「他所のマネはしない」と豪語するコンデナストの動画戦略

コンデナスト(Condé Nast)の動画部門を率いるドーン・オストロフ氏は、デジタルコンテンツ業界のイベント「デジタルコンテンツ・ニューフロンツ(Digital Content NewFronts)」のプレゼンで開口一番、同社の動画戦略について、「我々は、他所がみんなやっていることはやらないと決めた」と述べた。

とはいえ、このイベントでは、参加者にお馴染みのバズワードも多数飛び交った。バーチャルリアリティ(VR)、ソーシャルプラットフォーム、ミレニアルなどだ(コンデナストも「カルチャード・ミレニアル」なる言葉を作り出した。その定義は「職についている若者」だ)。

ソーシャルフィード攻略の切り札

『バニティ・フェア(Vanity Fair)』や『ボーグ(Vogue)』といった高級誌を擁するパブリッシャーであるコンデナストは、9月公開を目指して制作中のVRシリーズ「インビジブル(Invisible)」(全6回)の予告編を公開した。コンデナストも、多くのパブリッシャーと同様、VRや、その廉価版とでも表現するべき360度ビデオに投資しており、広告主もこれに追随すると予測している。「VRは今後、間違いなく我々のスタジオの大きな部分を占めるだろう」と、オストロフ氏は言う。

コンデナストの広告主向けメッセージは、依然として長編映画やソーシャルクリップといった動画コンテンツの質の高さを売りにしていた。その一方で、そうした動画をユーザーが観る可能性のある、あらゆる場所に配信する必要があるという現実も、同社はきちんと認識している。いま、そうした配信先として真っ先に浮かぶのは、ソーシャルフィードだ。

営業部門トップのリサ・バレンティノ氏が発表したところによれば、そのために、あらゆるプラットフォームで動作する新しい動画広告製品を開発したという。それによって、コンデナストの動画は「あらゆるスクリーンを超越」できる。そして、同社はソーシャル、コマース、インフルエンサーに「重点」を移していく。さらにコンデナストは、自社の動画がFacebook、Snapchat(スナップチャット)、Twitterをはじめ、50以上のプラットフォームで再生されていると豪語する。

自前の動画サービスも運営

とはいえ、ソーシャルプラットフォームで動画を制作して配信する必要があるというのは、パブリッシャーにとっては悩みの種でもある。そのプラットフォームによって、コンテンツに掲載する広告を販売することが禁じられているからだ。これは、コンテンツ制作への出費を惜しまないことで知られるコンデナストのような企業にとって、とりわけ大きな問題になる。

だからこそ、コンデナストは2年前に立ち上げた自前の動画アーカイブ「ザ・シーン(The Scene)」を、現在もハブとして維持しているのだろう。YouTubeやFacebookなどのプラットフォームでの動画視聴がすでに習慣として人々に根付いているなか、「ザ・シーン」をめぐる戦略には疑問の声もあった。このため、デジタルコンテンツ・ニューフロンツで同社は、モバイルユーザー向けに「ザ・シーン」をリニューアルし、動画をよく視聴する人のためにコンパニオンアプリもiTunesでリリースすることを発表した。

「ザ・シーン」へのトラフィックは芳しくない。調査会社コムスコア(comScore)によると、2016年3月のユニークビジター数は前年比マイナス30%の570万人だ。ピークだった2015年11月は1300万人を超えていたという。しかし、少なくとも「ザ・シーン」での売上はすべてコンデナストのものだ。イベントに参加していたあるパブリッシャー関係者のように、Facebookでは「一銭の儲けもない」と愚痴をこぼさずにすむ。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)
Image by Sergey Galyonkin