雑誌メディアブランドが示す、デジタル広告の可能性:講談社が「デジタル広告大賞」を発表

講談社は7月26日、帝国ホテルにて第39回「読者が選ぶ・講談社広告賞」、第1回「講談社デジタル広告大賞」の表彰式を開催した。

すでに歴史が長い「読者が選ぶ・講談社広告賞」では、自社の対象媒体17誌に掲載した純広告のなかから、読者アンケートによって選ばれた25作品を「雑誌賞」として選出。そのなかで、最優秀賞「広告大賞」になったのは、『VOCE』に掲載されたシャネル株式会社の作品だ。

その一方、注目すべきは、今年から新設された「講談社デジタル広告大賞」だ。講談社のような100年の歴史を有するレガシーなパブリッシャーが、雑広と肩を並べるように、Web広告を権威づけるというのは、隔世の感を禁じ得ない。

こちらでは、講談社の12のWeb媒体へ対象期間に掲載されたWeb広告から、それぞれの編集長が26作品をノミネート。最終的にコミュニケーションディレクターの佐藤尚之氏、ブルーカレント代表取締役社長の本田哲也氏、作家のはあちゅう氏が審査を行い、「純広告部門」「タイアップ動画部門」「タイアップ総合部門」で、8作品が選ばれた。最優秀賞となる「デジタル広告大賞」は、「FORZA STYLE」に掲載された青山商事株式会社の作品が受賞した。

表彰式後には、講談社で第一事業広告部長務める瀬尾傑氏がモデレーターとなり、「講談社デジタル広告大賞」の審査を行った3名のトークセッションを実施。雑誌とデジタル広告の関係性、フェイクニュース問題、そしてテクノロジーの発展と広告表現について語り合った。

左から、瀬尾氏、佐藤氏、本田氏、はあちゅう氏。

左から、瀬尾氏、佐藤氏、本田氏、はあちゅう氏

デジタル訴求にマス的表現は通用せず

雑誌とデジタルの関係性について、本田氏は「(レガシーメディアとしての)雑誌の良さを、デジタルが拡張できる」と語る。その相乗効果として、「メディアと読者の一体感が醸成され、ムーブメントを作ってしまうような影響力をもつこともあるはず」と、デジタル広告の可能性について言及した。

一方で、佐藤氏はデジタル広告にはマスメディアとは違う視点が必要で、レガシーメディアには強みがあると語る。「マスメディアの場合は読み手の目を引く広告が重視されてきたが、デジタルの場合は派手な露出で読み手のアテンションを取るよりも、コンテクストを感じるようなエンゲージメントを考えていき、共感させていく方がうまくいく。キャッチーなコピーライティングではなく、雑誌編集の強みであるライティングで共感を創りだす方が通用するはず」と述べた。

これに対し本田氏は、「デジタルでの表現方法は多様にあるので、雑誌よりもストーリーテリングの範疇が広がる。また、どういう環境で見られているかの想像力が大事だと思う。たとえば、絶対に音を出せない環境で観ている人もいるだろう。広告を見られる環境が限定的な状況だけではなくなった」と、メディア環境の変化の認識を強調した。

また、はあちゅう氏はSNSを使った情報の発信と受信が身近になったことで、「共感を感じることが肌身に近づいてきたんじゃないか」と分析する。「拡散するにしても、各SNSによってクリエイティブを用意することまで考えなければならないと思う」。

テクノロジーの発展だけで共感は得られない

昨今、大きな議論が沸き起こっているWebメディアの信頼性ついて佐藤氏は、「本当に良いものは評価されるという流れを作っていくことが重要。良い表現のお手本が作られてくると、ある種の基準ができてくると思う」とコメント。はあちゅう氏も「ネットは基準のない世界。目立てばいいという感じがある。そんななか、(今回のイベントのように、広告の)コンテンツに世界観があり、読者とのコミュニケーションを評価される場があるというのは、すごくいいこと」と同調した。作り手同士で良いコンテンツを共有し合うことは、互いに啓蒙しあう機会にもなる。

さらに、これからテクノロジーによって新しい表現方法が出てくることや、AIの発展で広告がどう変わるのかという問いについて、佐藤氏は「人の心が変わるのは共感があるからで、テクノロジーの発展はまったく関係ない」という。本田氏も「あるブランドや商品に新しい意味付けをしていくとか、ある情報に新しい意味をつけていくのは人間の仕事」と、テクノロジーによる最適化は新しいモノを作るための手段でしかないと主張した。

はあちゅう氏は、「新しいモノを使うことが目的になってしまいがちだが、伝えたいメッセージに合わせてテクノロジーをうまく使い、メッセージをブレさせないことが大事」と、トークセッションを締めくくった。

Written by 中島未知代
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