共同戦線で難局に挑む、かつての競合パブリッシャーたち:GoogleとFacebookに対抗するために

Webパブリッシャーにとって、いまは厳しい時代だ。成長することも広告収入を手にすることも、ますます難しくなっているため、多くのパブリッシャーは、数を頼りにセーフティネット(そして利益)を手に入れようとしている。業界が共通の脅威に直面していることから、ライバル同士の提携が簡単に実現できるようになっているのだ。

こうした提携はさまざまな形を取って表れた。たとえば、トラフィックを拡大するために、ハフィントン・ポスト(The Huffington Post)やメンタル・フロス(Mental Floss)などは、他社サイトとトラフィックを共有するパートナーシップを結んだ。同様に、オジー(OZY)やニューヨーク・タイムズ(The New York Times)などのパブリッシャーも、共同ブランドのEメールニュースレターを発行している

もっと深い提携関係を結んだ例もある。ハースト・マガジンズ(Hearst Magazines)とコンデナスト(Condé Nast)は2016年2月4日(米国時間)、事務管理業務や印刷業務を統合して経費を削減するための企業パブワークス(PubWorx)を共同で設立した。独立企業として運営されるパブワークスは、ほかの雑誌出版社にもサービスを販売し、ハースト・マガジンズとコンデナストの両社に新しい収入源をもたらしてくれるはずだ。

ハースト・マガジンズでプレジデントを務めるデビッド・キャリー氏は、「A社がB社と競合するといった話は多く聞かれるが、現在の競争ははるかに広範囲に及んでおり、従来のパブリッシャーの枠を超えていることに我々はみな気づいている。我々の誰もが、世界全体を相手にデジタルの売上を競い合っているのだ」。

競争が拡大するなかで中心的な存在は、もちろんGoogleとFacebookだ。2016年には、この巨大テック企業2社だけで米国のデジタル広告売上の51%を占め、3~10位の8社のシェアを合わせてもその半分に満たないとイー・マーケター(eMarketer)は予測している。1社でこのシェアに対抗することは到底期待できないため、多くの企業が競争力を保つための新たな方法を模索しているのだ。

プログラマティック広告での提携

一部の地域で(特に欧州で)人気の高い戦略は、プログラマティックの共同体を作ることだ。2015年には、「ガーディアン(The Guardian)」「CNNインターナショナル(CNN International)」「フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)」「ロイター(Reuters)」および「エコノミスト(The Economist)」が、プログラマティック広告の売上拡大を目指したパンゲア・アライアンス(The Pangaea Alliance)を共同で立ち上げた

プログラマティック広告のインベントリ(在庫)とデータをまとめることで、パンゲア・アライアンスの加盟各社は、単独では不可能な規模と品質のデータを広告主に販売できる。その狙いは、ブランドやエージェンシーが提携パートナーの数を増やすのではなく、減らそうとしている状況で、買い手にとってより魅力的な商品を提供することだ。パンゲアの取り組みは好調な出だしを見せており、設立以来、180のエージェンシーを通じて450社の広告主が彼らの商品(在庫)を購入したという。

このモデルが確立された欧州では、フランス、ギリシャ、チェコ、そしてデンマークのパブリッシャーがみな同じようなアライアンスを設立している。また、イギリスのオンライン出版社協会(Association of Online Publishers)も、「ESIメディア(ESI Media)」「デニス・パブリッシング(Dennis Publishing)」「フューチャー(Future plc)」「テレグラフ・メディア・グループ(Telegraph Media Group)」および「タイム(Time)」と同じような取り組みを行って後に続いている。

対照的に、米国のパブリッシャーは、いまのところこのような規模での提携を避けているが、それも間もなく変わる可能性がある。ビデオゲーム、ヘルスケア、ローカルニュース専門のパブリッシャーが独自のアライアンスを設立しようとしていると、この計画に詳しい情報筋が明かしているからだ。

必ずしもうまく行くわけではない

ただし、パブリッシャーどうしの提携がいつもうまく行くわけではないことは、指摘しておくべきだろう。2008年には、ニューヨーク・タイムズ、当時のトリビューン・カンパニー(Tribune Company)、ハースト(Hearst)、そしてガネット(Gannett)が、「クアドラントワン(QuadrantOne)」と呼ばれるプログラマティック広告事業を共同で立ち上げた。だが、このプロジェクトに投資する金額をめぐってパートナー企業間の折り合いがつかなくなり、2013年に終了した。また、フル(Hulu)と呼ばれる別の共同事業も、それなりの問題を抱えている。

「ガーディアン」のグローバル・レベニュー・ディレクターで、パンゲア・アライアンスの代表を務めるティム・ジェントリー氏は、こうしたアライアンスについて、攻めと守りの両面をもっていると話す。攻めの面でいえば、広告テクノロジーの進化によって、エージェンシーの関心を引くような新しい製品をパブリッシャーが力を合わせて作り出すことが簡単になった。

ただし、守りの面から見れば、こうした動きの背景には、競争の場が以前と比べてはるかに広がっており、多くのパブリッシャーがより規模の大きな企業に完全に食われてしまうリスクに直面している現実がある。「パブリッシャーはこれまで、お互いを競争相手としてしか見ていなかった。だが今は、はるかに広い範囲に競争相手がいるのだ」とジェントリー氏は語った。

意外な組合せ(呉越同舟)

この競争は、広告の売上をめぐる戦いを超えたところにある。大規模なプラットフォームは、数十億人の人々が毎日利用する魅力的な製品を作っているため、巨額の広告予算を引き寄せている。小さな技術部門しかもたない平均的なパブリッシャーにとっては、少なくとも単独では太刀打ちできない新たな領域なのだ。

2012年には、「ニューヨーク・タイムズ」と「ワシントン・ポスト(The Washington Post)」が、ナイト財団(Knight Foundation)およびモジラ(Mozilla)とともに、コメント機能とコミュニティ機能をもつ新しいプラットフォーム「コーラル(Coral)」を開発した。関わったのは12名のチームだったが、そのほとんどが「ニューヨーク・タイムズ」と「ワシントン・ポスト」の開発者、製品マネージャー、デザイナーで、残りはこのプロジェクトのために雇われた契約社員やスタッフだった。

この取り組みの目的は、すぐには明らかにならなかった。「ニューヨーク・タイムズ」と「ワシントン・ポスト」の2紙は、オンラインでもオフラインでも読者の獲得競争を繰り広げているからだ。

新しい挑戦は無駄ではない

だが、2紙が競合していない領域のひとつはテクノロジーだと、「ニューヨーク・タイムズ」のテクノロジー担当エグゼクティブ・ディレクターを務める、マーク・ラバリー氏はいう。「我々の提携によって、当社や他社のサイト向けのより優れたシステムができれば、我々はそれで十分だ。本当の競争は、何よりも最高の記事とコミュニティ体験をどの企業が作れるのかというところにある。その領域で我々は勝負をしているのだ」と、ラバリー氏は述べる。

競争と協力をうまく両立させるのは必ずしも簡単ではないが、ビジネスにとって重要な部分以外で共用化が進むようであれば、その提携は必ずうまくいくと、ジャックダウ・リサーチ(Jackdaw Research)の首席アナリスト、ジャン・ドーソン氏はいう。このような協力には、テクノロジー、印刷、インフラ配備などがあり、どの領域でもパブリッシャーは協力し合っている。ただし、問題は、こうした共同事業のどれがうまくいくのかということだ。

「こうした試みのいくつかが失敗することは間違いない。だが、企業が現実から目を逸らさずに新しいことへ果敢に挑戦するのは、元気づけられる話だ」とドーソン氏は語った。

Ricardo Bilton(原文 / 訳:ガリレオ)
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