BuzzFeed流、国ごとに異なる「ウケるコンテンツ」の作り方:英は自虐、仏はグルメ、西はLGBT

多くのパブリッシャーでは、国際化による事業拡張を戦略に取り入れている。しかし、言語や文化が異なる複数の国でのブランド展開は簡単な話ではない。英国でウケるものがスペインでもウケるとは限らないのである。BuzzFeedは、各国の文化コードを攻略中だ。

BuzzFeedの英国における事業は、2013年の設立から爆発的に成長し、いまでは100人の編集スタッフと50人の営業スタッフを抱えている。同社はさらにドイツ(2014年)、フランス(2013年)、スペイン(2015年)と進出。このなかでは、パリのスタッフが編集スタッフ12人と一番多く、次いでベルリンの10人、マドリッドが4人となっている。営業関連は、現在のところすべて英国が窓口になっている。

しかし、英米でヒットするものが、欧州の大陸側でも同じようにヒットするとは限らない。ユーモアのセンスひとつを取っても、地域によって大きな違いがある。BuzzFeedは、スペインなどの市場では、LGBT(性的マイノリティ)やジェンダー関連のトピックなど、特定のエリアをターゲットにして参入に成功した。取材チームがもっとも安定しているのはフランスで、社会正義、性暴力、性差別といったテーマで、現地読者層への食い込みに成功している。

BuzzFeedはトラフィック関連の数字を公開していないが、インターネット調査のコムスコア(comScore)によると、各国のユニークユーザーのトラフィックは毎月、英国では1200万、フランスで230万、ドイツで320万、スペインで220万となっているという。

BuzzFeedの欧州拡大を指揮するルーク・ルイス氏が、これまでの経験について米DIGIDAYに語った。

共感を呼ぶコンテンツを見極める

英国進出当初から、BuzzFeedはイギリス人が大好きな自虐ユーモアを題材に大きな成功を収めてきた。「初期段階で一番人気のあった記事は、英国人気質をネタにしたものだった」とルイス氏。「しかし、これはドイツでは受けない。ドイツ人はドイツ人気質についての記事をあまりシェアしない傾向にある」。

これはフランスでも同じだという。BuzzFeedは、フランス人の心は胃袋で掴むのが正解だと学んだ。「テイスティ(Tasty)」がその火付け役だ。

テイスティは、Facebook、YouTube、そして Pinterest(ピンタレスト)で配信されるBuzzFeedのフード動画チャンネル。フランス語版の「テイスティ・ミアム(Tasty Miam)」はフランスで100万のフォロワーを抱え、特に有名になった動画として、1500万回閲覧された「エメンタールチーズのカリカリパン」がある。

 

Facebookで900万回の閲覧があった「チョコレート・フォンデュ・プディング」もフランスで大ヒットした動画のひとつだ。「テイスティ・ミアムは、フランスにおいて英国とは異なる国民的プライドにつながっている。フランス人は食文化をたいへん誇りにしている」とルイス氏。また、国民性に対する自虐ネタもフランスではあまり受けないという。一方で、「皮肉なトーンのコンテンツがウケるのもフランスに特有な現象」とルイス氏は付け加える。テイスティは現在、米国、英国、スペイン、メキシコ、ブラジル、日本にページをもっている。

翻訳記事と独自記事のバランス

「さじ加減をひとつ間違えると、すぐにひんしゅくを買ってしまうので要注意だ。中央集権的にして、ロサンゼルスで作ったものを各国語に訳せばそれでいいというわけにはいかない。その国の人々のツボをついたコンテンツが必要だ。細かいが、この点はすごく重要」とルイス氏。国ごとのオリジナルコンテンツと、翻訳コンテンツの割合はフィフティ・フィフティを目指しているという。

エージェンシーレベルでも、見解を同じくしている。ベルリンを拠点とするエージェンシー、ユング・フォン・マット(Jung Von Matt)のソーシャルメディア担当であるヨゼフ・ブルトニ氏は、テイスティは同僚たちにも人気があるという。「米国発の動画は人気がある。しかし、ドイツ独自のコンテンツも望まれているのは確かだ」。

バイラルヒットを超える進化

英国でのBuzzFeedは、バイラルなネコ動画やリスティクル(「◯◯すべき10の理由」など、箇条書きからなる記事)を超えた多様性に対応、ガーディアンの元編集者であるジャニーン・ギブソン氏やスチュアート・ミラー氏など、名だたるジャーナリストを迎えて調査報道記事の充実を図り、何度かヒット記事を出している。BuzzFeedが行った最新の大掛かりな調査報道としては、英国で解散したLGBT支援団体の不正を告発した記事が挙げられる。

ドイツのBuzzFeedは、リスティクル記事のイメージからまだ脱却していない。つまり、まだ懐疑的な印象をもたれている、とブルトニ氏はいう。「ドイツでは文化的な違いが大きい。ドイツ人は、BuzzFeedのようなサイトで軽い話題を娯楽として流し読みするよりも、オンラインコンテンツには学びを求める傾向にある」。

ピュブリシス系エージェンシー、ニューキャスト・ベルリン(Newcast Berlin)のコンテンツマーケティング担当ディレクターであるダニエル・ホルゼツキ氏は、BuzzFeedはローンチ時にソーシャル分散戦略で多くの媒体社にインスピレーションを与えた、と語る。しかし、これは良いことばかりではなく、模倣サイトが次々に立ち上がり、たとえばHeftig.deでは毎月350万のユニークビジターを得ている。

軽いノリが敬遠されることも

同氏はまた、BuzzFeed熱はいくぶん冷めた感があり、広告主はBuzzFeedのようなサイトとの提携より、媒体社との関係を深めたり、独自のブランデッドコンテンツ戦略を進めていく傾向にある、と述べている。

「BuzzFeedは、面白おかしい内容でトラフィックを生成するには良い媒体だ。しかし、たとえばGMなどのブランドは、パブリッシャーとのより深い結びつきを望んでおり、BuzzFeedへの出稿は最適とはいえない」。

しかし、BuzzFeedのコンテンツ編集がツボにはまったブランドもある。酒造メーカーのディアジオ(Diageo)や金融グループのバークレイズ(Barclays)は、欧州の全拠点でBuzzFeedとネイティブアドで提携している。

普遍的な共感を呼ぶコンテンツ

もちろん、元記事がどの国で書かれていても、国際的に受けるテーマもある。ルイス氏によれば、たとえば「性差別、LGBTの権利、『ゲーム・オブ・スローンズ』など。そしてもちろん、人間の身体に関する話題は人気がある。ボディイメージ、性関連、誰でも身に覚えのある悪い癖、こうしたトピックは、例外なくどこでもよく読まれる」。

ほかには、スタンフォード大レイプ事件被害者の女性が、加害者のブロック・アレン・ターナーに書いた手紙を掲載した記事は、フランス語、ドイツ語、スペイン語に訳され、すべての言語で幅広く読まれた。「被害者の手紙は、克明な記述と深く読み手の感情に訴えかける文章で多くの共感を呼び、国境を越え各地で性犯罪に関する議論を呼び起こした」と、ルイス氏は述べている。

Jessica Davies(原文 / 訳:片岡直子)