「AMPやIAには頼らない」:米「デイリー・ビースト」の自社サイト回帰な考え方

分散化の取り組みに悩みを抱えるパブリッシャーは、ザ・デイリー・ビースト・カンパニー(The Daily Beast Company)のやり方を参考にするといいだろう。

インターネット事業会社IAC傘下のニュースメディア「デイリー・ビースト(The Daily Beast)」は、延べ2200万人ほど存在する月間オーディエンスの40%を自社サイトへ誘導している。しかも、毎月トラフィックの44%が直接訪問してきたユーザーによるものだという。2年前には、この割合はわずか28%だった。

「デイリー・ビースト」はGoogleとFacebookから相当なトラフィックを獲得しているが、分散させたコンテンツのリーチを拡大するより、メールマガジン(購読者数はこの1年で倍増)とアプリを使って、自社サイトへオーディエンスを取り戻すことに注力している。同社はGoogleのモバイルWeb高速化プロジェクト「AMP(アンプ:Accelerated Mobile Page)」を利用していない。また、Facebookの「インスタント記事(Instant Articles)」も、短期間トライアルしたあとに利用をやめている。

読者ロイヤリティの高さが強み

「我々は、過度な最適化という考え方に囚われる必要はないと思っている」という語るのは、「デイリー・ビースト」のプレジデント兼発行人を務めるマイク・ダイアー氏だ。「この手のプラットフォームを利用しはじめた多くのニュースパブリッシャーが、そのプラットフォーム向けにコンテンツを最適化する作業に膨大な時間を費やしている。我々は決してそのようなことはしない」。

「デイリー・ビースト」のサイトは、ロイヤルティが非常に高い読者の習慣的な行動から、ある程度の恩恵を受けている。直接流入してくるトラフィックの多くが、勤務時間中のデスクトップPCから流入しているのだ。ただし、デスクトップからの流入が、モバイルよりどの程度多いのか、ダイアー氏は明らかにしなかった。

しかし、デスクトップからのトラフィックが多いからといって、ユーザーが古いタイプの人たちであるというわけではない。ネット調査企業コムスコア(comScore)の統計によれば、「デイリー・ビースト」のユーザーの半分はミレニアル世代だ。また、デスクトップから着実にトラフィックを得られている状況に、同メディアが満足しているわけでもない。

モバイルサイトも独自に高速化

同社は2015年、高速化を図るためにモバイルサイトを全面的に見直した。その結果、パフォーマンステストツール「モビテスト(Mobitest)」の分析によるサイト読み込み時間は、いまや3秒以下になっている。ダイアー氏によれば、このおかげで同社のサイトは、もっとも高速なモバイルニュースサイトのひとつとなったという。

また、このモバイルサイトは、重要なタイムリミットを守ることにも成功している。Googleが先週公開した調査結果によれば、全スマートフォンユーザーの半数以上が、3秒たっても読み込まれないモバイルWebページは閉じてしまうと答えている。

サイトに経済的に利益をもたらすファイルやツールをひとつも取り除かずに読み込み時間を短縮するのは、手間のかかるプロセスだった。だが、実行する価値はあったという。

「GoogleとFacebookは、我々にすべてのツールを削除してほしいと思っていることだろう。サイトで稼ぐための取り組みは、やり方を間違えるとページの速度を遅くしてしまう」とダイアー氏。「だが、我々はこのバランスをうまく取っている」。

サイト内回遊の考え方も変えた

「デイリー・ビースト」はまた、読者がサイト内に滞在する時間を延ばす取り組みに時間とエネルギーを費やし、新しい読者にコンテンツをプレゼンする基本的な考え方(そしてアルゴリズム)を見直した。

たとえば、政治の記事を読むためにサイトに来た読者は、以前であれば、政治的内容に関連した記事やサービスに関心をもつと考えていたかもしれない。だが、ダイアー氏によれば、その種のコンテンツを押し出しすぎると、うまくいかなくなるという。

「パブリッシャーは最初のページビューを重視しすぎている」とダイアー氏は話す。ひとつのトピックに関するニュースばかりを読者に見せることは、いまのほとんどの人がニュースを消費する方法から見て「正反対」のアプローチだという。「彼らは深く掘り下げようとはせず、浅く広くサイト内を動こうとする」と、指摘する。

労力を注ぐのは自社サイト

こうして考え方を変えて以来、セッションあたりのページビューは20%急増しており、そのような考え方に基づいた最適化を、記事の編集に影響を及ぼさないレベルで続けているとダイアー氏は話す。同氏によれば、「デイリー・ビースト」でもっとも成功している記事は、さまざまな観点からトピックと関心をつなぎ合わせた記事だという。

ただし、同社が読者のために行うサイトの最適化においては、オーディエンスを細分化する計画はないという。「途方もない数のセグメントに対して最適化を行うために、膨大な時間を費やすつもりはない。我々が多くの労力を注ぎ込みたいのはホームページだからだ」。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)
Photo by Alec Perkins (CreativeCommons)