完全デジタル化した「インデペンデント」紙のビジネス戦略:商売の肝はデータの差別化

英国の新聞「インディペンデント(Independent)」と「イブニング・スタンダード(Evening Standard)を所有するパブリッシャー、ESI メディア(ESI Media)では、広告主が利用できる1億1300人のユーザープロファイルと900のターゲティングセグメントを有している。

しかし、「インディペンデント」がオンラインのみに移行したいま、ESIメディアは、オーディエンスデータの拡大とマネタイズのための新しい方法を必要としているようだ。

問題は、誰もが同じツールを使用するなか、データ戦略の差別化が難しいことだ、と、ESIメディアのコマーシャルデータ戦略ディレクターであるジョー・ホールダウェイ氏は次のように述べている。

「今後データをいかに売っていくか、新しい方法を考えなければならない」とホールダウェイ氏。「どこも同じDMPとサードパーティデータを使っているなか、差別化が難しくなっている。ファーストパーティデータを我々のサイトに確保し、高い収益を得られるようにすること、つまりリークを防ぐことが不可欠だ」。

「インディペンデント」では、以下のような取り組みを考えている。

リアルタイム記事データを提供

媒体社によるチャートビート(Chartbeat)など分析ツールの使用は、いまや当たり前になっているが、「インディペンデント」は、やや遅れをとっていた。一カ月前にチャートビートをインストールした同社は早速、リアルタイムダッシュボードのデータアクセス提供について、エージェンシーと話し合っているという。

記事データにアクセスできれば、エージェンシーはトレンド中のトピックや記事をもとに、リアルタイムコンテンツマーケティングを企画し、提供できる。また、サイトのどこで読者の滞在時間がもっとも長いのか、読者がどこからサイトにやってきたかなどもわかるため、こうしたデータに基づきキャンペーンを調整することができるのだ。

「読者がどこから来たかによって、ユーザー行動がかなり違うことがわかった。検索からの流入は、より長時間サイトにとどまる傾向にあり、ソーシャルメディアからの流入は、毎日サイトに戻ってくる」と、ホールダウェイ氏は語る。

ファーストパーティデータを守る

「データリーク」とは、パブリッシャーにとって貴重なオーディエンスデータが許可なく収集されることだが、これは目新しい問題ではない。リークのトラッキングとコントロールは、非常に難しいが、不可能でもない

「インディペンデント」では、現在プログラマティックトレーディングを強化中であり、これはデータリークの監視が一層難しくなることを意味する。しかし、同紙の広告チームはリークを抑止する対策をすでに取っている。「我々のデータを集めたいなら、別に構わないが、誰が何のために集めるのかは、我々が決定したい。これからはもっと用心深くするつもりだ」と、ホールダウェイ氏。

いまのところ、こうした対策は手作業によるものだ。同紙はプログラマティックパートナーから入ってくるクリエイティブの抜き打ち検査を行い、エージェンシーのクリエイティブ資産が直販ものか、ネイティブキャンペーンかを確認する。契約で認められていないビーコン、ピクセル、クッキーがある場合、パートナーに検証が求められる。今後は、このプロセスを自動化する業者を雇う予定だという。

アドブロックユーザーのマネタイズ

アドブロックユーザーは、実は質の高いオーディエンスであり、すなわちマネタイズの可能性を秘めている。これはパブリッシャーにとって皮肉な話ではある。「インディペンデント」のトラフィックのうち、アドブロックされているのは10%に過ぎず、英国の標準である20%を大きく下回っている。

しかし、同紙は楽観視していない。近頃、「インディペンデント」はサイトのホワイトリスト化を要請する最初のポップアップメッセージを展開する予定だ。ただし、コンテンツのブロックはいまのところ行わないという。

それよりも、「インディペンデント」のコマーシャルチームは、どういったユーザーがホワイトリスト化を行っているのかという点と、「アドブロック信者」ユーザーの動態にも興味があり、彼らについてもっと詳しく知りたいという。

「アドブロック信者は、平均的な読者よりもサイトの滞在時間が長く、消費するページも多いことがわかっている。彼らは興味深いグループであり、少なくとも我々メディア自体の商品を売り込んでいくべき層だ。どのようにマネタイズしていくか検討している」。

時間ベース購読とログインデータ

「インディペンデント」は、アプリのデータ、登録データ、ビューアビリティデータを解析するデータアナリストを雇用した。現在、登録データを活用したパーソナライズ化されたメールサービスをテスト中で、編集チームがまとめた記事と、アルゴリズムで選んだコンテンツの両方をメールサービスとして届けているという。

同紙では、有料・無料のアプリおよびサイトの使用時間も調査しており、時間ベース購読の採算が取れるかどうか検討中だ。時間ベースの購読は「ファイナンシャル・タイムズ(Financial TImes)」や「エコノミスト(Economist)」が実施している。ホールドアウェイ氏によると、読者は「インディペンデント」の日刊アプリを1日2回使用しており、平均で20分、各セッションで最大40ページを閲覧しているという。

「時間ベースの商品には、非常に興味があり、アプリやサイトでどの程度の時間が費やされているのか、調査を行っている。具体的なプランを作成する前に、各方面ともっと話をしてみたい」とホールダウェイ氏は述べた。

Jessica Davies(原文:訳 / 片岡直子)