野で結束して取り組んだおかげで、ニュースレターからサイトへのトラフィックはこの1年間に129%増加し、ニュースレター購読者は100万人以上増えたと述べている(なお、同紙は増加分を示しただけで、全体のトラフィックや購読者総数を明かしていない)。

一方、米ウェブメディア企業のVox Mediaは、「Vox.com」「Eater」「Racked」という3つのバーティカルメディアを担当するニュースレター編集者複数名の採用を検討している。「我々が気づいたのは、ニュースレターが独自のプラットフォームだということだ。ニュースレターについても、ほかのプラットフォームについて考えるのと同じやり方で考えるべきだ」と、Vox Mediaのグロース担当バイスプレジデントを務めるメリッサ・ベル氏は語る。

ニュースレターのメリット

ほかのパブリッシャーもそうした考えに共鳴し、ニュースレターにはほかにはない性質があり、独特なアプローチが必要だと述べる。ソーシャルメディアのユーザーがフィードでたまたま見かける記事と違って、ニュースレターの場合は読者がすでに配信をオプトインしているので、より会話的なスタイルやパーソナルなスタイルでも許容されやすいと、パブリッシャーらは指摘する。

たとえば、Vox.comの主要なニュースレター「Vox Sentences」では、件名が記事の見出しに縛られておらず、強力な表現で、往々にして説明的な文章を使う。リンクをクリックしなくても読者が完全な体験を得られるよう、自己完結的に書かれている。

「それは異なる体験だ」とベル氏は語る。「新聞が読者のもとに毎日届くのと似ている。ニュースレターに対する読者の考え方は変わりつつある」。

パブリッシャーたちが、ニュースレターというプラットフォームの独特な性質に関して認識し始めていることがある。それは、優れたニュースレター編集者は、書く文章とフォーマットに対する鑑識眼を持つべきだということだ。

ニュースレター編集者の重要性

クォーツのスーアード氏はこう話す。「私が思うに、ニュースレター編集者のスキルは過小評価されている。優れた編集者はそのスキルによって、読者がメールを読み終わる頃には、彼らのマインドセットに編集者自身の考えを注ぎ込むことができる」。

クォーツのプッシュ・チームは、語調と書式の一貫性を保つよう留意している。さまざまなタイムゾーンを確実にカバーして、コンテンツがクォーツのグローバルな編集体制を反映するように、ニュースレターの業務を数人に分散している。Vox Mediaが探している人材は、はっきりした意見を持ち、このプラットフォームに情熱を注ぐ編集者だ。Rackedは、ニュースレター編集職に応募してきた者の適性を調べるため、応募者に対して、メール・ニュースレター形式でカバーレター(添え状)を作成するよう求めた。

ワシントン・ポストは、マガーリッジ氏の採用を発表する文書のなかで、メッセージングを介した配信に関する同氏の知識と、コミュニティ構築に対する情熱を紹介した。

さらに求められる欠かせない才能

ニュースレター編集職にはさらに、データと実験を扱う才能も求められる。Rackedによるニュースレター編集職の求人案内では、「メールのベストプラクティスをガイドし、指標を追跡して、テスト中のプログラムをリードする」ことが要件になっている。

ワシントン・ポストにおけるマガーリッジ氏の仕事は、戦略の設定、新たなニュースレターとして発行する可能性のあるジャンルの見極め、開封率やスクロール量といった指標のチェック、制作物とデザインの改善などだ。読者はすぐにメールを開封するとは限らないので、ニュースレターの要素を最新のものに保つことも、同氏が注力する分野になる。これは、数種の絵文字のカウントで示されるユーザーの評価が、たとえ送信してから数時間後に開封された場合でも、最新のカウントに更新される仕組みであり、ワシントン・ポストが党大会期間中のニュースレターで実施したものだ。

「メールは、過去10年にわたって同じままだ」とマガーリッジ氏は語る。「オンラインニュースは進化したが、メールは違った。だからこそ、我々は多くの実験を行えるのだ」。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)
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