これから「ヘッダー入札」の話をしよう:メディア収益化の新星か

パブリッシャー(媒体社)のプログラマティック広告の収益化方法としてヘッダー入札(ヘッダー・ビディング)が注目されている。米国では2015年に媒体社の採用が相次いでおり、利点と課題をめぐる議論が続いている。日本でも数社のベンダー、代理店がサービスを開始している。米SSP大手ルビコンプロジェクト、日本カントリーマネージャー池田智幸氏はヘッダー入札について「在庫取引に競争を加えられる、媒体社の収益化を最大化する方法」と語った。

ウォーターフォールの「解決策」

ヘッダー入札は「ウォーターフォール」の代替策として浮上した。ウォーターフォールとは、パブリッシャーが在庫を優先順位を付けて振り分けていく広告販売手法のことだ。媒体社はまず優先する純広告用の広告在庫を確保する。その後、それぞれのSSP/エクスチェンジが支払える広告単価(CPM)を算定し、ランク付けし、在庫を振り分ける。最初のエクスチェンジには、高価格/低数量で在庫をリリースし、次のエクスチェンジ以降は滝(ウォーターフォール)のように少しずつ価格を落とし、数量を増やして入札を繰り返す。媒体社にとっては「純広告で売れなかった在庫」を、できるだけ高価格で売り、広告収益の最大化を目指す手法だった。

しかし、ウォーターフォールは必ずしもパブリッシャーの収益を最大化しない、と池田氏は指摘している。パブリッシャーは過去の平均価格や買い付け量から、優先順位を決めているが、ランクの高い、純広告を購入するバイヤーが必ずしも最高価格を提示しているとは限らない。

一部のバイヤーは、セラー(売り手)である媒体社のウォータフォール設定を知っているため、ウォーターフォールの上層部分をスキップし、下層部分から在庫を購入することを目指す。この戦術は価格の下押し要因になり得る。

Googleファクターへの対処

また、媒体社の広告在庫取引ではGoogleが大きなファクターになる。多くのパブリッシャーはDoubleClick for Publishers(DFP)に依存しており、その在庫が取引されるDoubleClick Ad Exchange(AdX)では媒体社が設定したフロアプライス(最低落札額)付近に落札が集中しがちだという。AdXは価格調整権に関して「特権的」と言われる。

ルビコンプロジェクトは3月初旬、ヘッダー入札「ファストレーン(FastLane)」の日本での提供を開始し、天気予報専門サイト「tenki.jp」に実装されたと発表した。ヘッダー入札では、媒体のページのヘッダー部分に専用のタグを埋め込むことで、アドサーバーを読み込む前に高い価格での取引を目指すことができるとしている。200ミリ〜300ミリ秒の間に価格情報をアドサーバーに返信するという。

池田氏と同社パブリッシャーデベロップメントマネージャーの内田秀雄氏はヘッダー入札の利点をこう述べた。

・純広告と自動取引の在庫の価格を競争させられる
・GoogleのDoubleClickなどに価格上昇圧力をかけられる
・パスバックを避けられる

純広告と自動取引の在庫の双方をヘッダー入札にかけることで、競争環境のもとでの取引価格を実現できる可能性がある。

AdXに価格上昇圧力を与える

また、AdXには、他のエクスチェンジ、純広告よりも高い価格がAdXを通じて提示されれば(つまり最高額)、アドサーバーはその入札を優先するという仕組みがあるという(参考:米DIGIDAY、John McDermott記者)。ヘッダー入札が高い価格を引き出した場合、これらの仕組みが働き、在庫価格に上昇圧力が生まれる、と内田氏は説明した。米媒体社にはDFPとルビコンを併用しているケースが多いという。「必ずしもルビコンプロジェクトを介して在庫を売却してもらわなくてもいい。媒体社が広告収益を最大化してもらえばいい」と池田智幸氏は語っている。

媒体社待望の収益化オプション?

フロアプライス以上で販売されなかった場合、次に設定された広告配信サービスに自動的に振り替えられる「パスバック」が数珠つなぎになると、価格が落ち込んだり、遅延が生じたりという弊害が出るが、ヘッダー入札はこれもクリアしてくれるという。

ルビコンプロジェクトはファストレーンが3月末にモバイルウェブ高速化プロジェクト「AMP(アンプ:Accelerated Mobile Page)」に対応したと発表。デスクトップだけでなく、モバイルそしてアプリ内の広告在庫の売買にも対応している。

ただし、ヘッダー入札には、ヘッダー部分にJavascriptを置くことで読込時間が長引くことやデータ漏洩の懸念が指摘されている。またベンダーごとに定義が異なる。パブリッシャーにとって有力なディスプレイ広告収益拡大のオプションだが、注意深い対応も必要だろう。

Written by 吉田拓史
Photo by MarineCorps NewYork