ネイティブアドは、思ったほど持続可能でないかもしれない。その実力と未来について

この記事は、10サイト以上のWebメディアを運営するメディア企業Purchのメディア担当プレジデントである、アンソニー・ブーリン氏による寄稿となります。

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圧倒的な数のデジタル・パブリッシャー(90%)が、運営するサイトにネイティブアドを取り入れたか、もしくは導入を考慮中だという。ネイティブアドは、ブランドと広告主には効果的なツールだからだ。1セッション当たりの視聴回数は、平均的な広告に比べ4.1倍もある。購入意思もバナー広告より18%も高い。2016年のネイティブアドへの出稿額は、33%増の57億ドル(約6900億円)になるとの予測もあり、パブリッシャーにしたら前途有望な選択肢に見えるだろう。

ただ、ネイティブアドはいまだ生後間もない。広告主の3分の2が出稿を増やしつつあるが、広告費総額からすれば5%以下でしかないのだ。そして、多くのパブリッシャーが前のめりになる流れは、時流に逆らう結果になっている。

スケールとコストがその理由のひとつ。もうひとつは消費者の信頼である。そこが欠陥なのだ。編集コンテンツの体裁を取りながら、実はブランドのディレクションによる配信だと分かった場合、逆効果になるかもしれない。アメリカの新宗教「サイエントロジー」の指導者であるデビッド・ミスキャベッジ氏を賞賛した週刊誌「アトランティック」電子版のスポンサードコンテンツが、その典型例だ。

我々が知るような今のネイティブアドの姿は、長い目で見れば続かない可能性がある。いくつかの理由を挙げて、少し踏み込んでみたい。

ネイティブアドが持続可能ではない理由

ネイティブアドについて論じる際、その意味を最初に定義しておくことは重要である。ところが、広告業界では人によって定義が違うのである。

ネイティブアドで効果を生みたいのであれば、まず何よりも読者にとって面白くなければならない。ネイティブアドは、ますますパブリッシャーの間で持てはやされるようになってきているが、マーケターにもリソースの提供が求められるのだ。マーケターはネイティブアドの制作管理をパブリッシャーに任せたがるが、実際にはブランドとエージェンシーレベルの両方で関与する必要がある。

同時に、長期的な承認プロセスを踏み、その測定が難しいコンテンツの制作に邁進しなくてはいけない。さらに重要なことは、ネイティブアド用のコンテンツづくりにかかる労力は、ユーザーの満足とは関係がない。リソースをとられるうちに読者離れを引き起こし、マーケターも喜ばないという悪循環となってしまうのだ。

CPA(顧客獲得1人あたりのコスト)などで報酬を確定する手法が、デジタル広告の世界で大きな割合を占めるようになりつつある。アメリカではネット広告売上の65%がパフォーマンスにより支払額を確定するものだ。スポンサードコンテンツや、PR記事タイプの広告は、概して旗色が良くないが、それでもマーケターの55%が購入に影響力があると見なしている。最後にものを言うのは、決定権を握る人物の鶴の一声だ。それが出たら、結果がわかりにくいところから予算が排除され、わかりやすいソリューションへの再投資となっていくだろう。

ネイティブ・コンテンツを配信するに当たり、パブリッシャーは、質が高くアクセス数が稼げるようにとのマーケターの要求に応えるため、全工程に渡る膨大なまでの努力をすると誓わねばならない。それでもなお、投資利益率(ROI)は曖昧なままかもしれないのである。

ネイティブ2.0:ECに光明が見える

EC(電子商取引)は、パブリッシャーの多くが足を踏み入れたばかりの世界だ。実践例は多種多様だが、そのなかで目立つのが女性ファッション誌『Vogue』の電子版の姉妹サイトで、ECプラットフォームの「Style.com」であろう。YouTubeもEC進出を視野に入れ、配信映像から製品を直接買えるような機能を導入しつつある。

一方、ホテルなど旅行に関する口コミを掲載したり、価格比較などを行う「トリップアドバイザー」や、リフォーム希望者と住宅専門業者との橋渡しをするコミュニティサイトである「Houzz」では、こうした機能を渾然一体化させ、ときには編集コンテンツに組み込んだりしている。そして、Twitterやピンボード式に写真を共有管理するPinterest(ピンタレスト)が実施しているような購入ボタンが増えてほしいと、我々は待ち望んでいるのである。

パブリッシングとショッピングの融合を成功させる手立てとして、ECにふさわしい環境作りは有望だろう。同時に、このような取り組みは理念的にも視覚的にも、ネイティブに起源があるのだ。つまり、ネイティブで試みようとしたことの実践なのだ。広告主やブランドに奉仕しつつ、関連性を持たせ、読者に嫌がられないようにしながら利潤を追究するという実践を果たそうというのである。一方で、「無料のインターネット」を守りながら、質の高いコンテンツづくりが報われる売上をパブリッシャーにもたらすのだ。

ユーザーへのサービスとマーケティングを両立させることで、「ネイティブコマース」は、この分野で真に発展が見込まれる唯一のビジネス・モデルとなるかもしれない。

Antoine Boulin(原文 / 訳:南如水)
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