英雑誌社、24時間化したデジタルラジオ事業が急拡大:「モノクル24」がマネタイズできた理由

多くの紙の出版社が、ポッドキャストで次々とダウンロード数を伸ばしている。雑誌『モノクル(Monocle)』がさらにその一歩先、24時間放送のデジタルラジオコンテンツ「モノクル24(Monocle 24)」を開始したのは2011年だった。彼らの内部データによると、いまでは2015年の倍である100万人の月間リスナー数を誇っているという。

「モノクル24」では、4つの生放送番組が毎日流れ、それに加えて40の番組がさまざまなトピックを週単位で提供。デザインに関する番組「セクションD(Section D)」、食べ物に関する「メニュー(The Menu)」、外交問題を扱う「フォーリンデスク(The Foreign Desk)」、そして旅行に関する「ボイジャー(The Voyager)」と、すべてが30分から60分の長さになっている。Webサイトからストリームすることもできるし、アプリ「モノクル24ラジオ(Monocle 24 Radio)」で聴くことも可能だ。またそれぞれの番組をiTunesやサウンドクラウド(Soundcloud)、スティッチャー(Stitcher)といった独立のポッドキャスト・プラットフォームで聴くこともできる。

モノクルのエグゼクティブ・エディターであるスティーブ・ブルームフィールド氏は「私たちの雑誌についてすでに知っている人たちが、ラジオを聴いてくれるだろうと思っていた。しかし、ラジオ番組を通じて雑誌への新しいオーディエンスを見つけることになった」と、ロンドンで開催されたプロフェッショナル・パブリッシャー協会(PPA)で語った。

高品位なオーディオコンテンツ

モノクルは2007年に創業。時事問題や文化についてのコンテンツを、ほかよりもよりグローバルかつ楽観的な視点で取り扱っていると、ブルームフィールド氏は語る。雑誌の発行部数は徐々に増加してきた。部数公査機構(ABC : Audit Bureau of Circulations)によると2015年は約8万200部であった。これは前年から0.2%増となっている。対してモノクルのWebサイトは、雑誌で出版された過去記事にアクセスする場所というよりは、オーディオコンテンツもしくは映像の倉庫となっている。

米DIGIDAYに対して、ブルームフィールド氏は「スマートで国際的、ちゃんと情報を収集しており、かつほかのラジオのように退屈じゃないラジオ番組にはきっと居場所があるのではないかと思った」と語る。モノクルらしさを保つことが課題のひとつだった。雑誌自体と類似性をもたないローファイなポッドキャストを作っても上手くいかなかっただろう。ラジオ番組は高品質でなければならなかったし、語り手も雑誌でよく知られている者である必要があった。雑誌との継続性を維持するために、雑誌のエディターたちがラジオ番組の脚本を書き、またプレゼンターとして出演した。

プロの品質をラジオで届けるというのは片手間でできることではない。独立した会社であるモノクルにとって、新しい事業はどれも自立して製作できるものでなければならない。高性能なラジオスタジオを建設し、プロデューサーやエンジニアを雇い、現存するスタッフたちにプレゼンターとしてのトレーニングを行った。現在、ラジオステーションにはエンジニア、プロデューサー、リサーチャーの20人からなるチームが働いている。

ラジオ局にも番組を提供

モノクルはまた、ABCオーストラリアとCBCカナダとのコマーシャル契約を通して、75万人の追加リスナーを獲得した。これによって両社は、毎週それぞれ6本から8本の「モノクル24」番組を放送している。従来のラジオステーションも、放送時間を埋められる高品質な番組を探しているからだ。

「モノクル24」は、広告収入で採算を取れているとしているが、ブルームフィールド氏は詳細については語らなかった。UBSやターキッシュ・エアラインズ(Turkish Airlines)、エア・カナダ(Air Canada)そしてアリアンツ(Allianz)といったブランドが番組のスポンサーとなっているが、スポンサー企業たちは編集権をもっていない。

「(ラジオが)公平であるということは、絶対にブランドの利益となる。ほとんどのポッドキャストのオーディエンスは小さいもので、大きなスケールは望めないが、その分、ターゲットを絞ることができる」と、メディアエージェンシーMECのAVプランニング責任者であるエマ・ムーアヘッド氏は語る。

大手のネイティブアドも制作

毎日正午に放送されるニュース番組「ザ・ブリーフィング(The Briefing)」は、エア・カナダのスポンサーのもと製作され、モノクルによって作られた20秒の広告からはじまる。「ラジオのテイストから大きく外れることのないように広告は私たちが作る」と、ブルームフィールド氏は説明した。

ブルームフィールド氏は、「ラジオ広告は昔はカーディーラーや車の修理屋、電気やガス会社のものだった。いまでは世界規模の大手銀行や航空会社が私達の番組のスポンサーとして、ちゃんとしたコマーシャルパートナー契約を結んでいる。これは5年前なら前代未聞のことだった」と語る。

ポッドキャスト番組の課題

それはまた、メールチンプ(MailChimp)といったインターネット会社による、ポッドキャスト番組でよくあるスポンサー契約とは大きく違っている、とデジタスLBi(DigitasLBi)のモバイル・ストラテジストであるレイフ・ブランドフォード氏は語った。メールチンプは「シリアル(Serial)」といった人気のポッドキャストのスポンサーとなっている。「多くのブランドは(メールチンプが提供しているような)直接的な取引をあまりやりたがらない。一般的にポッドキャストはマネタイズが難しい分野とされてきた。その理由には、ほかのデジタルメディアに比べると、測定基準が整っていないというのが一部にある」とブランドフォード氏。

ほかの伝統的なメディア企業よりも迅速な対応をしてきたモノクルだが、この指摘が当てはまらないわけではない。同社のリスナーの80%はダウンロードをして聴いており、生放送で聴いているのは20%となっている。ダウンロード数を計ることは簡単だが、実際にそれが聴かれているのかを計る方法はない。またプラットフォーム毎に測定基準が異なっているのも問題だ。たとえば、サウンドクラウドは聴いている時間が1分以下である短期聴取、1分以上である長期聴取を区別して測っている。

それでもモノクルは今後もデジタルオーディオ分野に投資を続けるだろう。2016年の新しい番組表には、またふたつの新番組が追加された。「人々はポッドキャストの『近さ』に面白みを見出している。従来からの読者は私たちの声を聞くことができるので、知り合いのような感覚でいる。『モノクル』読者が私たちのオーディオコンテンツを聴くことができるようになったことで、これまでよりもずっと素晴らしくなった」と、ブルームフィールドは語った。

Lucinda Southern(原文 / 訳者:塚本 紺)
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