ロナウドも巻き込まれた、スペインのフェイクニュース事情:日刊紙「エル・パイス」の取り組み

去る2017年1月22日、サッカーのクリスティアーノ・ロナウド選手が手を怪我し、自身のランボルギーニを廃車にせざるをえなかったというニュースが広まった。そのとき、スペインの日刊紙「エル・パイス(El País)」は、まず警察に事実確認の電話をかけた。同紙は、そのニュースの真偽を確かめることができなかったが、のちにそのクルマの所有者が別人だったことを知り、紙面で、その虚偽を暴いた

これは、フェイクニュースといっても、ゴシップ程度のものといえるかもしれない。しかし、サッカーはスペインにおいて、巨大なビジネスだ。とはいえ、それでも多くの虚偽情報が、ブランドや政治家、そして市民に実害を与えているという論争が広まっているわけではない。現在「エル・パイス」は、『Hechos[真相]』という名前の新たなブログ上に、フェイクニュースを激しく非難するスペースを割いている。

スペインのフェイクニュース事情

「昨年、我々はウワサに頼った情報の記事を拡散するサイトを数多く見てきた」と、「エル・パイス」のマネージングエディターを務めるデビット・アレンデット氏は語る。彼は、こうしたフェイクニュースの発信元は、名前やデザイン、レイアウトを本物のニュースサイトに似せることで、故意に紛らわしく見せているという。

「編集者として問題なのは、こうした偽りのジャーナリズムが知覚や感情、事実無根の文書に依存していて、さらにそれがスペイン国内で大きなニュースサイクルになっているということだ」と、アレンデット氏は語る。

「OKディアリオ(OK Diario)」や「PRノティシアス(PR Noticias)」といったサイトでは、メインストリームのパブリッシャーによって拡散されるような、産業界のゴシップやウワサをニュースとして特集している。こうしたサイトは数人の執筆者さえいれば機能するため、費用を低く抑えられるうえに、それ相応の力がかけられれば、ディスプレイ広告収入を稼ぐことが可能となる。2016年、PRノティシアスの編集者がとある政治家にとって不利な情報を公開すると恐喝した罪で、4カ月間拘置されている。

フェイクニュースをめぐる事情は、国によって異なる。アメリカにおけるスペイン語テレビネットワークであるユニビジョンコミュニケーション(Univision Communications)の政治記者マリア・ラミレス氏は、スペインでも政治的動機に基づいたフェイクニュースは存在する一方、2008年以降、ジャーナリズムへの投資が限られているため、その報告件数は少なかったと見ている。

根源にあるのはメディアへの不信感

「経済危機は多くの不安、市場閉鎖と大量解雇を引き起こし、民主主義の統合以来続いてきた二大政党制を打ち砕くような新しい団体が台頭しはじめている」と、アレンデット氏は語る。現在、スペインでは激戦となった2016年の選挙後に力を強めた国民党が政権を握っており、そのほかの政党(社会党、ポピュリズム党、共産党)は、中道左派で構成されている。

「これはフェイクニュースサイトが急激に広まった結果だというつもりはないが、間違いなく、プレスを含むすべてのメディア機関に対する不信感がこうした状況の根源にある」と、彼は付け加えた。

多くのパブリッシャー同様、「エル・パイス」の記者たちは報道の事実確認を行っている。また、最近ではプロダクションチーム内から事実確認の責任を負うスタッフを5人配置している。現在この作業をすべて人力で行っているが、どのようにフェイクニュースの拡散を減らすことができるかについてもFacebook、Google、Twitterと話し合っている。

Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac
Images: via Cristiano Ronaldo’s Instagram.