MTV、5本の新ポッドキャスト番組で「復活」を祈願:旧「若者向けメディア」の現在

MTVニュース(MTV News)が、復活をめざす取り組みの一環として多くのポッドキャスト番組を開始する。

MTVは4月20日、映画や政治、ポップカルチャー、そしてもちろん音楽を中心とした新しいポッドキャスト5本を発表した。これらの番組のホスト役には、アナ・マリー・コックス氏をはじめMTVニュースでおなじみのジャーナリストだけでなく、新たに採用された人材も加わる。

コンテンツの80%は携帯電話上

MTVによるポッドキャストの開始は、テレビよりも常に携帯電話の画面を見ている若者たちをターゲットにしていることを示す動きだ。MTVニュースの編集ディレクターを務めるダン・フィアマン氏は、米DIGIDAYの取材に対し、ターゲットオーディエンスである若者について、彼らが利用するコンテンツの80%は携帯電話上のコンテンツであり、そうしたオーディエンスが利用できるポッドキャストという選択肢は、これまでサービスが不十分だったと指摘した。

フィアマン氏は、次のように話す。「MTVニュースはMTVをデジタルで支えるエンジンだ。すべてが事実からなる話を伝えるという考え方に目を向けた場合、我々はオーディエンスがどこにいても携帯電話上で配信できるし、ポッドキャストもそうした手段のひとつだ」。

これらのポッドキャストは、「iTunes」「スポティファイ(Spotify)」「サウンドクラウド(SoundCloud)」で視聴できる。まず「スキルセット(Skillset)」は、MTVニュースの映画批評担当チーフ、エイミー・ニコルソン氏がホストを務める映画の話題が中心の番組だ。「ノー・リクエスト・ライブ(No Requests Live)」は、音楽やポップカルチャーに関する座談会形式の番組で、ミレニアル世代は懐かしさを覚えるに違いない。

ポッドキャストならではの展開

米スポーツ専門ケーブルTVのESPNが運営していたスポーツブログ「グラントランド(Grantland)」のライターだったモリー・ランバート氏とアレックス・パッパデマス氏がホストを務める「ノース・モリーウッド(North Mollywood)」では、ハリウッドの視点からポップカルチャーのニュースを分析する。MTVニュースのライター、アイラ・マディソン3世とドリーン・セントフェリックス氏がホスト役の「スピードダイヤル(Speed Dial)」は、友人同士が電話で人種やセックスなどのトピックについて会話する形式を採用。最後に、コックス氏やジャミル・スミス氏をはじめとするMTVニュースの政治チームは、毎週公開の政治番組「ステークス(The Stakes)」を担当する。

MTVは、BuzzFeed(バズフィード)で動画部門バズフィード・モーション・ピクチャーズ(BuzzFeed Motion Pictures)の設立に参画したレイチェル・ザレル氏を、ニュースと動画の担当エディターとして採用。また、ロックバンド、パーフェクト・プッシー(Perfect Pussy)のシンガーでライターでもあるメレディス・グレイブス氏には、今後複数のプロジェクトでホスト役を務める。MTVはさらに、さまざまな公共ラジオ局で制作に携わったベテランのポッドキャストプロデューサー4人も採用した。

「MTV.com」のエグゼクティブ・エディターを務めるパッパデマス氏は、米DIGIDAYに対し、次のように語った。「ジャミルやモリーが書いた文章をネットで読んでも、彼らの一面しか分からない。だがポッドキャストなら、違う面を耳にすることができる。もっとくだけていて、まるで彼らと一緒にいるような感じだ」。

「もう競争相手が多すぎる」

フィアマン氏はポッドキャストという形態について、MTVネットワークの若いオーディエンスを競い合って狙っている企業のあいだで、MTVニュースを拡大できる、費用効率の高い方法だと話す。現在のところポッドキャストに広告は表示されないが、今後の番組では広告を追加する予定だ。フィアマン氏によると、「世の中には、リーチされるのを待っている未開拓のリスナーがたくさんいる」という。

MTVがポッドキャストに取り組みを拡大するのは、ニュース部門への再投資の一環だ。若者は、これまでの世代ほどMTVブランドに傾倒しておらず、ネットでのトラフィックはBuzzFeedをはじめ、競合の後塵を拝している。MTVニュースは2015年秋以降、ニュース事業を復活させるため、ライターやエディターを数十人規模で採用した。

ただし、今回の動きを「規模が小さすぎるし遅すぎる」と見る向きもあるかもしれない。リサーチ企業eマーケター(eMarketer)のメディアアナリストであるポール・バーナ氏は2月、米DIGIDAYにこう話していた。「MTVがやっていることは明確だが、このブランドにしては遅すぎるように思う。MTVはすでに、以前にはあったオーディエンスとのつながりを失っており、いまの時代精神には合わない。いまはもう、競争相手が多すぎる」。

「終わりというにはほど遠い」

MTVはさらに、米国で Snapchat(スナップチャット)の「ディスカバー(Discover)」チャンネルを開始したほか、「MTVニュース」アプリのデザインを刷新したり、スミス氏がホスト役を務める政治がテーマのデジタル動画シリーズを開始したりしている。スミス氏の「ザ・ラケット(The Racket)」シリーズのような動画は、いかにもMTVが作りそうな動画だ。

このためにも、BuzzFeedからザレル氏を迎えたことは、MTVが政治や問題意識の高いニュースに重点を置いた情報をより迅速に制作する助けになると、フィアマン氏は話す。MTVはさらに、近日中にMTVニュース・アップデートをリニューアルして、自社のソーシャルネットワークでストリーム配信するという。いずれは1日に5回にもわたって配信する計画だ。

「我々は、順調に前進しているが、これで終わりというにはほど遠い」と、フィアマン氏は話している。

Jordan Valinsky(原文 / 訳:ガリレオ)