「ローカルな見た目、グローバルな魂」:BuzzFeed、世界進出のセオリー

グローバルメディアビジネス構築は、ただ人気のある記事をほかの言語に翻訳するだけではすまない。記事がどこで、どうして共感を得るのか、そしてそれは、どのプラットフォームで起こるのかを把握することが重要だ。BuzzFeedが社内メッセージプラットフォームのSlackを取り入れて、地域のニュースや動画が急速に拡散しはじめたら、エディターたちにアラートが自動的に発信されるようにしているのはそのためだ。

別の国に散らばっているエディターたちにとって、他国版ではどんなコンテンツが人気であるか、目を向けることが容易になる。そして、ほかの言語やコンテンツのスタイル、フォーマットに変換することで、そのコンテンツパワーの恩恵に預かり、話題性を活用すべく、迅速に行動に移すことが可能だ。

「あるコンテンツが、そのローカルマーケットもしくは指定されたプラットフォームで設定されたベンチマークの記録を超える場合、たとえば、Facebookで動画シェア率に関して75%以上を記録したときなど、Slackボットが世界中のエディターにそれを知らせることで、それを翻訳、翻案またはクリエイティブに引用することが可能になる」と。BuzzFeedのヨーロピアングロース責任者のルーク・ルイス氏はいう。

Slackのグローバル活用具体事例

たとえば、圧倒的な支持を得ているインド版では、動画「Your childhood in 100 seconds(100秒であなたの子供時代を振り返る)」を制作し、Facebook上で1200万回の視聴数を生み出した。そのアラートがネットワークの他国のエディターたちに行き渡り、それに着想を得た英国チームによって、「Growing up black British in 100 seconds(100秒でみるブラックブリティッシュの成長)」が生まれた。

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Facebookのシェア率が75%を超えた記事に対するSlackからの通知投稿

そして、過去6カ月のあいだ、世界的な成長を加速するために社内技術開発も行っている。ひとつはハニーベアーと社内でいわれている社内サーチウェアハウスだ。これは、タイムリーなミーム、イラストレーション、投稿、動画などを発掘するために利用される。エディターたちは未加工のファイルを入手し、それを自分たちで翻訳したり、作業を一手に引き受けているチームに翻訳依頼の合図を出すことが可能になる。

ルイス氏によると、最終的にこのデータベースに気分や感情やアイデンティティ、そして同様にトピックによってインデックスをつけることが目標だという。「つまり、睡眠不足の親になった気分や、クリスマスを待ちきれない気分に一致するようなインスタグラムの投稿を見つけたいといえば、それが可能になるということだ」と、彼はいった。

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ハニーベアのダッシュボード。どんなコンテンツがいつ、どこで人気となったのかを検索できる。

ハニーベアーやSlackのようなツールを使用し、より多くの知識をグローバルネットワーク全体で共有することは、リソースの重複を避け、どのコンテンツが翻訳され、ほかの地域に応用されるべきかに重点を置くことに役立つと、ルイス氏はいう。「こうしたネットワークのなかで何がうまくいっているのかを知ることができなければ、コンテンツを翻訳し、編集するチームが存在する意義はない」。

また、それは、世界最大のマーケット、つまりアメリカと拡大を続けるイギリスでうまくいっていることをただコピーするという典型的な誘惑をBuzzFeedが回避する助けにもなる。「インターナショナルチームは、常時互いに連絡をとっている。そこに潜む危険性は、似たり寄ったりのグローバルカルチャーの反映に終わってしまうことであり、それは、我々が絶えず取り組んでいることだ。重要なのは、地域に目を向けながらも、グローバルマインドを忘れないことだ」と、ルイス氏は語った。

翻訳作業

BuzzFeedは、広く拡散されている英語の記事や動画の実例を大量に保有している。そのひとつが、スタンフォード大のレイプ加害容疑者、ブロック・ターナー宛てに読まれた被害者の手紙。こちらは、2016年でもっとも閲覧された投稿であり、5言語に翻訳されている。現在は、英語以外のこうした記事が多言語で翻訳されるように懸命に取り組んでいる。

この目論見はこれまでのところ成功している。BuzzFeed JapanのニュースチームがApple社のティム・クック氏にインタビューしたこの記事は、英語、ポルトガル語、スペイン語に翻訳されたという。またBuzzFeedは、ドイツ版のニュースが、あるパターンに従って関心を呼び起こすことに気づいており、400万の閲覧数を生んだ「25 facts that will destroy your worldview(あなたの世界観を破壊する25の事実)」のように、イギリスの読者向けに英語に翻訳された際、同じように人気が出ることを証明している。

BuzzFeedは異なるエリアごとに違うものになる

ルイス氏がBuzzFeed英国版を立ち上げて3年、5名にも満たなかったロンドンの従業員数を113名にまで成長させた。来年初頭に開始予定の社内動画スタジオの投入のため、現在さらにスタッフを採用し続けているという。BuzzFeedは、フランス、ドイツ、スペインで編集業務を行い、日本ではYahooと業務提携、ロシアのBuzzFeedは主に同国のFacebookのようなプラットフォーム、VKで活躍している。ロシアでは、そのプラットフォームにふさわしいコンテンツを作成しているスタッフが1名いて、人気コンテンツや短いフォーマットの動画を作成。BuzzFeedによると、そのなかにはVK上で90万ビュー獲得しているものもあるそうだ。

ソーシャルメディアプラットフォームとしてはFacebookが支配しているインドでは、郷愁を呼び起こす話題やメイク、美容に関する分野のソーシャル動画を用いてオーディエンスを成長させている。インドのFacebookコミュニティはとても活発で、強烈なユーモア感覚をもっているため、コンテンツの多くは、その特徴を利用している。ルイス氏は「コンテンツはほんとうに愉快で、独特のトーンと趣がある」という。

「Indian Women Are Never Taught How To Be Alone, And That’s A Problem(インド人女性はひとりでいることを教わったことがない、それが問題だ)」のような、インドのミレニアル世代の女性たちの懸念を浮き彫りにしている個人的なエッセイも、共感を呼んでいる。「基本的には、BuzzFeedは違うマーケットではまったく違うものとして受けとめられることが可能だ。我々はそれに対して寛容である」と、ルイス氏は述べた。

Jessica Davies(原文 / 訳:Conyac)