創刊1年のヌートン、「ロイヤルファーム」で探る成功の背景:ログリー・藤澤裕人氏 ✕ BHB・長島健祐氏

急変する世の中のニーズに、既存のアナリティクスツールは開発が追いついていない。

フェイクニュースやコピペメディア問題以降、ブランド毀損を起こしかねない出稿面をブランド企業がボイコットするなか、既存のアナリティクスツールは「量」を測ることに長けていても、「質」を測ることについては物足りないからだ。

そんななか、レコメンデーションエンジンを提供する企業ログリー(logly)は2016年12月、同社のレコメンデーション製品を利用する媒体社に対して、ロイヤルユーザー定着支援ツール「ロイヤルファーム(Loyalfarm)」の提供を開始した。これは、「ロイヤルユーザー」、つまり再訪回数の多い「ファン」の育成を促すデータを提供するツールとなっている。

「ロイヤルファーム」の概念図(※画像クリックで拡大)

「ロイヤルファーム」の概念図(※画像クリックで拡大

すでに利用しているパブリッシャーは、日経トレンディネットやKADOKAWAのレタスクラブニュースをはじめ70社以上。「笑い」に特化したコンテンツを作成し、さまざまなバズを巻き起こしてきたバーグハンバーグバーグ(BHB)もその1社だ。同社が2016年6月に創刊した、ネットカルチャーに笑いの要素を足した情報サイト「ヌートン」でも、正式リリース前より特別に「ロイヤルファーム」を利用してきた。

「ローンチ1年目にも関わらず、月間約150万PVを誇る『ヌートン』のユーザーは、非常に再訪率が高い」と、ログリー株式会社のメディア・ソリューション部 部長の藤澤裕人氏(TOP画像・左)は分析する。その一方、BHBにおけるメディアグロース担当にして、「イケてるしヤバい男」としても知られる長島健祐氏(TOP画像・右)は、「これまで勘でやってきたことが、『ロイヤルファーム』のデータで裏付けられた」と語った。

ログリーの新オフィスで、今回の対談は実施された

ログリーの新オフィスで、今回の対談は実施された

本記事では、ふたりの対談から「ロイヤルファーム」の機能を利用して、「ヌートン」が創刊1年で急成長を遂げた理由を探っていく。

◆ ◆ ◆

――まずは、「ロイヤルファーム」とは、どんなサービスですか?

藤澤裕人氏(以下、藤澤):「ロイヤルファーム」は、我々のレコメンドウィジェット「ログリーリフト(logly lift)」の提供媒体社に対する付加価値を高めるために開発したものです。

サイトに来訪したオーディエンスの内部回遊を高め、サイトに定着してもらうには、いわゆる「ロイヤルユーザー」を増やすことが欠かせません。つまり、メディアにとっては、来訪するオーディエンスの「質」が課題で、「ロイヤルファーム」は、それを可視化できるツールとなっています。

「ロイヤルファーム」では、ページビュー(PV)ではなくユニークユーザー(UU)、特に「再訪ユーザー」を重要視。繰り返し訪れているユーザーが、どこから来て、どんな記事を読んで、キッカケは何だったのかを可視化して、コンテンツ運用の指針となるような付加価値を提供しています。

「幽霊に命を狙われており、対策として全身にお経を書いている」と長島氏

「幽霊に命を狙われており、対策として全身にお経を書いている」と長島氏

長島健祐氏(以下、長島):メディア運営にとって、PV以外にユーザーの質を可視化、定量化することは重要だと考えます。単にPVを上げるだけなら、タイトルの付け方など、テクニック的にハックすることが可能ですから。

そういう表面的な技術ではなく、アテンション率や読了率が知れるという点で、「ロイヤルファーム」に期待していました。やはり、コンテンツを作る以上、しっかり読まれた方がいいですからね。

――たしかにそうですね。では、今回はどんな取り組みを?

藤澤:「ロイヤルファーム」のリリースは2016年12月。そのプレリリースとして、11月頃より「ヌートン」の計測を開始しています。その後、半年近くが経過して、今回、はじめて「ロイヤルユーザー推移定点分析」としてレポートを提出しました。これは、定点的にユーザーの動向をトラッキングすることで、何が見えるかを確認したものです。

長島:ちなみに「ヌートン」は、ネットカルチャーを扱うメディアとして2016年6月に創刊しました。姉妹メディアの「オモコロ」とは違う切り口で、ライター自身が好きなものを書く「アイデア発散の場」としての役割が大きいです。

創刊後約1年が経過し、PVは月間約150万。記事は平日に1〜2本の更新ペースなので、1記事あたりのパワーが大きいというか、1記事で数万〜数十万PVを稼ぐ記事もあります。

創刊1年で月間約150万PVまで成長した「ヌートン」

創刊1年で月間約150万PVまで成長した「ヌートン

藤澤:メディアにはさまざまな方向性がありますが、エンタメ系のメディアのなかでは、「ヌートン」はファンが多いメディアという印象です。多くのサイトでは、記事公開直後にアクセスが大きく跳ねて、数日後には落ち込む曲線を描きますが、「ヌートン」は、根強いファンが継続的にアクセスを支えている特徴があります。

長島:「ヌートン」の制作体制は、編集長とメインの社内ライターで6名、スポットで書くライターが社内に2〜3名というもの。そのほかに、外部ライターが加わります。僕の役割は、サイトの運用そのものより、BHBの複数のメディアを横断的に見る立場。メディアの運営やサイトの改善、広告のマネタイズなどの戦略を担当しています。

ログリーさんとは、BHBの前職のときに知り合いました。当時から「優秀なレコメンドネットワークを提供してくれる会社」との認識がありましたね。国産サービスなので、フットワークが軽く、レコメンドロジックやデザインのチューニングに対する対応が早く、仕事がやりやすかったです。

――なるほど。では、レポート内容を教えてください。

藤澤:まず、「ロイヤルファーム」を導入している全媒体を対象に、ユーザーの比較調査を実施しました。月に1回以上訪問したユーザーを「再訪ユーザー」とし、月に1回のみの訪問だった「一見ユーザー」と、どんな違いがあるかを比較したのです。

全媒体の平均値を見ると、再訪ユーザーの割合は平均で16.1%(30日以内の再訪問を再訪ユーザーと定義。ほかのツールは2年以内などと長い)。つまり、83.9%のユーザーは、「1カ月で1回しか来なかった」ことになります。この再訪ユーザーの割合が、「ヌートン」では25.8%と、実に4分の1以上が「常連さん」であることが分かります。

理由として考えられるのが、導線が特徴的な点。「ヌートン」の再訪ユーザーの導線は、SNS経由が37.9%、さらに、姉妹サイトの「オモコロ」からも多くの再訪ユーザーがアクセスしていることが分かりました。全媒体の平均値では、検索経由が27.5%でトップですから、非常に特徴的なのが分かります。

「『ヌートン』の再訪ユーザーの割合は25.8%と非常に高い」と藤澤氏

「『ヌートン』の再訪ユーザーの割合は25.8%と非常に高い」と藤澤氏

長島:ほかのメディアにはない切り口の記事が、ファンの固定化につながっているのでしょうね。オモコロからの流れでライター自身にファンがついているケースも多く、そういう方に多く読んでいただいていると思います。

導線については、ソーシャルの導線・拡散にこだわっているので、それが数値として結果に現れているのは嬉しいです。逆に、検索流入については、もっと増やしたい思いもありますが、記事の特性上、特定のキーワードから検索ユーザーのニーズを狙っていくのには、まだやり方を模索しているという段階です。「おもしろ」を優先させると、どうしても検索ニーズにマッチした内容からはズレてしまいますので。

藤澤:でも、記事単位で見ると、検索結果1ページ目に上位表示されているコンテンツもありますね。

長島:ニッチな分野の記事が多いからかもしれません。たとえば、「Bluetoothイヤホン」など、ある分野に特化した記事は、オーガニックサーチによる流入が多いです。

――読まれる記事の傾向に、「一見」「再訪」の違いは?

藤澤:2017年1月の記事PVランキングを、一見ユーザーと再訪ユーザー別にランキングしました。これによると、上位1〜2位の記事は両者で共通しているものの、3位以降は、両者に好まれる記事が異なります。

一般的に「好まれる記事」は、一見ユーザーでも再訪ユーザーでも同じことが多いので、この指向性の違いは「ヌートン」の大きな特徴といえます。特に、再訪ユーザーには「マニアックな記事」が好まれる傾向が強く、たとえば、再訪ユーザーで5位の「ロースおじさんのとんかつ教室」という記事は、一見ユーザーでは19位となります。

「ヌートン」の再訪ユーザーには「マニアックな記事」が好まれる

「ヌートン」の再訪ユーザーには「マニアックな記事」が好まれる

長島:この数字を見て、たとえばファン化にはつながらなかったけど、ある程度流入があった記事については、その記事と関連性のある記事を用意すれば、ユーザーを「一歩先」に連れていけたのでは、という仮説が成り立ちますね。

やはり、PVの下地を固めるには、ファンを増やすことが大事です。ただ、ファンだけが読む「敷居の高い」メディアにならないように、一見さんでも気軽に読んでもらえる記事、テーマも意識していく必要があります。

――ほかに特徴的な分析結果はありますか?

藤澤:「ヌートン」の再訪ユーザーが、外部で接触しているコンテンツから、どんな興味・関心があるかクラスター分析を行いました。これは、再訪ユーザーが接触した外部コンテンツからキーワードを抽出し、共起ネットワークを作成したものです。再訪ユーザーが、自社メディア以外でどんなテーマを好んでいるか全体的な傾向が把握できます。

これを見ると、「ヌートン」の再訪ユーザーの興味・関心は、アニメやゲーム、ソーシャルメディアを中心としたサブカルチャーにあることが分かります。再訪ユーザー像として、アニメやマンガコンテンツなどのサブカル層を好む男性ユーザーというのが確認できます。

長島:この資料を活用するとするなら、再訪ユーザーの興味・関心に関連するキーワード・テーマを含む記事を量産すれば、より回遊率が高まるということですかね。

「こういうデータはネタ出しのきっかけになる」と長島氏

「こういうデータはネタ出しのきっかけになる」と長島氏

藤澤:そうですね。たとえば、全体のトレンドとの比較ができると、来訪しているユーザー、ファンが欲しているテーマがわかります。ですが、外部コンテンツのキーワードは、季節やトレンドなどによって変わるものもあれば、変わらないものもあります。なので、トレンドにあわせてコンテンツを改善しても、ピンポイントに効果が狙えるというものではありません。

むしろ、定点的に観測して、インサイトを得るという使い方が効果的なのでしょう。その意味では、今後、ダッシュボードで、「今日のトレンド」という形で表示していくこともひとつのアイデアですね。

長島:「ヌートン」のライターは基本的に、好きなことしか書かないので、こういったデータはネタ出しのきっかけになると思います。勘と経験で良いと思ったことが、データに裏付けされると、ユーザーの興味・関心に触れる記事を、ある程度方向づけできるのかなと思います。

――最後に、総括としてどんなことが言えるでしょう?

長島:そうですね……。たとえば、ユーザーの回遊率はGoogleアナリティクスでも確認できますが、「ロイヤルファーム」は、記事に対するアテンション率や、どのライターが一見さんを連れてきて、ファンに定着させているのかを把握するのに重宝しています。

ログリーは、運用のサポートも手厚く、そのサポートが結果的にサイトの改善や、広告収益の改善につながっているので、今後も変わらずお付き合いをお願いしたいですね。

藤澤:ありがとうございます。ちなみに、この3月にオーディエンス拡張の仕組みとして、DMP機能を新たに追加しました。DMPに保有しているユーザーの行動履歴などから、メディアのファンや、ファンに近いユーザーにコンテンツを届けることができるようになります。たとえば、広告タイアップで、「外部から3万PVの誘導をかける」というときに、よりエンゲージメントの高い記事を読了して、その後のコンバージョンにつながりやすい「質の高い」ユーザーにコンテンツを届けていくことが可能になります。

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長島:え……? 何か言いました?

藤澤:……えっとですね、現在、「ロイヤルファーム」は、一部の機能を除き、ほぼすべて無償で利用できます! 今後も基本的な機能は、無償でご利用いただきたいと考えています。そして、「ロイヤルファーム」から得た知見をもとに、レコメンドウィジェットの内容改善にもつなげていきたいと思っています。たとえば、SNSで来訪したユーザーにはこの記事を出す、ダイレクトで来訪したユーザーはこの記事を出すというように、リファラーの区分ごとにレコメンドを最適化することで、ユーザーの再訪率を高めていきたいのです。

一方で、同じスポーツメディアでもサッカー、野球、プロレスではユーザーの興味や嗜好は異なるというように、ユーザーの定着度合いや興味・関心によってスポンサードコンテンツの配信を最適化することで、メディアのマネタイズにも寄与していきたいですね。「ヌートン」さんも引き続き、お付き合いのほどよろしくお願いします!

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長島:……。え?

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藤澤:……本日はありがとうございました。

 

miminashi_nagashima▼長島健祐
株式会社バーグハンバーグバーグ

2007年よりニコニコ動画の広告営業、2012年にグリーにてIPを活用した企画開発などを行い、2013年にnanapi(現Supership)にてメディア事業部長などを経て、2016年にバーグハンバーグバーグにてメディアグロースやマネタイズなどを担当するびわ法師。好きなハンバーグはチーズバーグディッシュ。

 

digiday2017_0701_fin-fujisawa▼藤澤裕人
ログリー株式会社 メディア・ソリューション部 部長

2008年、営業代行会社の立ち上げメンバーとして参画。2012年、インターネットリサーチ会社にて広告代理店向けにブランドリフト調査を企画提案。2015年より現職、媒体社向け事業企画、各種マネタイズ施策の提案とコンテンツ分析を推進。

 

 

Sponsored by ログリーロイヤルファーム
Coeditorship by ヌートン

Written by 阿部欽一
Photo by 渡部幸和