「パリ・テロ事件中は、モバイル閲覧が8割だった」:BBCワールドのグロースハックをCEOに聞いた

英国放送協会のサイト「BBCワールドニュース」へのアクセスの半分以上が、モバイルからとなっている。それが、2015年11月13日に発生したパリ同時多発テロ事件の際には、80%以上に達したという。大事件の速報において、モバイル展開がいままで以上に求められている。同時に、モバイルで一歩先に行くのがBBCなのだ。

2015年11月第3週、グローバルデジタルニュース領域で、BBCがCNNを追い抜いた。ネット調査企業comScoreによると、デスクトップ端末における世界全体のユニークビジターオーディエンスは、CNNの7210万人に対して、BBCは7560万人だった。

BBCグローバルニュースのCEO、ジム・イーガン氏はデスクトップでの報道からモバイルへシフトするべく、ジャーナリストをどのように教育しているかについて、米DIGIDAYに語った。

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競合がひしめくなか、どのように国外ユーザーの注目を集めたのか?

BBCがベストであり続けるのに必要なのは、独立したジャーナリズムと正確性、そして公平性だ。時代遅れに映るかもしれないが、特にTwitterやFacebookなどのようなソーシャルメディアにおいて、玉石混交のニュースが入り乱れるなかで、それが大事になる。

パリのテロのような国際的危機には、混乱のまま配信するよりも、正確さと独立性を保ち、洞察に裏打ちされた理解しやすい報道を我々が行っていると保証することが不可欠だ。

モバイルに与えられた役割の大きさは?

パリのテロでは、モバイルが実際に大きな役割を果たした。平時はアクセスの半分超がモバイルからのアクセスとなっているし、この間の事件の最中には、その量が80%にも増えた。刻一刻と状況が変化する大事件の情報は、モバイルで閲覧される。

我々のジャーナリストは、コンテンツをスマートフォンでキャプチャーできるし、Twitterでも利用可能なライブ配信アプリ「Periscope(ペリスコープ)」や、その他のライブストリーミングコンテンツのプラットフォームも使える。

しかし、アクセスの大多数がモバイルからなのに、我々のジャーナリストは、いまなおオフィスに戻ってデスクトップ端末を使って配信している。そのような現実に向き合うことから始めた。そこで現在では、我々のジャーナリストがモバイルプラットフォームに直接配信する実験を行っている。

今後、モバイル体験の重要性はさらに増すと思うか?

目下、モバイルでのビデオ閲覧が劇的なまでに増大している。間もなくリリースされる我々の第4世代のニュースアプリでは、スマートフォンにストレートに配信されるライブビデオに力を入れることになるだろう。

それは広告型の無料モデルか? もしくは有料サービスとなるのか?

現在は無料アプリを世界的に展開しているが、将来何らかの形で有料サービスに転換する可能性は否定しない。

外部プラットフォームへの直接配信はあり得るのか?

サードパーティーのシンジケーションによる配信戦略をさらに活発化させようと思っている。現状では、AndroidやiOS対応のキュレーションメディア「フリップボード(Flipboard)」やFacebook、音楽配信サービスの「スポティファイ(Spotify)」「アップルニュース(Apple News)」など、あらゆる手段を使っている。

これらの結果には喜んでいる。サードパーティープラットフォームを受け入れることでのブランドにダメージが生じる可能性については、それほど悩まなかった。大手のテックブランドと一緒に働くことは、英国外でのオーディエンスを増やす助けとなった。

どうしてそう言えるのか?

あなたが英国人だとしたら、BBCがどのような形によって国外で認知され、閲覧されているかを理解するのは難しいだろう。英国では、このように絶対的な役割を果たしているが、国際的には、認知を得たり、コンテンツのマネタイズなどをする上で我々は競争相手と闘っている。

BBCのサイトに直接来ることが絶対に考えられない人たちに、ソーシャルプラットフォームでリーチできるのであれば、ありがたい。外部のプラットフォームを通して新規のオーディエンスと接触することによって、BBCのプラットフォームがダメージを受けると考えるような「共食い」の危険性については、私は問題だと思っていない。

2015年に学んだことは何か?

この業界の商業面での変化が早いことを学んだ。アドブロック(広告ブロック)の問題は12カ月前から語られていたが、いまほどの切迫感はなかった。普及が業界に試練となっているし、変化の速さに戸惑うばかりだ。

アドブロックはBBCに問題となっているのか?

アドブロックは戦略面において懸念となるが、切迫した危機ではない。破壊的なインパクトはないと思われる。しかし、長期的な視野に立てば、シリアスな問題だといえるだろう。

どのようにしてコンテンツに対価をもたらすか、パブリッシャーと広告主とコンシューマーとの間に明るい関係を築くにはどうすれば良いのか。現時点では悲観的な状況といえる。BBCは、その解決の手立てを示したいと思っている。

2015年にマネタイズで実を結んだことは?

「ストーリーワークス(Storyworks)」というブランデッドコンテンツユニットの業績が良かったことだ。BBCは編集に自信を持っているので、ネイティブ広告参入は議論を巻き起こす可能性があるし、異論が出るのは無理のないことだ。

編集コンテンツと広告との間にそびえたつ、難攻不落の万里の長城への取り組みは、過去にも行われてきた。ネイティブ広告が、その壁を乗り越えようとしている。

Jessica Davies(原文 / 訳:南如水)
Image from DIGIDAY US