NFLの視聴率低下、テレビの「じり貧」化の兆候か:「そのときはいつかやってくる」

革命は多くの場合、ものすごく時間がかかる。

NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)は、ずいぶん前から、ほかのテレビ事業者を悩ませている視聴者数減少には縁がないとされてきた。しかし、先日のニールセン発表で、2016年シーズンは視聴率が8%低下したことが明らかになった。

テレビ番組のさらなるデジタル化を望む人たちは、この結果をリニアテレビ(従来のテレビ放送)を終わらせるための根拠として利用するかもしれない。アナリストたちによると、業界が頼りにしてきたスポーツ番組の視聴率低下は、いまはまだテレビ業界に収益力があっても、じり貧であることを示唆しているという。

「(リニアテレビがマーケットを統制できなくなる)そのときはいつかやってくる」と語ったのは、米調査会社ディフュージョン・グループ(The Diffusion Group)のアナリスト、ジョエル・エスペリエン氏だ。「しかし、いまはまだゆっくりとした出血だ」。

米大統領選が低迷の理由か?

この記事のためのインタビューをNFLに求めたが、同リーグからは断わられた。ただ、あるリーグの広報担当者は、視聴率の低下は大統領選挙のためだという。選挙前の視聴率は前年比14%の減少だったが、選挙後は1%の減少にすぎなかったというのだ。

しかし、NFLの人気チームである「ダラス・カウボーイズ」と「グリーンベイ・パッカーズ」の2チームが躍進したにもかかわらず、選挙後も視聴率が昨年を下回った事実は注目に値する。業界関係者たちのあいだでは、さまざまな時間にあまりに多くの試合が放送されていることによる飽和状態、組み合わせの悪さ、国歌詠唱時の抗議行動、フィールド外でのスキャンダルなども、視聴減少の原因になっているかもしれないと推測されている。

下のグラフは、シーズンを通した視聴者数を前年と比較したものだ。選挙は、第9週と第10週のあいだに実施された。

2015年シーズン(赤色)と2016年シーズン(緑色)のNFLの視聴者数(単位は百万)

視聴率低下が招く問題

理由が何であれ、NFLの視聴率低下はテレビネットワークにとって、困った問題となる可能性があると、エスペリエン氏は述べる。メディア業界の動きがどれだけ速くなろうと、スポーツチームと結んだ長期契約に拘束された状態にあるからだ。あるアナリストは、匿名を条件に、「柔軟性なくスポーツチームの権利を固定化したESPNのヤツらはくたばれ」と語った。

テレビネットワークは今後10年間のNFL試合の放送に570億ドル(約6兆5000万円)を支払ったが、視聴率低下の前に広告主に約束した視聴者数を保証するため、NFLのシーズン中に無料で提供する広告を増やす必要が出てきていると、ブルームバーグ(Bloomberg)は伝えた

また、テレビ業界アナリストのアラン・ウォルク氏は、NFLが「権利バブル」的になっていると語る。つまり、同リーグが実態を超えて評価されていることを、今回の視聴率低下は示しているという。

判断には時期尚早という意見も

しかし、金融サービス企業BTIGのアナリストであるブランドン・ロス氏は、NFLの視聴率は落ち込んだものの、依然としてもっとも視聴されているテレビ番組だという認識は重要だと強調。視聴率は下がり続けても、人々をテレビにつなぎとめるコンテンツはますます減っているので、放映権獲得の金額が視聴率にあわせて下がるとは限らないと語る。

調査会社ピボタル・リサーチ(Pivotal Research)のアナリスト、ブライアン・ウィーザー氏は、もっと実証的な調査が必要であり、1シーズンのサンプルというのはテレビ視聴率について断定的に語るには少なすぎるという。

同氏はまた、大きな話題を集めるスポーツの試合は、スポーツ放送の可能性を現在でも示すことができると指摘した。つい数カ月前、「シカゴ・カブス」が108年ぶりに制覇したワールドシリーズは、この12年間で最高の視聴率を記録した。ダラス・カウボーイズがスーパーボウルに行けば、新記録の可能性が出てくるのは想像に難くない。

「調査に数百万ドルをかければ、広告料とライセンス料の数百億ドルについて素晴らしい知見が得られるだろう」とウィーザー氏は述べる。「しかし、それを知りたいがためにそんな金額を使う人はめったにいない」。

Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)