月間2億ユーザーを魅了する、BuzzFeed流「バズ記事」の作り方

Yahoo! JAPANとの合弁会社を設立し、2015年秋に日本上陸するアメリカのバイラルメディア「BuzzFeed」。2006年にジョナ・ペレッティ氏らによって創刊された同誌は、2015年9月時点で全世界10カ国展開、月間2億ユニークユーザーを誇る。まさにバイラルメディアの代名詞的な存在だ。

「BuzzFeed」のユニークな記事の作り方は、日本のメディアでも広く研究・参考にされている。しかし、この機会に改めて、その制作方法を見なおしてみたい。なぜ、そんなに頻繁にバイラルを引き起こせるのか。4つの観点から深掘りする。

1. バズを拾い上げ、料理する手腕

「BuzzFeed」の記事制作方法を語るうえで、なによりも外せないのは、小さなバズを拾いあげて、それを世界的にバイラルするように料理をする手腕だろう。まずは、その一例を示す動画を見てほしい。

This Pregnant Woman Did The “Tootsee Roll” During Labor And Totally Nailed It

出産を控えた女性が病室の一角で激しく踊っている。ボストン在住のニシザワ・ユキさんが子供を授かる喜びを「妊娠ダンス」で表した。夫がその様子を撮影し、Facebookに投稿。一部の間では、かなり話題となっていた。

それを「BuzzFeed」が拾い上げ、数枚のGIF動画に料理する。GIF動画に添えられるのは、「ほら、ユキはヒップホップダンスのように右に左にステップを踏み始めたぞ」「陣痛に耐えた素晴らしいステップ!」といった、茶化した見出しだ。すると、さらに読者はこぞってシェアする。バイラルが始まるのだ。

ネット上の動きをいち早く拾い上げ、多くの読者に受ける形に編集。それをFacebook、Twitter、インスタグラム、Pinterest、tumblrと、各ソーシャルに最適化された形で拡散する。ソーシャルの網でバズを起こすことが、彼らの使命なのだ。「BuzzFeed」…バズを提供する、という名前通りである。

2. リスティクル(まとめ記事)という発明

次にこんなタイトルの記事を見たことがあるだろう。

「早寝を心がける人に言ってはいけない17のこと」「遠く離れた大親友について忌々しい気持ちになる18のシチュエーション」——。

それが本当に役に立つかどうかの議論はさておき、数字で示されると、なぜか読まなくてはいけない気にさせる。こうした記事は、「BuzzFeed」の得意技のひとつで、リスティクル(まとめ記事)と呼ばれる。日本でも最近、さまざまなメディアが同様の記事を掲載するようになった。

このような記事に、読者たちは「LOL(爆笑)」「Win(勝ち)」「omg(マジかよ)」「fail(ダメ)」「cute(かわいい)」「WTF(何だこりゃ?)」などの投票を専用のシステムで行う。ワンクリックで気軽に記事へ参加できるのだ。「BuzzFeed」は「なんでもかんでも面白がる」カルチャーで埋め尽くされている。

3. データドリブンな記事運用

BuzzFeedの主な成長要因はソーシャル拡散力だ。ふざけた雰囲気のトップページとは対照的に、舞台裏ではテクノロジーが優先される。その象徴が同社のダオ・グエン氏の存在だ。グロース担当バイスプレジデント、いわゆる「グロースハッカー」。ベトナムから米国に渡った両親をもつ彼女は、ハーバード大学卒業後、フランスの高級紙「ル・モンド」オンライン版のCEOなどを経て、BuzzFeedに参画した。

米国版「Wired」によると、グエン氏は2年前にグロース担当の取締役に就任してからサイトのトラフィックを2倍に引き上げた。ソーシャルでは女性の割合が高いことに着目。オーディエンスを流入したソーシャルメディアごとに分け、それぞれのサイト内行動を分析する。

さらに新技術「Pound」によりこれまで難しかったソーシャル内行動も明らかにした。グエン氏らの2015年4月の発表では、結果としてのシェアではなく、シェアまでの過程に着目すると、「ネットワーク拡散」は有機的な森のような構造をしていると主張。たとえば、Twitterのシェア数はFacebookより少ないが、サービス内に留まるFacebookの拡散と違って、Twitterの拡散は外部のネットワークへ飛び火させる役割を果たしているという。ソーシャルメディアは拡散のメカニズム全体で評価されるべきと結んだ。これらの技術で、ソーシャル拡散のより克明な地図を手にした。

細分化されたグループに着目することはBuzzFeedの主要な戦略だ。グエン氏自身も「アジア系移民の両親に育てられたことを示す27のサイン」という自分の出自をそのまま使った記事で220万ビューを叩き出した。「これまで人口のひと桁の割合にとどまる層に焦点を合わせることはあまり好まれなかった。ソーシャルメディアで情報が広がる時代には、緊密な人間関係は情報配信メカニズムになる」とペレッティ氏は語った。

見出しもデータの審判を受ける。編集者が書いた見出しを、コンピュータがソーシャル拡散に最適なものに変えるという。「ヘッドライン・オプティマイザー」というシステムで、数パターンの見出しとサムネイル画像を同時掲載し、反応を見極めてソーシャル投入の可否を判断する。

このデータアプローチを象徴するのが、2015年2月の記事『What Colors Are This Dress?(この生地は何色に見える?)』だ。人によって「白と金」「青と黒」と色彩が違って見えるドレスに関して、SNS「Tumblr」上で小さな論争が起きた。これをBuzzFeedが拾い、「この生地は何色に見える?」と見出しを添えた。スタッフ間で議論し、たった5分で仕上げた記事は、24時間で2,400万ビューを獲得(最終的に3,800万ビュー)、欧州、アジアにも飛び火し、世界を巻き込んだ。

4. 動画にも転用される「最適化」ノウハウ

「BuzzFeed」は、2012年に開始した動画部門「BuzzFeed Video」でも成功を収めた。「BuzzFeed」のYouTubeチャンネルは7つ。ビデオ部門長、ゼ・フランク氏の個人チャンネル、CNNとの「CNN BuzzFeed」を含めれば、9つに及ぶ。若者向けのバラエティコンテンツを数分程度の「つまみやすい尺」で製作し、月間15億回視聴を得る。

動画制作部門「BuzzFeed・モーションピクチャー」のエグゼクティブプロデューサー、アンドリュー・ゴーティエ氏は、2012年に始動した動画部門の最初の1人。2014年9月のDIGIDAYのインタビュー時には、ゴーティエ氏はプロデューサー40人を指揮し、最長でも7分程度の動画を週に30本投稿する体制を築いていた。

データ重視は動画にも採用されている。「データは動画製作のすべての段階に影響を与えている」と、ゴーティエ氏は語った。「私たちは、人々の話題、自己表現やライフスタイルに関するネット内会話にとても注意を払っている。『私の友達もFacebookで、そんな感じのことを投稿していたわ』という傾向は、ネット時代では自然のこと。つまり、バイラルさせるには『より大きな会話』につなげていくことが大切だ」

「ネット会話分析」にはオーディエンスを細やかなグループに分けて分析するノウハウが使われていそうだ。動画に出演するタレントは様々な人種構成の「普通の若者」が揃えられる。主要視聴者である英語圏の都市居住者を意識した、拡散を生みやすいキャスティング。ゴーティエ氏は編集部から動画制作部門にノウハウが共有されていると認めている。

吉田拓史

(参考文献・サイト)
BuzzFeed「Introducing Pound: Process for Optimizing and Understanding Network Diffusion」
ログミ―「バズフィードの新技術『POUND』はメディアをどう変えるか―佐々木俊尚氏がテクノロジーの進化を解説」
DIGIDAY『Meet Cates Holderness, the BuzzFeed employee behind #TheDress』
DIGIDAY『The dress is white and gold. Or, why BuzzFeed won』
DIGIDAY『5 things we learned about BuzzFeed in 2014』
DIGIDAY『The secret to BuzzFeed’s video success: Data』
BuzzFeed『This Pregnant Woman Did The “Tootsee Roll” During Labor And Totally Nailed It』
BuzzFeed『From Humor to Heartbreak, BuzzFeed Thrives by Stirring Emotions』
米国版Wired.com『Inside the Buzz-Fueled Media Startups Battling for Your Attention』
BuzzFeed『What Colors Are This Dress?』