IoTが導いた第4次産業革命:PwC「製造業のサービス業化」

IoTというトレンドが製造業を飲み込もうとしている。センサーから得られた情報を処理し、ソフトウェアにアップデートを重ねることは、製造業からサービス業へのビジネスモデルの大転換を意味する。PwCはインダストリアルIoT(IIoT)の実践には、堅牢なアーキテクチャやサブスクリプション(定額制)モデルの構築、企業文化の転換が重要だと指摘した。

第4次産業革命が起こっている理由

PwC米国パートナー、IoT・エマージングテクノロジーリーダーのシャヒード・アフメド氏は9月8日、東京都千代田区で開かれたイベントで、IoTが急速にトレンドに浮上した要因として、プロセッサ、ネットワークのコストが落ちたこと、クラウドの普及などを指摘。

蒸気、電機、コンピュータによるオートメーションに次ぐ第4次産業革命(インダストリー4.0)が起きている、と語った。

2020年のIoT収益は1.7兆ドル(約170兆円)に上ると予測する(下図)。

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アフメド氏は、企業の軸足を製品からサービスに移行させるべきとした。現状の製品単体の販売から付帯的なサービスを提供し、最終的にはPaaS(Platform as a Service)モデルに達すると語った。PaaSはアプリケーションソフトが稼動するためのハード / ソフトのプラットフォーム一式を、ネット上のサービスとして提供する形態のことで、いわゆるサービス業化である。

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アフメド氏はさまざまな産業での実践例を紹介。石油・ガス大手企業は、精油施設で設備に設置したセンサーにより、ポンプのダウンタイム(故障から復旧に要する時間)の7割を予測することで、オペレーションの効率性を高めた。航空サービス最大手は航空機の障害に関して多量のセンサーデータや記録データを活用し、機械故障による遅延防止を防ぐ。建設機械最大手は販売後も収集したデータから有料サービスを提供し、顧客の新規獲得やロイヤリティの強化などにつなげた。

狩猟モデルから、既存顧客重視の農耕モデル

PwCコンサルティング合同会社ストラテジーコンサルティングパートナーの尾崎正弘氏は、製品の機能と複雑さに対して、機能を消費する顧客の能力の間にギャップが生じていると指摘。新しい複雑な機能追加は、簡単でシームレスなものを求める顧客を喜ばせない(下図)。

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トレンドは所有から利用だ。製品対価を一度に大きく獲得するモデルから、顧客にサブスクリプションしてもらい、少額のフィーを積み上げるモデルに変化している。いわゆるクラウドサービスのSalesforceなどを代表格とするSaaS(Software as a Service)であり、「アウトカムビジネスモデル」とも呼ばれる。このモデルが製造業でも常態になると尾崎氏は指摘する。

このモデルを導入すると、顧客が製品を所有しなくなる。顧客が製品を保有するために生じたメンテナンス、アップグレードによるサービス収入機会がなくなり、代わりにコンサルティング、運用のような上流サービスが収入機会の中心になるという。開発はマーケットリサーチから稼働データ分析重視へと変わり、営業は一度製品を売りさえすればいい新規顧客重視の狩猟モデルから、既存顧客重視の農耕モデルに変わると指摘する。

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ビッグデータが及ぼすインダストリーの大転換

「インダストリアルインターネット」「インダストリー4.0」など、製造業のサービス業化の流れは世界的なものになっている。特に自動運転車は明確な例であり、乗用車本体を売るところから、乗用車に乗り目的地につくという「価値を売る」ことに移行が進もうとしている。

センサーが生み出すデータ量は指数関数的に増加することが予想されている。データの爆発は人間の処理能力を超えている。米IDCが2014年に発表したリポートによれば、2013年時点で分析用に整理されているデータは全データ中22%に過ぎない。非構造化データがその多くを占めており、価値密度も低い。

センサーで収集したデータをクラウドまで運ばず、ローカルで価値密度を高め、アクションをとるという「エッジコンピューティング」が検討されている。

IIoTに適した労働力は従来とは大きく異なり、SaaSビジネスのデベロッパーのようなマインドの人材や、アナリティクスに精通した人材などが重視される可能性がある。膨大なデータから産業における資源の配分と利用を最適化する試みがはじまっている。

Text by 吉田拓史
Photo Thinkstock