あえてBuzzFeed路線をハズす、新興動画メディアの試み:CNNのリソースで若年層へ訴求

新興動画メディア企業、グレート・ビッグ・ストーリー(Great Big Story:GBS)のオフィスは、ニューヨーク市のユニオンスクエアの近くにある。社内に足を踏み入れて最初に目につくのは、フラットスクリーンモニター7台が設置された壁面だ。YouTube関連のデータのリアルタイム集計や再生回数のデイリー推移、親会社であり大手ニュース専門局CNNのライブ映像、CNNのソーシャルフィードのトラッカーなどが映し出されている。

CNNで2年半働いたベテランで、GBSの共同創設者、クリス・ベレンド氏は、次のように述べる。「これらのモニターは、拡張された我々の頭脳だ。あの壁には、チームの仕事ぶりが表れている。チームは制作した動画を大小のモニターで絶えずループ再生し、さまざまな環境で、どのように動画が再生されるかを確認できる。動画のパフォーマンスや、世界でいま何が起きているかを確認しているのだ」。

GBSは2015年10月、CNNの独立子会社としてスタートした。オーディエンスの年齢層が高い親会社のブランドに足を引っ張られずに、刺激的なコンテンツを提供することで成功してきたBuzzFeedやVice Mediaなどのデジタルパブリッシャーを追随したいと考えている。それどころか、GBSの販売担当責任者であるデヴィッド・スピーゲル氏は、BuzzFeedの元ベテラン社員でもある。

共同創設者のベレンド氏は次のように語る。「誰もが、デジタル分野から生まれ、大手企業となったViceやBuzzFeedと比べたがる。しかし、このふたつのメディアのリーチがまだ及んでいないオーディエンスのセグメント層はたくさんあると、我々は感じている」。

少し大人なオーディエンス層

ベレンド氏は、GBSのコンセプトは「賢く好奇心の強い(しかも、ミレニアル世代の)オーディエンスへ向けて、現実的なストーリーを提供すること」だという。しかし、決して硬派なニュースを扱うというわけではない。これは、知名度はそこまでなくとも、話題性のある人物やスポットに関するコンテンツの製作を意味する。最近の例としては、14歳の経験豊富なロッククライマーや、両脚を切断されながらも車椅子に乗ったまま、約200kgのベンチプレスを持ち上げたり、ロープを登ったりできる、フィットネスプログラム「クロスフィット(CrossFit)」のインストラクターに関する動画などだ。

「我々が想定しているのは、年齢が上がりViceを卒業したり、Viceを必ずしも支持していなかったりするオーディエンス――アメリカで想定される、典型的な22歳白人男性ではないオーディエンス層だ。さらにいうと、BuzzFeedの面白い記事を読み尽くし、人生にそれより大事なものがあると気付き、少し考えさせるコンテンツを欲しているオーディエンス層である」。

2015年10月の設立から4カ月が経過し、GBSは着々とオーディエンスを増やしているようだ。同社によると、Webサイトやモバイルアプリ、およびFacebookやYouTubeなどのチャネルを通じた動画再生回数が1億6000万回に達したという。スタート以来、900万人のユニークユーザーが同社のサイトやモバイルアプリにアクセスし、ユーザー1人あたりのアプリの平均週間利用時間は5分間を上回る。また、Facebookでは200万人以上のファンを、YouTubeでは14万3000人のチャンネル登録者をそれぞれ抱えている。オーディエンスの平均年齢は25歳で、CNNテレビの視聴者年齢の半分だ。

1日に3~5本の動画を製作

現在のGBSの従業員数は30人。動画製作と営業担当に全体の3分の1ずつ人員を配置しており、そのほか20%がオーディエンス開拓担当にあてられている。さらに、この年末までに全体の規模を40人にまで拡大する計画があるという。

GBSの朝は、エグゼクティブプロデューサーのコートニー・クープ氏とオーディエンス情報担当責任者のカリル・ジェタ氏が率いる全員参加の編集会議からはじまる。これは売り込みメッセージがタスク管理ツール「Trello」に投稿され、それを評価するために毎日開かれる会議で、クープ氏とジェタ氏、コンテンツおよびプログラミング担当ディレクターのマット・ドレイク氏、そして2人のシニアプロデューサーのチェックを受ける。

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グレート・ビッグ・ストーリー(Great Big Story:GBS)の朝のミーティング風景

同社は、1日に3~5本の動画を製作。通常は、2~4分間の動画だが、将来的に長編コンテンツの製作も考えている。また、さまざまなプラットフォームで動画配信しているものの、各プラットフォーム向けに動画をカスタマイズすることはしていない。

ベレンド氏は「どのパブリッシャーもリソースには限りがある。長い目で見た場合、我々にとっての適切な答えが、カメレオンのように変わることだとは思わない」という。

スポンサードポストに注力

売上の面では、GBSはもっぱら、ブランドをスポンサーとする短編ムービーやシリーズの販売に力を注いでいる。最初のクライアント2社は、世界最大のコングロマリットであるゼネラル・エレクトリック(General Electric:GE)と、法人向けITソリューションを手がけるヒューレット・パッカード・エンタープライズ(Hewlett Packard Enterprise:HPE)だ。

GBSには、ブランデッドコンテンツに取り組む際の枠組みがある。たとえば、HPEが出資した8部構成の動画シリーズ「ドリーマーズ(The Dreamers)」は、2016年2月17日に公開された。うち2本の動画は、HPEの技術が主役。残り6本は純粋に報道系の動画で、HPEの技術を利用して、さまざまな運動を推進する人々の紹介だ。報道用動画にHPEのブランドが登場するが、すぐにはそれとわかる形ではなく、データソースとして利用されてりする。

ベレンド氏は、自分の時間のうち60%は、スピーゲル氏と協力して広告主と話したり、ブランデッドコンテンツのアイデアを考えたりすることに費やされていると述べる。GBSとしては、半年以内にブランドシリーズ約12本を公開したいと考えているという。

GBSには、新興企業らしさもあるが、CNNの親会社であるケーブルテレビ向け米放送局ターナー・ブロードキャスティング・システム(Turner Broadcasting System:TBS)との関係から得られるメリットもある。スピーゲル氏によると、GBSの広告主が、TBSの線状ネットワークやストリーミングアプリのCM枠全体を購入して、スポンサード動画を流せるパッケージを販売予定だという。「オーディエンスがソーシャルネットワーク上で、何にもっとも反応を示しているのかを踏まえ、そうしたオーディエンスがTBSのどの運営チャンネルに存在するかがわかる。TBSは、ソーシャルだけでなく大画面にも登場するものを顧客に提供している」。

ある一定のセグメントを狙い撃ち

GBSは、売上のためだけに広告に目を向けているわけではない。GBSの動画のオーディエンスはほとんど、FacebookやYouTubeのユーザーだが、同社はほかの配信プラットフォームにも着目している。ベレンド氏は、特定のプラットフォームパートナーを挙げようとはしなかったが、オリジナルコンテンツの制作やGBSの既存作品のライセンシングに関して、動画ストリーミングアプリの開発業者と以前から交渉していると述べる。こうしたオリジナルコンテンツ製作や既存作品の配信からもたらされる売上が、スポンサードコンテンツ並みになる可能性はあると指摘した。

GBSのコンテンツは、数カ月以内にネット大手のAOLや米ヤフー、コンデナスト(Condé Nast) の動画ポータルにも登場する予定だ。

スピーゲル氏は「我々は数十億ドル規模の企業になる必要があるとは思っていない。ますます多くの企業がこの分野に進出するのを見ていると、そうした企業は規模を追求しているので、すべてに対応できる万能型になる傾向がある。そうしたことは、CNNがすでにやっているので、我々はニュース速報分野に進出しなくてもいい。TBSがすでに網羅しているため、スポーツやエンターテインメントを扱う必要もない。我々は、万人向けではないかもしれないが、ある一定のセグメントを必ず獲得できると思う」と話した。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Great Big Story