広告に頼らない、英ガーディアンの マネタイズ 戦略:データ活用で有料会員を獲得・維持

英大手新聞社のガーディアン(The Guardian)は、広告収入よりも、サブスクリプションや有料会員などが主な収益源となっているようだ。2017年2月以来、有料会員数は20万人から50万人に増加。さらに、都度払いのコンテンツ購入も10万件から30万件に増えており、700万ポンド(約10億円)の収益を上げている。同社によると、一度のコンテンツ購入の半数はアメリカからのものだったという。

ガーディアンでは、広告ではなく読者からの収益モデルを確立するため、部署横断的に取り組んできた。編集、マーケティング、コマーシャル、エンジニア、ユーザーエクスペリエンス各部署の約50名が携わっている。ガーディアン・メンバーシップ(Guardian Membership)の編集長を務めるナタリー・ハンマン氏によると、この1年間で収集したデータにより、異なるマーケットでの顧客の行動パターンや関心ごとを特定しやすくなったという。また、このデータを既存会員の解約を防ぎ、新たな有料会員を増やすのにも活用しているようだ。

データを編集に活用

多くのパブリッシャーと同様に、トランプ大統領やブレクジット、そのほかの政治関連報道のおかげで、ガーディアンは予想以上にトラフィックと購読者を確保することができた。しかし、この勢いを今後も維持することは難しい

それを補うために、同社では新規会員獲得を目指して、独自記事を制作する構えだ。「モーメンツ(moments)」という調査記事シリーズで、編集者の経験に基づいた直感と、読者データから記事のトピックやテーマを決めていく方針となっている。

データにより、コンテンツ購入または会員購読する直前に何の記事を読んでるかを特定できるため、どういった記事に編集は注力すべきかより明確にできるという。ガーディアンは、環境や気候変動に関する記事が有料会員の増加にひと役買っていると考えている。そのため、編集チームではこの分野であまり報じられていないトピックを取り上げることで、新規購読者の獲得と既存会員を維持していく予定だ。

6月には「この土地はあなたのもの(This Land is Your Land)」というキックスターター(Kickstarter)形式のクラウドファンディングキャンペーンを立ち上げた。これは、公共の土地を無償で分け与えるというアメリカ政府の政策に関するシリーズ記事で、2カ月間で10万ドル(約1100万円)を集めた。ハンマン氏によると、このキャンペーンの売上の一部は、環境関連の編集者の採用にあてられた。

社内の人間の理解

イギリスと比べると、アメリカでは1回限りのコンテンツ購入が多く、月単位で定期購読できるオプションも最近ローンチしたばかりだ。

また、購読者や有料会員向けの限定コンテンツも用意する。そのひとつが、「私たちが話し合うべきこと(We Need to Talk About)」というポッドキャストだ。このポッドキャストの内容は、政治・文化・環境関連のトピックに関して読者や会員からメールで寄せられた質問に答えていくというもの。ガーディアンのジャーナリストや外部専門家はビッグニュースに重きを置きつつも、会員や読者からリクエストのあった話題に関してさらに洞察を深めていく。ときには質問者である読者や会員に電話し、議論することもある。

「当初は、コマーシャル部門をはじめ社内では、『他社がしているように、ペイウォール方式にすればいいのでは?』という意見が多かった」と、ハンマン氏は語る。「彼らは、我々が考えるモデルを理解していなかった。ジャーナリストを巻き込めたことが大きい。懐疑的だった社内の人間が、いまはこのアプローチに理解を示してくれているのはいいことだ」。

Jessica Davies(原文 / 訳:Conyac