インフルエンサーとメディア、絡みはじめた両者の関係性:それぞれの思惑とは?

デジタルマーケティング業界ではいま、複数のトレンドが同時に起こっている。

オーディエンス獲得のためのコンテンツ外部配信、マーケティングミックスに欠かせないインフルエンサー起用、そして、感覚的に多くの情報を伝えられる動画などだ。

そうした状況のなか、ブランド構築のため、インフルエンサーを起用しはじめたのは、マーケターだけではない。メディア企業もインフルエンサーを活用して、エディトリアルブランドを構築する事例が増えている。ただし、その手法や動機はさまざまだ。

メディア企業による起用例

たとえば、大学のキャンパスで設立され、ベンチャー支援を受けている新興企業のオデッセイ(Odyssey)。彼らは、特定分野のエキスパートや大物を集め、ツールを提供し、テキストコンテンツや動画コンテンツを公開したり、スポンサードコンテンツ向けに広告主と結びつけるサービスを提供している。

ガロール・メディア(Galore Media)は、キトゥン(Kitten)という名のタレントエージェンシーを所有。インフルエンサーを各種サービスに起用して、動画シリーズの製作、イベントの運営、小規模なライターチームが書いた記事の素材提供を行っている。

炭酸飲料のマウンテンデュー(Mountain Dew)とコンプレックス・メディア(Complex Media)が設立したデジタルライフスタイルブランド(オウンドメディア)の「グリーン・ラベル(Green Label)」というのもある。ソーシャルメディア動画を扱うインフルエンサーマーケティングプログラム「エピックシグナル(Epic Signal)」を活用することで、マルチチャンネルネットワークを構築し、動画のビューを増やすことだけでなく、YouTubeやそのほかの場所で、マウンテンデューをコンテンツブランドとして認知してもらうことが目的だ。

インフルエンサーを求めた理由

キトゥン、マウンテンデューやエピック・シグナルの試みはすべて、インフルエンサーマーケティングというトレンドの広がりを示す。インフルエンサーがマーケティングミックスにとって欠かせない存在となるにつれて、広告主らは彼らとの結びつきを強める方法を探るようになってきた。これは、パブリッシャーにとってもインフルエンサーに近づく動機となる。

パブリッシャーは、オーディエンスとつながるプラットフォームを新たに提供するだけでなく、クリエイティブなタレントを発掘する場所を提供。「パブリッシャーとの長期的なパートナーシップの構築が、次のフェーズだと私は考えており、一部のブランドは取り組みをはじめなければならない」と、エピック・シグナルの創設者ブレンダン・ガーハン氏は述べる。

とはいえ、このような戦略を最初から立てていたメディア企業があるわけではない。オデッセイは、大学のキャンパス周辺を対象としたローカルニュースの新興企業としてスタートした。ガロールは、16歳から28歳の女性をターゲットとしたメディア企業だった。そしてグリーン・ラベルは、コンプレックスと飲料メーカーのペプシコ(PepsiCo)が設立したライフスタイルブランドで、レコードを出したり雑誌を創刊したりしている。

「まるで同じコインの裏表だ」

だが、数年前から、インフルエンサーのもつ力(そして市場の関心)がパブリッシャーの関心を引き寄せるようになってきた。「最初の年、我々はジジ・ハディットやエミリー・ラタコウスキーと一緒に仕事をしていた」とガロールのCEO、マイク・アルバネーゼ氏は振り返る。「仕事をするなかで、彼女らに目を向けると、そのたびに彼女たちはインスタグラムのフォロワーを10万人増やしていた」。

これがきっかけとなって、ガロールは2014年にタレントエージェンシーのキトゥンを設立。アルバネーゼ氏や、クリエイティブディレクターのプリンス・ケノア氏とジェイコブ・デカット氏は、ガロールとキトゥンは互いに補完し合う取り組みだと考えるようにもなっていった。

タレントが擁する社会的な発信力がガロールを成長させる。それが、キトゥンに所属するタレントたちに、ブランドと仕事をする機会をさらにもたらし、彼らを売り出す新たなプラットフォーム作りにつながった。「(ガロールでは)編集記事が最優先で、インフルエンサー活用はその次だった。だが、いまは、このふたつはまるで同じコインの裏表だ」と、アルバネーゼ氏は語る。

メディア企業が提供できるもの

現在、ガロールとキトゥンに所属するクリエーターが抱えるオーディエンスの数は、Snapchat(スナップチャット)、インスタグラム、YouTubeなどのプラットフォームで、合わせて4000万人を達成。その素地のうえで、化粧品のロレアル(L’Oreal)、アパレルのゲス(Guess)、バッファロー・ジーンズ(Buffalo Jeans)といったブランドと、ブランデッドコンテンツの製作で提携している。

編集体制のインフラは、さらに別の方法でこの好循環を加速させることもできる。インフルエンサーマーケティングへの投資額が急増している一方で、躊躇するブランドも多い理由は、巷にいるインフルエンサーの多くがあまり洗練されていなかったり、何をしでかすかわからなかったりするためだ。

そこでオデッセイは、ほぼ1年を費やしてコンテンツ管理とワークフローのシステムを設計。テキストと動画の質向上と最適な実装を全体として実現できるようにした。同社は毎月5万件を超えるテキストコンテンツを製作しているほか、これから半年の間に、動画でもほぼ同じ数のコンテンツを製作する予定だ。

このシステムは、オデッセイに所属するインフルエンサーの認知度を上げるのにも役立っている。また、サイト訪問者にさらに多くのコンテンツを勧める機能も備えており、8月時点で、サイト上で視聴されたコンテンツの40%はシステムのレコメンドコンテンツだった。「我々はインフルエンサーに、テクノロジーと編集ツールを提供している」と、オデッセイの創設者、エバン・バーンズ氏はいう。

製作パートナーとしても期待

彼らのすべてが支援を必要としているわけではない。インフルエンサーの市場にお金が流れ込むなかで、彼らのなかにはさらに専門性を獲得している者もいる。「グリーン・ラベル」がマルチチャンネルネットワークの構築に取り組んだのは、マウンテンデューが求めるレベルのコンテンツ製作能力をもったクリエーターを見つけることができたからだ。

エピック・シグナルのマネージングディレクターを務めるハリー・ハリス氏は、「グリーン・ラベル」のマルチチャンネルネットワークに所属するタレントについて、「我々は6名以上のインフルエンサーに契約料を払っている」と語った。「彼らを配信パートナーとしてだけでなく、クリエイティブや製作パートナーとして活用できることを見極めたいと考えている」。

このような投資は実際に利益をもたらしているようだ。ハリス氏によれば、マルチチャンネルネットワークの当初の目的は、この1年で動画のビューを1億2500万回にすることだった。だが、今年の年末までに、まだ3カ月近くある段階で、その数は1億1400万回をすでに超えているという。

エディトリアルブランド(スポンサードまたはオウンドメディア)の確立にあたっては、インフルエンサーをブランド構築の取り組みにどのようにうまくフィットさせるかという点で、苦労する可能性がある。だが、ブランデッドコンテンツとインフルエンサーマーケティングが拡大するにつれて、チャンレンジする企業が現れる可能性は十分にある。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)