仏紙、「インスタント記事」でモバイル収益の半分を稼ぐ

Facebookのインスタント記事でマネタイズに苦戦するパブリッシャーが多いなか、フランスの高級日刊紙「リベラシオン(Libération)」は、相変わらずインスタント記事がお気に入りだ。リベラシオンによると、自社のモバイルページよりも、インスタント記事経由でFacebookによって販売された広告のほうが収益が高いという。

リベラシオンは2016年1月以降、日刊紙の記事150本すべてを、Facebookの読み込みが速いモバイルページ機能に合わせたフォーマットに変換してきた。CPMには変動があるが、平均してインスタント記事上の広告のCPMは、6月に3.56ドル(約360円)、7~8月の夏場は2.85ドル(約290円)に低下し、9月にはまた3.19ドル(約320円)まで上昇したという。

モバイル収益の55%

リベラシオンによれば、インスタント記事による収益は、自社モバイルページによる売り上げの3倍近くになるという。自社のモバイルページでは、広告の96%はプログラマティック取引で販売され、CPMは約36セント(約36円)だったという。ダイレクト広告になると、CPMは6ドル(約670円)に上昇するが、リベラシオンのモバイルページにダイレクト広告はほとんどないため、インスタント記事の収益がトップになっている。

リベラシオンのデジタル部門責任者グザビエ・グランジェ氏は、「Facebookは他社よりも広告のことを理解している。データを保有しているので、プラットフォームでのターゲティングに優れている」と語る。

グランジェ氏によると、インスタント記事による売り上げは5桁の金額で、モバイルでの収益の55%を占めているという(デスクトップでの収益がまだ大半を占める)。インスタント記事による売り上げは決して高いわけではないが、「モバイルのページビューに占めるインスタント記事の割合がわずか10%であることを踏まえれば、金額以上の意味がある」と、グランジェ氏は語る。

インスタント記事のCPMが高いことについては、パブリッシャーの読者数や季節、比較的少ないページビューなど、多くの要因が影響している。グランジェ氏によると、インスタント記事のフィルレートは94%以上、リベラシオンの自社モバイルサイトでは約98%だという。平均滞在時間は、自社モバイルサイトが2.17分であるのに対して、インスタント記事では3.24分だ、と同氏は付け加えた。

インスタント記事の現状

しかし、ダイレクトセールを通じて、リベラシオンよりも自社のモバイルページを効果的にマネタイズしているほかのパブリッシャーからすると、インスタント記事を利用する理由はそれほどない。ユーザー体験は優れているものの、データとアナリティクスのほとんどをFacebookが掌握しているため、大手パブリッシャーは手を引いているFacebookのリーチの低下はインスタント記事と関連があると指摘するパブリッシャーもいるが、トラフィックの減少のせいにするのは難しく、Facebookがインスタント記事を優先しているという明白な証拠はない。

フランスの他紙に目を向けると、日刊タブロイド紙の「ル・パリジャン」(Le Parisien)は、インスタント記事のマネタイズが不十分だと酷評している。また、夕刊紙の「ル・モンド」(Le Monde)と日刊紙の「ル・フィガロ」(Le Figaro)は、この機能を避けることに決めた。

Facebookはインスタント記事に関して、よりパブリッシャーに対してマネタイズの方法やデータを提供しようと努力している。6月にはさらに多くの広告ユニットを投入し、その初期テストでは、パブリッシャーの売り上げが徐々に増加していると、Facebookは報告している。

ほかのパブリッシャーでも、インスタント記事の売り上げが増加しているのはたしかだ(ただし、もともとの売り上げが少ない)。Facebookは2017年はじめから、インスタント記事におけるFacebookオーディエンスネットワーク(Audience Network)の1000インプレッション当たりの売り上げは50%以上増加していると述べている。また、ニュースレターの登録やアプリのインストールを促すCTA(コール・トゥ・アクション)ユニットなど、よりパブリッシャーにとって魅力のあるツールも導入している。

メルマガ登録者も増加

リベラシオンは2月から、インスタント記事を通じてニュースレターの購読を促している。現在、朝のニュースには月2000人の新規購読者がサインアップし、累計の購読者数は約20万人になっている。自社サイトでは1カ月に約500人がサインアップしているが、サイトではメールへのサインアップオプションが少ない、とグランジェ氏は指摘する。

インスタント記事によるメールでのサインアップは、「バウワー・エクセル・メディア(Bauer Xcel Media)」ではうまく機能している。同社では、ニュースレターのメール配信に登録する割合は、インスタント記事のユーザーのほうが自社サイトの訪問者と比べて50倍にもなる。これは、Facebookではメールアドレスが自動入力されるため、入力の手間が省けるのも一因だ。

グランジェ氏によると、リベラシオンは1万1000人のデジタル購読者を抱え、売り上げの半分をサブスクリプションから得ているという。「我々にとって、インスタント記事は優れものだ。問題は、我々はサブスクリプションを促進してはいないということだ。いまのところは、売り上げやビジビリティ(可視性)のほうを重視している。しかし今後、サブスクリプションにもっと焦点を当てるよう変化する可能性はある」。

Facebookは現在、パブリッシャーのインスタント記事上で購読者がサインアップできるようにしている。グランジェ氏によれば、リベラシオンはこの機能を利用することに関心を抱いているという。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)