広告収入の44%を海外で賄う、「クオーツ」の世界戦略:ブランドを維持する3つの視点

米拠点のパブリッシャーが世界進出するとき、自社ブランドを海外のオーディエンスに合わせることは必須だ。しかし、クオーツ(Quartz)は違う。2012年のローンチ当初からビジネスシーン向けのモバイルファーストパブリケーションであり、現在では1800万人のオーディエンスのうち、47%はアメリカ国外からとなっているからだ(この数値はオンラインマーケティング会社オムニチュアによる調査のもと、クオーツが発表したもの)。

海外展開においてアメリカのパブリッシャーは、収益化をはかるより、オーディエンスを増やすほうが、容易だと気づきはじめている。その理由は、広告の売買は、それぞれのマーケットごとに行われることが多いからだ。しかも、国外のマーケターは、アメリカのパブリッシャーが推進するネイティブ型広告に適応するのに時間がかかるという問題もある。

オーディエンスの収益化

クオーツがほかと違うのは、開設当初から世界のあちこちに読者がおり、また彼らが社会的に決定権をもつ立場にあり、平均以上の収入を得ている層だったという点だ。その事実に比例してクオーツは、オーディエンスの収益化に成功し、昨年の広告収入の44%はアメリカ国外のインベントリーによるものだった。

これらの広告主はクレディ・スイス銀行(Credit Suisse)やキャセイパシフィック航空(Cathay Pacific)、シンガポール経済開発庁(Singapore Economic Development Board)のような世界的な企業やアメリカ国外の顧客を獲得しようと考えるインターナショナル企業であることが多い。

「当初から、広告主は我々をグローバルブランドとして信頼性が高い企業だと見てくれていた」というのは、クオーツのプレジデントでパブリッシャーのジェイ・ローフ氏。

クオーツは、地域にかかわらず、同社のジャーナリストとしてのトーンが常に一定で、グローバルであるよう注意している。クオーツのエディターであるケビン・ディレーニー氏はスタッフを採用する際、最低でも2言語を使いこなせる人材を求めており、クオーツ自体も現在スタッフのあいだで使われている言語が、35に上ることをひとつの誇りだと伝えている。

中央集権的な編集体制

クオーツの戦略を支えるもうひとつの柱が、他国で従来型のライセンス問題にぶつかったことがない、という点だ。米大手のハフポスト(The Huffington Post)やビジネスインサイダー(Business Insider)を含む、ほかのパブリッシャーは迅速に、また費用を抑えてライセンス契約を行う算段をしなければならない。

2014年、はじめて非英語圏のインドに参入した際、クオーツは現地のパブリッシング企業のスクロールイン(Scroll.in)と提携し、インフラの構築や販売、そしてジャーナリストの調達などの面で協力を得た。これはライセンス契約ではないが、完全にクオーツの指揮下にあるわけでもないという状態となる。クオーツのスタッフ7名が形式上はスクロールの社員となるが、クオーツ編集部の管理下にあるという体制をとった。

「クオーツというブランドはほかとはトーンの違うブランドであり、もしその指導権をほかのマーケットのプレイヤーに譲ってしまったら、我々のブランドは地に落ちてしまう危険性がある」とローフ氏。

地域に応じた柔軟な対応

2015年、アフリカに新たにローンチした際、クオーツは自社のスタッフを従来の「オウン・アンド・オペレート(所有兼管理)型」に戻し、そのうえで事務所を作らずにコストダウンを図った。スタッフはラゴスやナイロビ、またヨハネスブルクでリモートワークを行う。また、法律上の子会社があいだに入ることで、クオーツのロンドンオフィスにはスタッフが22名、また香港にも8名のジャーナリストを雇っている。現在、クオーツはスペイン語話者のオーディエンスや読者とつながる方法を探索中だが、具体的な計画段階にはないという。

カスタム広告のみを販売するクオーツにとって、マーケターがアメリカを追い上げる海外で、サイトをマネタイズすることはやはり大仕事だ。

「我々はネィティブアドで知られているし、クオーツがこれほど急速に成長した要因だ。ネイティブでテストキャンペーンを行うのは難しいかもしれないが、長期的に見れば、これが我々にとって一番良い方法だと考えている。我々は自社ブランドを骨抜きにはしたくない。そして我々が提供する広告も骨抜きになっては困るのだ」。

Lucia Moses(原文 / 訳:Conyac
Image via Thinkstock / Getty Images