メルマガ「ハッスル」、なぜイマドキの若者にウケるのか?:友だち口調で購読者数10万人獲得

サム・パー氏がミレニアル世代をターゲットにしたメルマガサービス「ハッスル(the Hustle)」を思いついたのは、スタートアップ創業者を集めるカンファレンス・ハッスルコン(HustleCon)について友人たちにメールで告知しているときだった。

告知メールには実に多くの反応があり、そこでパー氏はメールを通じてミレニアル世代とつながるチャンスがあると気づいた。そして「ハッスル」は生まれた。現在の購読者数は10万人に上るという。

ミレニアル世代を狙ったニュース・パブリケーションは少なくない。そんななかでパー氏が開拓しているのはカルチャーとテックに関する情報を「くだけた会話口調」で語るサービスだ。これまでの記事には「マイクロドージング:14日間LSDを使ってみた。何のため? 生産性を高めたり…とか色々ね」「ソイレント:食べ物無しで30日間過ごしたら何が起きたか」といった物から、「アプリを作るのにはいくらかかる?」といった起業家むけのビジネストピックも含まれている。文章には「野郎(dude)」「ヤバい(insane)」といった「気楽な男友達のノリの口調」が確信犯的に使われているのだ。

パー氏は現在26歳、「ハッスル」はジョン・ヘイヴェル氏と共同で創業した。「ViceがCNNとFoxニュースのあいだのポジションを埋めたように、『ハッスル』はビジネスをテーマに、若くて裕福なオーディエンスにフォーカスしてやっている。それはCNBCと『ウォール・ストリート・ジャーナル』のあいだのポジションだ」と語る。

50万ドルでやらかしちゃう

パー氏は決してメディア業界で目立つような経歴はもってはいない。ナッシュビル生まれで、ホットドック屋のチェーンを経営し、それを売却した後、サンフランシスコに引っ越してヘイヴェル氏と出会った。ヘイヴェル氏はパー氏が宿泊していたAirbnbの家主だったという。

ふたりは一緒にルームメイトをマッチングするアプリを開発し、それを売却する。その後、パー氏はハッスルコンの第1回目を企画することを決意した。「テック業界の知り合いはたくさんいたし、若い人々を集めてカンファレンスをしたかった。TEDトークのようで、でもあそこまで偉そうじゃない感じのものをやってみたかった。自宅でハッスルコンを作り上げて、損失が出るだろうと思っていたが、最初の6週間で5万ドル(約500万円)も売り上げた」とパー氏は話す。

カンファレンスでスピーチをした企業のうちジェネラル・アッセンブリー(General Assembly)、Amazon、そしてナード・ウォレット(Nerd Wallet)を含む12の企業が、パー氏の会社を大きくするために50万ドル(約5000万円)を出資した。

当初から、かなり砕けた口調を使うという方針は明確であったという。それは「オレたちスタートアップが50万ドルでやらかしちゃう様を見るんだ」と、タイトルが付けられた会社のマニフェストからも明らかだ。

広告収入が意外と伸びている

「ハッスル」はサンフランシスコを拠点としており、現在6人の従業員を抱えている。主な収入源はハッスルコンだ。ハッスルコンの参加者は、2016年だけで2000人になっている。しかし、会社の成長のキーとなっているのはメールによるニュースレター、つまりメルマガだ。メルマガ上のネイティブデジタル広告の収入はイベント収入を越すことが予測されている。広告主にはオンラインマットレス販売のキャスパー(Casper)やインベストメント会社ウェルスフロント(Wealthfront)などが並ぶ。パー氏は今後3カ月で会社組織に10から15の新しい役職を加える予定だという。

メルマガ開封率はユニーク数で35%から40%である。Eメール・マーケティング会社であるメールチンプ(MailChimp)の調べによるとビジネス・ファイナンス分野のパブリケーションでは、メルマガの開封率は21.2%であるという。それを考えると非常に高い数字だ。しかも、21.2%は複数回の開封もカウントされているから、通常は数字が大きくなるのだが、「ハッスル」の開封率はそれも大きく上回っている。比較対象として、「ニューヨーク・タイムズ」のメルマガの開封率は去年50%から70%のあいだであった。しかし彼らは、ユニーク数での開封率は公開していない。

eメールでのサービスがWebサイトにオーディエンスを誘導するようになっている。Webサイトは月に50万から100万ビューを集めていると、パー氏は語る。(コムスコア[comScore]の最低レポーティング基準を満たしていないために、この数字を独自に確認することはできなかった)。

新規獲得は友達の口コミで

「eメールのおかげで素早く規模を拡大することができている。安価にオーディエンスを集めることができ、また、ユーザーと近い関係を築くことができる」と、パー氏は語る。

しかし、ユーザーベースはどうやって成長しているのか。読者たちを「アンバサダー」として招待し、彼らの知人たちの連絡先を手に入れることで「ハッスル」のメルマガやカンファレンスについてさらに広く告知している。アンバサダーになると、自分を通じてハッスルコンに登録した人数に応じてフード付きのパーカーもしくはカンファレンスのチケット(価格250ドルから400ドル[約2万5000円から約40000万円])が与えられる。現時点で430人のアンバサダーが存在しており、最初の月だけでアンバサダーを通じてハッスルコンに参加登録した人数は5000人になったとパー氏は話す。

「ハッスル」の競合には大手のパブリッシャーたちが並ぶ。「フォーブス(Forbes)」や「ビジネス・インサイダー(Business Insider)」のオーディエンスは、45%以上が18歳から34歳の間に収まっている。世代間の動向やトレンドを調査する企業カッサンドラ(Cassandra)のシニア・インサイツ・ディレクターであるメラニー・シュレッフラー氏によると、「ハッスル」の文体はプロフェッショナルなニュースを面白味のあるものにしているという。また、メルマガモデルは自分のペースでコンテンツを閲覧したいミレニアル世代に適していて、絶妙なトーンを維持しているとのこと。

「ハッスル」自身は男性向けに限ったパブリケーションだとは打ち出していないものの、男性寄りにしているのは賢いとシュレッフラー氏は指摘する。というのも最新のニュースや時事的な出来事を知っていることが重要だと考える男性は全体の80%に対して、そのような傾向の女性は全体の73%という統計をカッサンドラは出しているからだ。「我々はこの傾向を『取り残された男の子たち』と呼んでいる。というのも若い女性プロフェッショナル向けのパブリケーションはたくさんあるからだ」と、シュレッフラー氏はそこにビジネスチャンスがあることを指摘した。

Jemma Brackebush(原文 / 訳:塚本 紺)