FT、リオ五輪で「VRコンテンツ」デビュー

英経済メディア「フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times:FT)」も、ついにバーチャルリアリティ(VR)のコンテンツ競争へ参戦してきた。最初のテーマとして選んだのは、オリンピック開催中の都市、リオデジャネイロだ。

オリンピック開催国はどこも一緒だが、ブラジルのリオデジャネイロはこの数カ月、メディアによる熾烈な監視下にある。たとえば、インデペンデント紙で掲載された記事「リオ2016:アスリートに警告、排泄物汚染水で泳ぐ際には口を開けるべからず」のように、その不安定な経済インフラを暴く悪意の見出しが並んだ。

だが、FTの4分間にわたるVRフィルムはリオの貧困街の社会や自然の景観をさらに掘り下げた内容となっており、首都のポジティブな面とネガティブな面をバランスよく描き出している。

オリンピック開会式と同日の8月5日に、同社専用サイトやYouTubeでローンチされた同フィルム。「FTウィークエンド」がGoogleとコラボレーションした「ヒドゥン・シティーズ(隠れた街)」というシリーズ企画の第3弾におけるコンテンツの一部となる。FT全体だけでなく、このシリーズでもVRコンテンツを取り上げるのは、はじめての試みだ。

VRコンテンツの現実

「ヒドゥン・シティーズ」シリーズは、特定の大都市の知られざる部分に、スポットライトを当てる特集企画で、これまでにロンドンブリュッセルを取り上げてきた。Googleがインタラクティブな地図体験を提供し、それにFTのジャーナリストやローカルカルチャーの専門家による、おススメ情報が満載してある。また、そのコンテンツ内容は専用のマイクロサイト内掲載してあるため、FTのペイウォールに阻まれることはなく、すべて無料で閲覧可能だ。

パブリッシャーがVRのディストリビューションをスケールするには、VRヘッドセットメーカーの協力なしでは、ほぼ不可能だろう。ニューヨークタイムズをはじめ、ほかのパブリッシャーは新規のVRプロジェクト向けにGoogleと提携して段ボール製ヘッドセットを配布しているが、FTも同じ道をたどっている。現在、「ヒドゥン・シティーズ」のパートナーであるGoogleと共同で、FT読者に段ボール製ヘッドセットを3万5000セット提供する予定だ。そのうち9000セットはロンドンの上級定期購読者に、残りは国内各地にある複数の小売店で無料配布される。

VRはすべてのパブリッシャーにとって新たな領域で、また金のかかるビジネスでもあり、専門チームを持つ企業はそう多くない。FTも例外ではなく、ブラジルの小さな支局で在留しているスタッフは2人。そのうち1人は、動画のナレーションを担当した、ブラジル特派員のサマンサ・ピアーソン氏だ。さらに、同社のVR制作パートナー企業であるビジュアライズ(Visualise)からフィルム制作援助のため、5人が派遣された。

何をもって成功とするか?

「FTウィークエンド」の副編集長を務めるナタリー・ホイットル氏は、同プロジェクトが没入型ジャーナリズムを制作するうえで、「目の覚めるような驚くべき体験」となったと話す。FTの調査員はみなiPhoneでの動画撮影については基礎訓練を受けており、迅速に対応させることも可能だが、VRが求めるものはさらに厳しい。「これは本当にいままでにない試験的領域であり、最後に成功させるのはむずかしい」と、彼女は語る。「ディテールへ注意を払うことが非常に重要であり、プロの仕事に見せるには多くの機材とサイト上での準備が必要だ」。

とはいえ、「FTウィークエンド」の「ヒドゥン・シティーズ」シリーズでは、すでに4つ目の都市をフィーチャーし、「ヒドゥン・シティーズ」を強化するVRプロジェクトの第2弾を11月にリリースする計画をもっている。しかし、ホイットル氏は比較対象となるVRプロジェクトの前例がないことから、何をもって成功とするかを測るのは難しいと語った。しかし、現段階の目的は、定期購読推進プランの一部というより、FTがVRの運用について研究中であることを周知することだ。

「我々はエンゲージメントを見ていく」と、ホイットル氏は語る。「我々はユーザーにフィルムを最後まで見てほしいと考えおり、トラックするのは彼らのリテンションだ。フィルムがユーザーをひきつけて、サイト上の別コンテンツ探索へと誘導できるのか? つまり、深部へのスクロール、そしてそのような分析論に興味を持っているのだ」。

Jessica Davies(原文 / 訳:Conyac