メディア連携、新たなスタイルで続々誕生:Google&Facebook独占の陰で

倒せないなら仲間になろう。デジタルメディアのセルサイドは、断片化した世界で広告費を争っていたが、それぞれが広告費を完全につかみ損ねるよりも、力を合わせたほうがマシだと考えはじめた。

たとえば、コンデナスト(Condé Nast)、ボックス・メディア(Vox Media)、NBCユニバーサル(NBCUniversal)が3月に発表した広告販売の提携だ。この提携により、「GQ」「ヴォーグ(Vogue)」「ヴァニティ・フェア(Vanity Fair)」「ニューヨーカー(The New Yorker)」といったコンデナストのタイトルが、ボックス・メディアとNBCユニバーサルのデジタル資産を扱うプライベートマーケットプレイス「コンサート(Concert)」に広告インベントリー(在庫)を提供する。3社はまた、適切な資産に横断的に掲載できるスポンサードコンテンツも販売するという。

3社は、インターネット調査企業コムスコア(comScore)の数字を挙げて、合計2億人の消費者へのリーチ能力を広告主に提供できると説明した。また、紙、デジタル、ソーシャルにまたがるファーストパーティのユーザーデータと、オンラインおよびオフラインの購買とをマッチさせることができる、コンデナストの「スパイア(Spire)」も提供する。

このコンデナスト、ボックス・メディア、NBCユニバーサルの提携は、広告販売の促進のためにさまざまな企業が手を組んでいる一例にすぎない。大はテレビ業界大手から小はデジタルパブリッシャーまで、あらゆるレベルで起きているのだ。通常はRFP(提案依頼書)の獲得を競うメディア企業たちだが、広告費の少なくとも一部を獲得することをめざしている。

メディアタイプ横断型の提携

いちばん最近では、ナショナル・ジオグラフィック(National Geographic)がマッシャブル(Mashable)、スキム(theSkimm)、アトラス・オブスキュラ(Atlas Obscura)などをパッケージにした「ファーザーコミュニティ(Further Community)」という新しいソーシャルコンテンツ商品を広告主に売り込みはじめた。ファーザーコミュニティでは、パブリッシャーをはじめとするコンテンツパートナーが一体になった、動画、テキスト、写真にまたがるスポンサードコンテンツのプログラムを提供している。

テレビ業界でも提携が進んでおり、大手ネットワークは、リニアテレビを含むさまざまなプラットフォームを横断して、マーケターが広告のターゲティングや測定を実施するためのデータの使い方を提案している。複数のネットーワークグループ間の提携で、いまのところ最大なのは、バイアコム(Viacom)、ターナー(Turner)、FOXネットワーク(Fox Networks)などが共同設立したターゲティングプラットフォームで独立事業の「オープンAP(OpenAP)」だ。3社はオープンAPの発表のなかで、マーケターはこれを通じて、3つのウォールドガーデンの異なるデータセットにとらわれることなく、この3社のポートフォリオに対し広告のターゲティング、支出、および測定ができると説明している。

中小のデジタルパブリッシャーやソーシャルパブリッシャーのあいだでは、アドホック(一時的)な提携が増える傾向にある。たとえば、父親に着目したデジタルパブリッシャーの「ファーザーリー(Fatherly)」は、プランデッドコンテンツのキャンペーンで7つのパブリッシャーと手を結んだ。そのひとつである「ナウディス(NowThis)」との提携では、ゼネラルモーターズのGMCシエラ(GMC Sierra)ブランド向けに4本のオリジナル動画と記事のシリーズを制作している。

こうした提携は、ガーディアン(Guardian)主導のコンソーシアムであるパンゲア(Pangea)や、2011年のAOL、マイクロソフトおよび米ヤフーの提携のような、ひと昔の広告提携とは少し異なる。かつては、複数の資産に渡るディスプレイ広告とプログラマティックメディアバイイングに主眼があった。今回は各社、コンテンツ制作やデータトラッキング機能を提供することで、単なるメディアバイイングに留まるものではないと主張している。

提携の内容はさまざま

提携の内容はさまざまだ。コンデナスト、ボックス・メディア、NBCユニバーサルの提携では、3社は余分な売り込みを避けるため、売り込み先の広告主とエージェンシーを分け合っている。コンデナストの最高ビジネス責任者で売上担当プレジデントのジム・ノートン氏は、3社間の事業協定の詳細は明かさなかったが、売上はパートナー間でシェアされている。コンデナストはまた、スパイアの利用に対しデータ料金を上乗せしている。

オープンAPでは、バイアコム、ターナー、FOXがそれぞれオープンAP専任の人員を出し、各社は自社のインベントリーのみを売り込んでいる。広告主はオープンAPに行き、リーチしたいオーディエンスセグメントを設定する。それ以降は各セラーがRFPに対応して、広告主と一緒にキャンペーンを構築してよい。こういうやり方で購入すれば、3社がそれぞれのウォールドガーデンのなかで営業しているにもかかわらず、キャンペーン結果を比較しやすくなるというのが売りだ。

「クライアントとエージェンシーが高度なオーディエンスを構築し、独自に測定するのを最大限に簡単にするというコンソーシアムだ」と、バイアコムのセールス責任者、ショーン・モラン氏は語った。

ファーザーリーとナウディスの例のような、アドホックな提携した小さなデジタルパブリッシャーには、両社が一緒に売るところと、どちらか1社が率先して販売をするところがある。クライアントを連れてくる会社が70%を取るのが典型だが、会社の規模、制作能力、ソーシャルリーチといった要因によって異なり、50対50という取引もあり得ると、デジタルバブリッシングのある幹部は語る。

「うちは基本的に善意のプライベートアドネットワークなので、(提携相手を)やみくもに売ることはせず、パートナーの代理をきちんと務めている。相手を話し合いに連れて行くが、売り上げの分配率がどうなっても、向こうはいつも喜んでいる。なにしろ、自分だけではやれないことなのだから」と、この幹部は語った。

こうしたアプローチはまた、過去のコンソーシアムのときのような批判をパブリッシャーが受けるのを防いでいる。広告主たちはかつて「キッチンにコックが多すぎる」ことに文句を言っていた。いまは、誰が何を売っているのかをパブリッシャーと広告主が把握している。

生き残りのメカニズム

新しいデジタル広告費の実に85%がGoogleとFacebookに流れており、パブリッシャーは広告主にとって魅力的な存在になるプレッシャーを感じている。比較的大手のメディア企業は、リーチの拡大とオーディエンスターゲティングの向上を、広告主に優しいコンテンツと、広告主に優しい環境で提供するというのが、競争していくためのめひとつの方法だ。

「マーケットプレイスに存在するこのデジタルデュオポリー構造のなかで、みんなが密集して仕事をしているので、提携を通じて、競争できるレベルの規模を手に入れられる興味深い方法を見つける必要がある」とノートン氏は言う。「(ボックス・メディアとNBCユニバーサルと一緒に)我々が提示しているのは、質の高いコンテンツとブランドセーフティ環境という遺産だけではない(それがあることに疑問の余地はない)。両社と提携することで、Google、YouTube、Facebook、インスタグラムなどに対抗できる規模を手に入れているのだ」。

GoogleとFacebookが過激派のコンテンツやフェイクニュースの横に広告を表示したことに、多くのパブリッシャーが反発しており、質の高いパブリッシャーにはチャンスが訪れている。

比較的小規模なパブリッシャーの場合、「生き残り」の意味合いは異なる。大手デジタルパブリッシャーやテレビネットワークがデュオポリーとの競争を心配しているのに対し、小規模プレイヤーが懸念するのは、上位のデジタルパブリッシャーに匹敵できる制作と配信の能力を提供できず、RFPの段階で敗れることだ。

「パブリッシング分野への参入コストがいまほど低くなったことはなく、マーケターは、パートナーを減らし、やることは増やしたがっている」と語ったのは、ファーザーリーのCEO、マイク・ロスマン氏だ。「このペトリ皿はそのような状況下に存在している。パブリッシャーにとって、仕事が貰えるか貰えないか、結果はふたつにひとつという状況において、本能的な生き残りのメカニズムなのだ」。

広告バイヤーは乗り気

広告バイヤーたちは、こうした提携を受け入れると話している。コンデナスト、ボックス・メディア、NBCユニバーサルの提携に関しては、すでに4社の広告主が決まっているが、まだ始動していないという理由でそれがどこであるかは明かされなかった。しかし、規模(スケール)が十分ではない。コンデナスト、ボックス・メディア、NBCユニバーサルの提携には、スケールはあるが、データターゲティングと測定に、質の高いコンテンツとブランドセーフティ環境が加わり、針が振り切れてしまった。

「(スパイアは)価値を徐々に増大させていくために不可欠な要素だ」と語ったのは、マインドシェア(Mindshare)で北米のデジタル投資責任者を務めるクリスティン・ピーターソン氏だ。同社は多くの顧客のためにコンサートを調査している。「練り上げて、データを組み込んだときに、競争の場でデュオポリー両社にもっと近い位置につけられる。規模だけが問題なら、もっと安くほかに見つかる」と同氏。

バイヤーたちも、パブリッシャーの提携は新しいものではなく、最近はより計画が練られた公式なものになっているだけらしいことにはすぐに気がついた。メディアエージェンシーも、広告キャンペーンのためにさまざまなパブリッシャーをプールしてきた長い過去がある。

懸念があるかもしれないのは、こうした提携が実際に最終的な損益にどのように寄与するのかだ。たとえば、コンサートはコンデナスト、ボックス・メディア、NBCユニバーサルがデュオポリー両社に対抗するうえで力になる一方で、3社はスポンサードコンテンツを配信するため、この大きなプラットフォームを利用し、そこにお金を投じることになる。ある広告バイヤーは、「広告費の25%は、もろもろの検証や再確認のため、アドテクに渡る。外に出るだけで必要な税金なのだ。突如として、1ドルをもっと賢く使うことが必要になる。75%しか手に入らないというだけではなく、それをさらに分割する必要があるのだから」と語った。

しかしそのバイヤーも、パブリッシャーが25社と同じRFPを争っている環境において、提携が差別化のよい方法であることには同意した。それが、パブリッシャーたちが正しい方向性だと確かに感じている部分だ。

「クライアントとブランドの資金に資する提携が何より大事なエコシステムと環境を作る必要がある」と、ノートン氏は語った。

Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)