ユーチューバー斡旋業者ら、ビジネスのピボットに勤しむ:「斡旋だけではビッグになれない」

発足から6年、最大級のYouTubeマルチチャンネルネットワーク(MCN)となったフルスクリーン(Fullscreen)だが、もはやMCNと呼ばれたくはないようだ。

フルスクリーンメディアの創設者でCEOを務めるジョージ・ストロンポロス氏は、「MCNという言葉では、我々のビジネス全体を言い表せない。クリエイティブな才能を発掘し、育成し、成長させ、提携し、マネタイズするのが我々の仕事だ。それらをどう実現するかが腕の見せ所だ」という。

ほかのMCN企業からも、同じような意見が多く聞かれる。この業界は、広範囲で多面的な組織構造の改革の真っただ中にあり、一時は大いにもてはやされた企業も、持続可能で多角的な動画ビジネスモデルの確立に向けて模索している。消費者にも名前が知られるようなメディアブランドを発足させる企業もあれば、昔ながらのハリウッドスタジオモデルに力を注ぎ、増加の一途をたどるデジタル配信サービス向けに映像制作をする企業もある(両方に手を出す企業もある)。いずれにしても根本的な考えは同じだ。生き残るためMCNには進化が必要なのだ。

ライバルはNetflix

現在、フルスクリーンメディアの従業員は850人。このうち、約300人は2015年に買収したテキサス州オースティンにあるデジタルスタジオ、ルースターティース(Rooster Teeth)の元従業員だ。フルスクリーンメディアの主要事業は、以下の3部門に大別される。MCN事業のほか、ライブイベントやツアーも運営する「フルスクリーン・クリエイター(Fullscreen Creator)」、インフルエンサーマーケティングやソーシャルアセット創出、動画配信および有料メディア事業を手がける「フルスクリーン・ブランドワークス(Fullscreen Brandworks)」、そして同社でもっとも新しく、もっとも野心的な部門といえる「フルスクリーン・エンターテインメント(Fullscreen Entertainment)」だ。

このフルスクリーン・エンターテインメントのもと、同社はティーンエージャーや若いミレニアル世代に向けたブランドを確立しようとしている。昨年、同社は広告なしのサブスクリプション型動画ストリーミングアプリをリリースし、月額6ドル(約600円)で、計2500時間以上のコンテンツを見放題のサービスを開始した。その内容はオリジナルシリーズのほか、放映権を取得した映画やテレビ番組だ。

トップタレントが司会を務める10番組ほどのトークショーに加え、フルスクリーンは主力となる新作シリーズや映画を月に4~5本リリースしている。同社は、将来的に番組予算の比重を外部ライブラリーの放映権購入からオリジナルコンテンツ中心に移す予定だ。これは、Netflixがオリジナル番組や映画を増やしてストリーミングビジネスを発展させたのと共通している。フルスクリーンがいま重点をおくのはアプリ開発で、ストロンポロス氏によれば、これまでのところ登録ユーザー数は目標どおりに増加しているという。

お手本はフルスクリーン内部にすでにある。ルースターティースのサプスクリプション型ストリーミングアプリには、限定コンテンツや、イベント、グッズなどの特典を目当てに、現在20万人以上が有料登録している。ルースターティースは、デジタルスタジオの成功のおかげで、いまではオリジナルの番組や映画をYouTube RedやNetflixなどバイヤープラットフォームに対して販売もしている。

「ルースターティースは登録者コミュニティの創出に成功し、それによって番組をプラットフォーム外で販売し、ブランドを確立し、売上を伸ばし、それをコンテンツ制作に投資するという好循環を生み出した」と、ストロンポロス氏は語る。

ひとつのヒット作品がショービジネスを主戦場に

オリジナルのエンタメコンテンツ制作にフォーカスしつつあるMCN業界大手は、フルスクリーンメディアだけではない。コムキャスト(Comcast)、ハースト(Hearst)、ベライゾン(Verizon)らが出資したオウサムネスTV(AwesomenessTV)は、YouTubeネットワークを7万チャンネル以上にまで広げ、現在は「オウサムネス・フィルムズ(Awesomeness Films)」部門でトップタレントを起用した長編映画も制作している。オウサムネスTVはデジタル配信サービス企業にオリジナル番組も販売しており、Netflixやゴー90(Go90)のほか、子供向けケーブル局ニッケルオデオン(Nickelodeon)にも番組を擁している。今年、オウサムネス・フィルムズは「プレミアムショー」を4~10番組、映画3~5本を公開する予定だ。

MCN企業としてひとくくりにされがちな、ディファイメディア(Defy Media)、スタジオ71(Studio71)、ヒスパニック系ユーザーに特化したミトゥ(Mitú)などの企業も活発だ。ディファイメディアのストリーミングパートナーは、ゴー90、コムキャスト系列のウォッチャブル(Watchable)、Spotify、Netflixなど。スタジオ71のパートナーにはNBCユニバーサル(NBCUniversal)傘下のシーソー(Seeso)やウォッチャブルがあり、現在「ザ・ロック」ことドウェイン・ジョンソン主演のシリーズをYouTube Red向けに制作中だ。一方、ミトゥがウォッチャブルで放送中の番組は、つい先日リニューアルを経て第2シーズンに突入。ヒスパニック系ユーザーに特化したメディア企業であるミトゥは、Snapchat(スナップチャット)の「ディスカバー(Discover)」でもチャンネルを運営している。

オウサムネスTVにとって、オリジナル番組の制作は当初からのコンテンツ戦略の一環だと、CMOのT.J.マーケッティ氏は語る。当初、同社はYouTubeで週に最大28番組を制作しており、これらは当時のプラットフォームに合わせた短編作品が主体だった。

だが、2014年秋に長編映画『エクスペールド(Expelled)』をiTunes上で公開したことで流れが変わった。このオリジナル映画はリリース直後、iTunes映画ランキングのトップに立ち、これによってオウサムネス・フィルムズ誕生への道が拓けたのだ。

「我々がもつ、Z世代(1995~2008年生まれの世代)オーディエンスへの訴求力や、コンテンツ配信を通じたマーケティング能力の結晶が『エクスペールド』だった」と、マーケッティ氏。「あの作品で見える景色が一変した。爆発的ヒットによって、YouTube上のDIY動画から長編映画まで、制作とは一体どんなものなのかと、投資を拡大して積極的に探求することが可能になった」。

いまはまだ暗中模索

テレビ風の番組制作に関心を抱くメディア企業にとって、現在のところ市場は健全だ。コンテンツバイヤーはNetflixやゴー90から、海外配信提携先のフランスのキャナルプラスグループ(Canal+Group)など、枚挙にいとまがない。

問題は、競合他社がこぞって番組作りをしていることだ。Buzzfeedやマッシャブル(Mashable)など、大手配信メディアはこういったタイプのコンテンツにかなりのリソースを割いている。YouTubeを長年なわばりとしてきた、ディファイメディア、オウサムネスTV、スタジオ71を筆頭とする各メディアも、番組制作を手がけてすでに数年となり、着々と成果を積み重ねている。

MCNの枠組みを脱するための取り組みを推し進めるディファイメディアは、番組数を2015年秋の約35番組から75番組まで増やした。そのなかには文字通りのテレビ番組もあり、トゥルーTV(TruTV)、エル・レイ・ネットワーク(El Rey Network)、NFLネットワークで放送されている。また、映画の制作も手がけている。これらを背景に、同社は番組コンテンツのマーケットの現状に自信をもっている。たとえいまのトップデジタルバイヤーが将来衰退しても十分やっていけると、ディファイメディアのプレジデント、キース・リッチマン氏はいう。

リッチマン氏は次のように述べている。「番組コンテンツを探し求める人々は常にどこかにいる。いまのバイヤーの顔ぶれは替わるかもしれないが、ビジネス機会が失われることはない。Facebookでヒットする動画を制作するのと、ストーリー性のあるコンテンツでオーディエンスを惹きつける動画を制作することには明確な違いがある。我々は、クレバー(Clevver:ティーン向けエンタメ、セレブ情報チャンネル)のFacebookページに動画を載せて3000万ビューを稼ぐことも、YouTubeで1000万ビューを獲得する動画を制作することも、テレビ向けのドキュメンタリーを制作することもできる。だが、大規模メディアはこういった広範囲での競争を強いられ、容易なことではない」。

なんといっても必要な投資が莫大で、MCNを含め、どんな企業にもできるわけではない。オリジナルコンテンツへの投資を怠ったことは、メーカースタジオ(Maker Studios)の没落の理由のひとつと指摘される。

リッチマン氏は従来のMCNモデルを、「タレントを広告主に効率よく斡旋するだけで、大規模ビジネスを展開できるとは誰も思っていない」と切り捨てる。「主力事業がMCNであるうちは、コンテンツ制作企業としてビッグになれない」。

多様化か、死か

現在、オウサムネスTVにおけるMCN事業の割合は「100分の1」だと、マーケッティ氏は語る。ブランドの確立と若い視聴者の獲得に邁進する同社は、事業ポートフォリオを多様化。ライセンス契約、商品販売、ライブイベントなどの事業内容は、フルスクリーンと同様だ。

それに伴い、MCNと同じく不安定なビジネスである広告への依存度は低下している。たとえば、ディファイメディアの売上の3分の1は、広告以外に由来。スタジオ71では、広告以外が売上の半分弱を占めると、同社プレジデントのダン・ワインスタイン氏は語る。「制作、ライセンス、マーチャンダイズ、書籍、ツアー、それに我が社のタレントが選んだギフトセットの定期購入まで行っている。広告以外の収入は、ビジネスのかなりの部分を占める」。

他社と同様、スタジオ71のビジネスの中心はタレントであり、比較的少数(万単位ではなく、1200人)のクリエーターと提携し、彼らと共同でプロジェクトを進めることで成長してきた。同社は先日、5300万ユーロ(約62億円)の資金を調達し、これを高品質な番組や映画の制作に投資する予定だ。

フルスクリーンはといえば、ミッションはいまも変わらず、クリエイティターの才能発掘、育成、成長、提携、マネタイズだが、その事業目的(と、それがもたらす売上)は一変した。

ストロンポロス氏は次のように述べている。「結局のところ、我々は優れたタレントを発掘し、優れたコンテンツを制作し、オーディエンスと繋がりを築き、彼らが忠実に時間とお金を投資してくれるようなサービスを提供するため、多角的な展開を進めているのだ」。

Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)