米TV政治トークショー、ソーシャルから若年層を呼び込み:2年の取り組みで劇的な成果

「ミート・ザ・プレス(Meet the Press)」は、米テレビネットワークのNBCが1947年に放送を開始した、政治ニュースの長寿番組だ。何年ものあいだ、NBCでは、放映日の日曜日にだけ番組が話題になればそれで良し、というスタンスでいた。

しかし、Facebookでニュースに触れている若い世代にリーチするには、年中無休体制で、ソーシャルメディア上で番組の話題づくりをしなければならない。いまから2年前、これに気付いたNBCは、デジタルメディア版「ミート・ザ・プレス」の改革を目指し、シニアプロデューサーとしてショーナ・トーマス氏を起用した。

現職に就く前にNBCのニュースプロデューサーを数年勤めていたトーマス氏は、「当初、サイトのトラフィックは日曜に大きく伸び、その後、急激に落ち込んで、次の日曜まで回復しないという状態だった」と語る。「日曜にだけ集中し、平日はずっと特に何もしない。これからのニュースは、これではダメだと思った。『ミート・ザ・プレス』を『24-7(年中無休)』のブランドにするには、もっと努力が必要だとわかった」。

まずはFacebookに注力

トーマス氏はまず、最大のネットワークであり、もっとも多くの番組フォロワーを抱えているFacebookに注力した。

「ミート・ザ・プレス」の司会、チャック・トッド氏が視聴者からの質問に答えるFacebook Q&Aを開始、Facebookのライブ動画もたまに使用している。このQ&Aには、平均で829人のユーザーが参加しているという。毎週日曜の番組放映後には、「コンプレスド(Compressed:圧縮版)」と呼ばれる番組ハイライト動画を掲載し、平均で5万3500回の再生数を得ている。

チャック・トッド氏は、別のデジタル政治ニュースユニットも担当しており、こちらの方にも「ミート・ザ・プレス」のブランディング目的とした知名度を上げるための間口が広げられているという。

2年間の改革を行った結果

この取り組みは劇的な成果を見せている。

ここ数年、「ミート・ザ・プレス」の視聴者数は減少の一途を辿っていた(ただし、最近はもち直し、2016年5月にはCBSのニュース番組『フェイスザネーション[Face the Nation]』に迫っている)が、Facebookのフォロワー数は5月の時点で32万1297人と倍増。調査会社ソーシャルベイカー(Socialbakers)によると、ライバル番組「FOXニュースサンデー(Fox News Sunday)」のファン数20万965人を大きく引き離しているという。

「ミート・ザ・プレス」は1カ月に平均で281回の投稿を行なっており、これは2年前に比べて50倍だ。毎月のインタラクション数も大幅にアップし、2年前には1万5000以下だったインタラクションが、5月の時点で11万5000を記録している。

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Facebook投稿の月ごとのインタラクション 出典:Socialbakers

ライバルたちの動向

次の放送までの1週間、視聴者との関わりをソーシャルメディアでつなぐ日曜ニュース番組は、「ミート・ザ・プレス」だけではない。

CNNのニュース番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン(State of the Union)」 は、金曜日からソーシャルメディアで番宣をはじめ、その後、Facebook用に字幕をつけた動画クリップを流す。CNNのソーシャルメディア部長であるサマンサ・バリー氏は、「『ステート・オブ・ザ・ユニオン』は、単独のテレビイベントとは考えていない。日曜だけが本番ではないのだ」と述べている。

「FOXニュースサンデー」では、平日に視聴者からの質問を募り、番組放送中にはライブツイートを打つ。1週間を通じて、番組ホストのクリス・ウォーレス氏だけでなく、そのほかジャーナリストの活動を紹介するクリップを投稿していると、番組プロデューサーのジェシカ・ローカー氏は述べる。

ニュース表現は大きな課題

番組がソーシャルオーディエンスへのリーチに使用するプラットフォームは、FacebookとTwitterがメインになっている。各局とも、Snapchat(スナップチャット)やインスタグラムのように、遊び心のあるビジュアル色の強いプラットフォームで、硬派なニュースブランドを展開する方法をまだ確立していない。

そうしたなかでも、CNNの「ステート・オブ・ザ・ユニオン」は、「ステート・オブ・ザ・カトゥーン-イオン(State of the Cartoon-ion)」というセグメントを設けており、ホストのジェイク・タッパー氏が政治風刺漫画を描き、インスタグラムに投稿している。

また、Foxは、Vine(ヴァイン)とインスタグラムを使用してスタジオの舞台裏を紹介している。だが、Facebookのライブ動画やSnapchat(スナップチャット)には、まだ手を出していない。「ミート・ザ・プレス」はFacebookのライブ動画を試してはいるものの、テレビ版の重複にならないようにするにはどうしたらいいか、頭を悩ませているところだ。

「ニュースの仕事をデジタルやソーシャルでどう表現するかは、いまでも大きな課題だ。(ソーシャルでお決まりの)子供や子犬に頼るわけにはいかないし、かといって単なるテレビの補足としてソーシャルを捉えていないところが我々の強みだ」と、トーマス氏は語る。

若者層はニュースに無意識?

そもそも、メディア間を移動するユーザーのトラッキングは難しく、ソーシャルメディアでの取り組みが、果たして視聴者数の増加につながるのかは不明だ。ソーシャルメディアの魅力は、各局の日曜ニュース番組が獲得を狙っている若者層がいるという点だが、若いオーディエンスは積極的にニュースを探しているわけではないのだ。

また、若者層は、より年配のオーディエンスとは異なり、そもそもニュース番組の存在すら知らず、コメディ番組でニュースを知る可能性のほうが高い。2012年のピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)の調査によると、各局の日曜ニュース番組の視聴者で、18歳から29歳までの層は10%に過ぎず、一方、政治風刺コメディ番組「コルバート・レポート(Colbert Report)」では43%を占めていた。

「ミレニアル世代は、ニュースソースというものをあまり意識しておらず、(日曜の午前中という)ニッチ的な放送時間が軸になっている番組に彼らを呼び込むのは難しいかもしれない」と、ピュー・リサーチ・センターのジャーナリズム研究ディレクターであるエイミー・ミッチェル氏は述べている。

Lucia Moses(原文:訳 / 片岡直子)
Images from Meet the Press via Facebook.