コメント投稿者はエンゲージメント率が7倍に?:FTの分析

コメント投稿者は、不当な非難を受けている。よくても「荒らし」、ひどい場合は匿名を傘に、善意の著者に対してヘイトスピーチ(憎悪表現)を投げつけると思われているのだ。

しかし、フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times:FT)は、コメント投稿者に対して異なる印象をもっている。というのもFTは、数カ月に渡って、同社サイトにコメントを投稿するユーザーの行動分析を行った。その結果、コメントを残したユーザーは、コメントを残さないユーザーよりも同紙の記事を多く読み、サイト上でより多くの時間を費やし、より頻繁にFTに再訪することを発見したという。

エンゲージメント率が7倍

FTが正確な数字を公表することはないだろう。だが、コメントを投稿するユーザーは、しないユーザーに比べ、エンゲージメント率が7倍も高いと、同紙は述べている。

「これはニワトリが先か、タマゴが先かというような話だ」。こう認めるのは、サイト上でさらに活発なコメントスレッドを奨励し、議論に参加してくれる新規読者の獲得をめざすコミュニティマネージャーのライラ・ラプトポウロス氏だ。

FTに登録している人だけがコメントを残すことができるが、コメントを残すために身元を明らかにする必要はない。また、単に試し読みのために登録したのか、本格的に定期購読をしているのか(FTは64万7000人のデジタル版定期購読者をもつ)も問われない。最終的に、FTはサブスクリプションの登録数を勢いづけたいのだが、これにうまく合致する読者への働きかけの方法を考え出すことは難しいと、ラプトポウロス氏はいう。

オランダにおける事例

FTは2017年、「ユーロポプリスト(The Europopulists)」というシリーズに着手。オランダ、フランス、ドイツなど、選挙を控えている国々の政治的極右グループの台頭を追跡している。この12カ月間に、オランダのデジタルサブスクリプションの加入数は14%増加(全体の定期購読者数は8%増加)した。オランダの読者の関心の高さがわかる。

FTは、3月に選挙が行われたオランダで、政治的な展望について一連の記事を提供し続けてきた。また、オランダの日刊紙、アルゲメン・ダグブラッド(Algemeen Dagblad)と提携し、オランダの読者から政治的見解がどのように変化したかに関する反応を得ている。FTは200の回答を受け、もっとも洞察力のある内容を公開。この記事には90件のコメントがあった。

「それは堅調な数値だ」と、ラプトポウロス氏は述べた。ただし、最大のコメントを引き出すオピニオン記事に関しては、バラつきが大きいため同氏は、FT.com全体の平均コメント数を明らかにすることは控えた。「コメントの質は、よく考えられたものだった。コメントの質は量と同様に重要であり、投稿者の多くは、記事が政治的なニュアンスを反映していると肯定的にコメントしていた」。

読むだけのユーザーも重要

10月以降、FTはユーザー作成コンテンツをいろいろと試すために、最大のプロジェクトに着手している。「イギリスの未来(The Future of Britain)」プロジェクトには、ペイウォールの外側にいる読者(非登録者)に、ブレクジット(EU離脱)後の英国経済、移民問題、EU加盟国と英国の関係、EUの将来に関する4つの主要議論の1つに答えて、600語で自身のオピニオン記事を書くように依頼した。

こちらは、800件の応募があり、FTの編集者とブレグジット専門家が6本の優れた記事を選んで発表している。このプロジェクトにおいて、1記事あたりの平均コメント数は、通常のFT.comの記事の18倍、そして、サイトでもっとも活発なコメントスレッドを引き出しているブレグジットのほかのオピニオン記事よりも80%も多くなっている。

FTによれば、活発にコメントを残すユーザーは、1週間に複数のコメントを投稿するという。だが、他所でも同様だが、熱心にコメントをする人は限られている。FTがさらに驚いたのは、非コメント投稿者ではあるものの投稿されたコメントを読むユーザーの数だ。ラプトポウロス氏によると、コメントに目を通すユーザーは、コメントを読まないユーザーに比べ、6倍も高いエンゲージメント率を示している。

コメント欄運営のポイント

ジ・インフォメーション(The Information)コレスポンデント(Der Correspondent)など、デジタルに重点を置くパブリッシャーはコメント投稿者に見返りを与え、場合によってはプロフィールを紹介するページやコメント履歴を提供することもある。FTはサイト上のほかの場所に、もっとも優れたコメントをハイライトする方法として、そのコンテンツをメインページや中央に配置するなどして取り組んでいる。

FTは、これまでの経験から、実りある議論に結びつきそうにない、ロシアの政治、気候変動、イスラム過激派などの話題についての記事にはコメントができないようにしている。ただし、デフォルト設定では、コメント機能はオンになっている。場合によっては、特にジャーナリストが関与しているときには、たとえば、クラフト(Kraft)とユニリーバ(Unilever)の契約合意失敗に関するこの記事のように、コメント欄はその記事が伝えなかったストーリーの側面に言及する場となる。

「彼らは付加価値とインサイト、そして個人的な経験を加えてくれる」と、ラプトポウロス氏はいう。「市民社会においては、異なる視点にさらされることが重要だ。我々が耳にしたいことが、さらに提示されるときにはソーシャルメディアに事例がある。つまり、モデレーターにより管理されているコメント欄は、各人の意見が異なる議論に、人々が積極的に貢献できるひとつの場所となっているのだ」。

Lucinda Southern 原文 / 訳:Conyac
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