フィナンシャル・タイムズ、「LINE」で記事配信を開始:オーディエンスのグローバル化が狙い

英経済紙「フィナンシャル・タイムズ(Financial Times、以下FT)」が、配信プラットフォームに日本のメッセージングアプリ「LINE(ライン)」を追加した。

サーモンピンクの紙面が特徴のFTは、この数週間、「アート&カルチャー(Arts and Culture)」セクションの長編記事を中心に、LINEへ1日約4本の英語版記事を発行してきた。LINEユーザーは、日本、インドネシア、タイ、台湾に集中しているので、FTは、ニュースの総まとめとなる、この投稿にアジア関係の記事も含めている。

フォロワー数は現在約12万人

過去の報道では、FTの読者の3分の2は英国以外の国にいると推定されていた。FTでオーディエンスエンゲージメント担当責任者を務めるレネー・カプラン氏は、LINEについて、世界中でオーディエンスを拡大するひとつの方法だと述べ、「メッセージングアプリ『WhatsApp(ワッツアップ)』の場合は、英国、米国だけでなくインド、シンガポールでオーディエンスのエンゲージメントが高かった」と説明している。

これまでのところ、LINEにおけるFTのフォロワー数は11万9000人で、ほかのパブリッシャーとエンゲージメントは、ほぼ同じだ。米週刊誌「タイム(Time)」は1週間で12万5000人のフォロワーを集め、先週からLINEに登場した経済ニュースサイト「ビジネスインサイダー(Business Insider)」は、13万5000人のフォロワーを獲得している。

これらの数字は、全体から見ると少ない。だが、印刷版とデジタル版で78万人の定期購読者を抱えるFTは、決して規模を追求してきたわけでもない。LINEには、WhatsAppのようなメッセージングアプリよりも多くの機能がある。たとえば、タクシーを呼んだり、請求書の支払いを行ったりできるのだ。もっと完成度の高い製品をFacebookの「Messenger(メッセンジャー)」に投入する前に、LINEを利用してボットを試そうとしているパブリッシャーもいる。ちなみに、Messengerの方が、ターゲットとなるオーディエンスは多い(LINEのユーザー数は2億1800万人で、Messengerのユーザー数は10億人)。

リオ五輪のビーチバレーに関するこの記事は、LINEで大きな数字を稼いだ

関係構築のためのトライアル

「LINEでオーディエンスとどういう関係を築けるか理解したい。利用状況や、このプラットフォームのオーディエンスがFTのジャーナリズムとどのような関わりあい方をしたいと思っているのか、そうしたオーディエンスに最大の価値をもたらすものは何かを理解するために、多様なトピックやフォーマット、通知を試すつもりだ。特定のフォーマットや通知を体験した場合に、エンゲージメントが高いと分かれば、調整していく」(カプラン氏)。

LINEでこれまででもっともエンゲージメントが高かったFTの記事は、リオ五輪関係の記事だ。たとえば、自転車競技の参加チームが、いかにわずかでもタイムを縮めようとしているかという内容の記事は、「いいね」が1100件、共有が58件、深夜のビーチバレーの試合に関する記事は、「いいね」が1100件、共有が78件だった。これらにより、FTは、国際政治と経済でもっともよく知られているものの、決してそれだけを扱っているわけではないと潜在的な読者に示した。

さらに広範な戦略の一部

FTは、LINEのほかにも、新規のオーディエンスを獲得する方法を試している。2015年は、1カ月間の有料トライアルを導入して、1カ月分の記事を1ポンド(約140円)で閲覧できるようにした。また、厳しい課金制を適用されずに閲覧できるソーシャルメディア向けコンテンツを増やした。5月には、無料でアクセスできる記事1本をWhatsAppに投稿開始。こうした記事では、絵文字も組み合わせて使用し、5人のジャーナリストで構成されたソーシャルメディアチームが管理している。EU離脱の是非を問う国民投票後にどうすればロンドンが生まれ変われるかをテーマにした記事のように、一部は、LINEでも読めるようになる。

FTにとって、LINEは、プラットフォームと購読者の関係の理解に向けたもっと広範な戦略の一部だ。「モバイル化が進む全世界のオーディエンスにとって最高のサービスとはどういうものか、インサイトを得ることが重要だ。ほかのプラットフォームにおけるキュレーションとエンゲージメントに関するFTの戦略を知らせるのにも役立つかもしれない、アジアの若いオーディエンスについてのインサイトだ」

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)
Images via the Financial Times.