偽ニュース問題、自動検証で解決を目指す「ル・モンド」:将来はオープンソース化も

偽ニュースは、オンラインにはびこる害悪と化している。フランスの日刊紙「ル・モンド(Le Monde)」は、そういった虚報を一掃したいと考えた。13人体制で事実確認を担当する同紙の「デコドゥール(Les Decodeurs)」部門が、偽ニュースを大規模に根絶する方法を自動化する手段を密かに開発している。

デコドゥール部門を率いるサミュエル・ローラン氏は、偽ニュースを熟知。今年すでに、フランスにおけるテロ事件に絡んで広まった、いくつかのニュースがデマであることを暴いた。それでも、フランスでは約1000のニュースサイトとソーシャルメディアのページがせっせとデマを広めており、こうした状況が「毒気」を帯びてきていると、ローラン氏は考えている。

検証作業を自動化する計画

一流のニュース編集室であれば、どこでも事実確認は重要な業務だが、情報源は膨大にあるため、検証作業が社内のリソースに負担をかけている。それに加え、国際的なチームを抱えるパブリッシャーとなると、それぞれ異なる国の4人の記者が重複して事実確認を行ってしまう場合もあり、時間を食いつぶしている。

検証作業を自動化することができれば、プロセスを迅速化でき、ほかのWebサイトやコンテンツファーム(訪問者を増やして広告収益を得るために、品質の低いコンテンツを大量に作成および配信するサービス)が、デマを急速に広めるのを防ぐのに役立つ。少なくとも、理論的にはそうなるはずだ。

「ある程度の自動化は、間違いなく時間の節約と、事実確認に必要なリソースに大きな影響を与えるだろう。ときどきコップで水をすくって海を干上がらせようとしているような気分になる」と、ローラン氏は語る。

ローラン氏の計画は、まずデマを暴くためのデータベースを構築。このデータベースには、どのサイトがガセネタを流しているのか、どのサイトが検証済みで信頼できる情報ソースなのかといった情報を取り込む。読者は、ChromeやFirefoxの拡張機能を通じてデータベースにアクセス。拡張機能をダウンロードしたユーザーはオンラインで記事を目にすると、偽のサイトやニュースと考えられれば赤色のフラグ、信頼できないソースであれば黄色のフラグ、問題のないソースであれば緑色のフラグがそれぞれ表示される。

第1段のツールは新年に登場

ローラン氏のチームは、外部のデータサイエンティストと協力し、偽ニュースの特定を自動化する方法も探ってきた。最終製品は検索エンジンと似たものになり、関連データベースを検索し、背景情報を提供できると期待されている。なお、このプロジェクトは、Googleの次世代デジタルジャーナリズム支援計画「デジタルニュース・イニシアティブ(Digital News Initiative)」から資金提供を受けている。

「たとえば、英国の失業率について語っている政治家がいるとしよう。デコドゥールのツールは、英国における失業が話のテーマだと理解できるので、その政治家の主張に関連するデータを自動的に作成する。そこで現在は、欧州連合統計局(Eurostat)や国家が管理する統計ツールなどのソースに、このツールを連携させようと取り組んでいる」とローラン氏はいう。

第1段階のツールは、2017年1月に登場する予定。「ル・モンド」が傘下の全サイトにマーケティングメッセージを掲載し、拡張機能や、手がかりになる記事およびチュートリアルのダウンロードへと誘導して、記事をチェックしたり、いま読んでいる記事が信頼できることを確認したりする方法について情報を提供する。ローラン氏は、デマを根絶できる完全なプラットフォームを用意して、来年末までに稼働させたいと考えている。

目指すはオープンソース化

さらに、このデータベースをフランス以外の国にも広げる計画を立てている。「オープンソース化して、誰でも利用できるにするのが目標だ。『ル・モンド』のニュースサイトと他国のほかの偽ニュースをまとめたデータベースを共有して、もっと規模の大きなデータベースにしたいと思う」と、同氏は続けた。

偽ニュースを特定したり、誤った情報を広めているサイトを見分けたりする方法を若者世代に教えることは、大いに重要になるとローラン氏。「ル・モンド」が、フランス国民教育省や大学、学校と提携し、リソースとツールを準備して、本物のニュースと偽のニュースを見分ける方法を若者世代に教えようと積極的に取り組んでいるのもそのためだ。「フランスでは、そのような取り組みがすでに行われつつあるが、望ましい規模になっていない」と、ローラン氏は指摘した。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)