ワシントン・ポストが挑む、「グローバル化戦略」の中身:もはや地方紙とは呼ばせない?

海外展開を狙うアメリカのパブリッシャーにとって、最大の課題のひとつがブランド認知だ。世界的に評価されているニュースブランドでも、米国外やローカルのキャンペーンで有効な媒体とは見なされていないなかで、エージェンシーに予算を捻出させるのは容易なことではない。しかし、ワシントン・ポスト(The Washington Post)はあえてそこに挑戦する。

Amazon創業者ジェフ・ベゾスが所有するワシントン・ポストでは、エンジニアリング部門を開設して、独自の技術基盤「アーク(Arc)」を開発。これによってワシントン・ポストでは、読み込み速度をコントロールしやすくなっただけでなく、どのような読者層なのか、読者がどんな記事を読んでいるのか、動画・画像主導型コンテンツのどちらが好まれているのかといったことも把握しやすくなった。こうした情報はニュースルームにフィードバックされる。

また、ワシントン・ポストはアークをほかのパブリッシャーに販売することで、新たな収入源としている。同社では、すでにトロントのグローブ・アンド・メール(The Globe and Mail)やロサンゼルス・タイムズ(The Los Angeles Times)に販売。さらに、同社で最高売上責任者(CRO)を務めるジェッド・ハートマン氏によると、アークはヨーロッパ諸国からも関心を集めており、スペインやスウェーデンの大手パブリッシャーと話を進めているという。

定期購読者の獲得戦略

その一方でワシントン・ポストでは、米国内におけるブランド認知の改善にも取り組んできた。「アメリカでワシントン・ポストは、ワシントンD.C.の政治動向を追う新聞だと認識されてきた。だが、実際に我々のオーディエンスでワシントンD.C.に住んでるのはわずか5%だ。我々に対する評価が事実に追いついていない」と、ハートマン氏は話す。「イメージを打ち崩すのに数年はかかる」。

ワシントン・ポストがめざすのは、海外のデジタルサブスクリプションおよび広告売上の増加だ。ハートマン氏は、高速読み込みできる配信プラットフォームを強みとして海外のオーディエンスを獲得することが、いずれサブスクリプションや広告を増やすことにつながると見ている。ワシントン・ポストによると、同紙は全世界で展開するデジタル広告から1億ドル(約110億円)超の収益をあげており、米国で9000万人、海外には3000万人の月間ユニークユーザーを擁しているという。

ハートマン氏は、読者規模が大きいことで、メーター制のペイウォールに改良を加えることができるという。「我々は現在、アメリカでペイウォールの最適化を行っている。次に、一般データ保護規則(GDPR)に即した形で、世界に本格展開していくつもりだ」。現在、ワシントン・ポストでは、世界全体でデジタル版のみを購読している読者は100万人に上る(国別に分けた数字は明らかにされていない)。

この1年間ワシントン・ポストでは、アメリカの政治ニュースや分析を国際的な視点で伝えるニュースレター「ワールドビューズ(WorldViews)」を大々的に売り込んできた。たとえば、「協定からの離脱はトランプ大統領の主要外交政策」というようなニュースを日々配信する。ほかにも、世界経済フォーラム(ダボス会議)などを取り上げることでオーディエンスを獲得し、最終的には購読に繋げたい考えだ。

広告はネイティブに注力

他方、広告の面では、グローバルのニュースブランドとしての地位を築くにはもっと時間がかかりそうだ。「ブランド認知を変えるには、クライアントやエージェンシーを1社ずつまわるしかないかもしれない」と、ハートマン氏は述べる。「決して効率的ではないが、我々のコンテンツを持ってすれば、これがもっとも効果的なやり方だ。今後さらにコンテンツを配信することで、エージェンシーに対する本紙の認知度を上げていけると確信している」。

イギリスやフランス、シンガポールなどの国々に必要最低限のスタッフを配備するポスト紙は、現地の拠点を頼みの綱として、プログラマティックと直販からなる広告売上を伸ばしてきた。しかしそんな同紙も先ごろ、ヨーロッパの広告主に向けたブランデッドコンテンツスタジオを開設するため、ロンドン支局に初となるブランドスタジオエグゼクティブを迎え入れた。この領域は、これまで本国アメリカでしか進めてこなかった。

これからの半年でワシントン・ポストは、エネルギーや銀行、金融などの各セクターに属するメジャーブランドが同紙のプラットフォームの規模を認識し、自社広告が高速かつ非侵入型のブランドセーフティーに配慮した環境で配信されることを確信してもらうことに注力する。

「海外ではこれまで、どちらかというとトランザクションアドを販売してきたが、今後はコンテンツソリューションプロバイダーとしての側面を強めて行いきたいと思っている」と、ハートマン氏は語る。「それが今後、我々がめざす路線だ」。

Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)