米ハースト、独自「アフィリエイト」サイトを運用開始:編集者の知見でオススメを紹介

メディアがeコマース(電子商取引)を展開する事例が増えている。

消費財やファッションなどを扱う媒体には、重要な消費者情報が蓄積されているだけでなく、最新トレンドへの知見もあるので、とても有利な戦略だといえるだろう。そのようなメディアとeコマースの「融合」を「ネイティブコマース」と呼ぶ向きもある。デジタル時代に収益性の低下に悩むメディアにとって、それは重要な実験のひとつだ。 

「コスモポリタン」を発行する米大手出版ハーストマガジンズ(日本支社:ハースト婦人画報社)は、オンライン限定のショッピングサイト「ベストプロダクトコム(BestProducts.com)」を2015年10月下旬にローンチした。エグゼクティブディレクターのパトリック・バローン氏を筆頭に、15人の専属スタッフで運営するという。同社にとってデジタル発のメディアは珍しい。

「ここ数年をかけて、我々は組織を改変し、編集方法を変えた。結果は信じられないほど好調だというのが私の感触だ」と、同社のデジタルメディア担当取締役を務めるトロイ・ヤング氏。「我々は強力な新しいプラットフォームを手に入れた。この強みを活かしたい」。

全社統合のCMSをコマースに活用

そのプラットフォームとは、ハーストが2015年春に導入したコンテンツマネジメントシステム(CMS)のことだ。「コスモポリタン」や「エル」「エスクァイア」を含む、21媒体と各国支部を包括する中央集権的なCMSになるという。

編集者はこれを通じ、Webサイトでどんな記事がトレンドにあるかを知り、相互に編集コンテンツを共有することが可能だ。そうすることで、迅速にオーディエンスを拡大できると期待されている。一方、ハーストでは、同システムを実験に使うことを検討しており、その最初の事例が「ベストプロダクトコム」なのだ。

「信じられない速さで自社の『資産』をやりくりできる場がいま、我々のなかにできた」とヤング氏は語る。「考案から起ち上げまで6週間かかった」。

あくまで買物情報を読者に提供

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「ベストプロダクトコム」はメディア企業ハーストによるeコマースへの挑戦だ。だが、同社にはAmazonと競争する意図はない。何かを買いたがっているが、情報の海のなかで取捨選択に疲弊したくない買い物客の助けになりたいとしている。

サイトの編集者はフードやガジェット、ファッション、ホームなどの9ジャンルから商品を見定め、閲覧者に推奨する。その際の目安となるのは、消費者がオンラインでどんな風に語っているかというトレンドだ。

また、閲覧者はニュースフィード形式でいくつものヘッドラインを一覧できる。「いますぐ買えるスマートウォッチベスト10」「皆さんのお子さんがいま必要としているスター・ウォーズのおもちゃベスト10」などだ。

収入源はアフィリエイトがメイン

個々の記事では、商品紹介とともにアフィリエイトリンクを掲載している。閲覧者がそのリンクをクリックしたら外部へ飛び、そこで購入したら、「ベストプロダクトコム」に少額ながら売上の一部が分配されるものだ。

ちなみに、サイトに読者のコメントが表示されるのは厄介だ。否定的な内容なら、広告主が逃げてしまうからだ。だが、「ベストプロダクトコム」は広告表示を主な収入源にしていないので、事業へのインパクトを心配せずにコメントを掲載できる。

あえて新ブランドで勝負

手法として、既存の媒体にeコマースのレイヤーを設けることも考えられるだろう。実際、タイム社は2015年10月第3週に、ゴシップ誌「ピープル」のWebサイトでそれを実施した。

だが、「ベストプロダクトコム」は別だ。「エル」や「グッドハウスキーピング」のような既存のサイトから独立している。このため、特定の編集上の視点という足かせがない。雑然とした環境のなかで生き残りたいのなら、パブリッシャーは明確な視点をもつ必要があるという、ヤング氏の考えを反映させている。だが、最終的にはeコマースで学んだことを、ほかの媒体に応用することがヤング氏の望みだ。

「過去の遺産」が脅かされている以上、トラディショナルメディアは新しい商品を開発するのは賢明だと、ソーシャルメディア関連のサービスを扱う「レベルマウス(RebelMouse)」のポール・ベリーCEOは語る。一方で、パブリッシャーがあまりにも多額の金をテクノロジーにつぎ込むことは、判断ミスにあたると警告する。テック投資が高くつき、メディアを衰退させるからだ。「発行誌群に対する認知を変えさせるより、新ブランドを始める方が簡単だ」。

Lucia Moses(原文 / 訳:南如水)
Photo by Thinkstock / Getty Images