「紙媒体」を再発見、高級路線のデジタルパブリッシャー:新雑誌創刊が相次ぐ

紙媒体は衰退期にあるのかもしれないが、紙媒体への注力を強めている高級路線のパブリッシャーも存在する。そのなかには、デジタルネイティブのパブリッシャーさえ含まれる。

9月、高級腕時計専門サイト「ホディンキー(Hodinkee)」が年2回刊行の雑誌を創刊し、女性向けライフスタイルサイト「グープ(Goop)」も初の印刷版を売り出した。高級路線パブリッシャーの大手「モノクル(Monocle)」は、雑誌からラジオ、eコマースへと業態を拡大してきたが、今度は夏季限定の週刊新聞を開始した。

3つの媒体はいずれも、少数の裕福なオーディエンスを狙ったニッチなプロダクトだが、紙媒体がいまも高級路線のパブリッシャーに安定と好機をもたらすことを証明してもいる。デジタル広告市場の見通しが悪化するなか、とりわけ価値の高い媒体なのだ。

「我々は、GoogleやFacebookにはデジタル広告の売上で張り合えないし、そうしたいとも思わない」と、モノクル編集者のアンドリュー・タック氏は語る。「いま広まりつつある認識は、Google、Facebook、インスタグラムといった大手がフェアな勝負をしていないというもの。そうした関係が続く限り、パブリッシャーはこの問題をもっと考える必要がある」。

生きながらえる紙媒体

紙媒体の広告が衰退期にあるのは明白だ。米国の新聞広告の売上は、2016年に12%減少して120億ドル(約1.3兆円)になった。米国の雑誌広告の売上も同様で、9%減の85億ドル(約9500億円)。10年前、新聞広告は430億ドル(約4.8兆円)、雑誌広告は190億ドル(約2.1兆円)の市場だった(マグナ・グローバル[Magna Global]の調査より)。

しかし、広告費は市場から均等に流れ出ているわけではない。一部のブランドはマーケティング予算のデジタルへの配分を増やし続けているが、高級ブランドは依然として、広告予算からかなりの割合を確保し、雑誌のページに出稿している。

「高級路線の広告主が紙媒体を見限ることはない」と、メディアエージェンシーのアセンブリー(Assembly)で印刷物投資部門を率いるダマリ・キャンベル氏は語る。

ノウハウ共有という方法

だが、紙とデジタルのパブリッシングはまったくの別物であり、執筆からディストリビューションまで、すべての局面で異なる才能が求められる。たいていの場合、こうした仕事は外注される。たとえばグープは、アートディレクション、広告販売、流通をコンデナスト(Cond Nast)に委託している。記事の多くはフリーランスの寄稿者が執筆したものだ。

「我々のサイトでは、従来型のレポート記事はあまり扱わない」と、グープで最高コンテンツ責任者を務めるエリース・ローネン氏は語る。「むしろ、一問一答形式のインタビューの全文書き起こしなどを優先する」。

とはいえ、雑誌の販売に関しては、パブリッシャーの実績から活用できることが多々ある。ホディンキー、モノクル、グープはいずれも紙媒体の販売パートナーと提携を結んでいるが、3社はみな相当規模のeコマース事業を抱え、ターゲットとすべき良質な消費者基盤を最初から確保している。その一例として、ホディンキーは創刊号を売り出した際、自社サイト上で48時間以内に発行部数の20%を販売した。

再現可能な優れたモデル

3社はまた、これまでに築き上げたブランドとの関係を利用して、広告枠を販売することができた。モノクルとホディンキーは、ブランドの関心を引くために限定的な好条件を提示。たとえば、モノクルの新聞に出稿した広告主はそれぞれ、カテゴリーを独占できた。ホディンキーの雑誌創刊号(160Pの秋号)では、広告主は7社に限られ、それぞれが見開きで出稿できた。

パブリッシャー3社は紙媒体の新顔だが、それぞれの高級雑誌は信頼を勝ち取った。「こうしたプロダクトの広告需要は、実際にきわめて高かった」と、コンデナストのデジタル責任者、マット・スターカー氏は明かす。さらに同氏は、将来こうしたサービスをサードパーティーのデジタルパブリッシャーに提供する可能性を示唆した。「これは間違いなく、我々が再現できる優れたモデルだ」。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)