ポッドキャストのDL数が年間4500万回を超えた FTの考え方

現在、多くのパブリッシャーにとって、ポッドキャストがトレンドとなっているが、英経済メディア「フィナンシャル・タイムズ(以下FT)」にとっては、いまさらの話だ。

FTはこれまでの10年間、ずっとポッドキャストの制作を続けてきた。2015年には、12本のレギュラー番組によって4500万ダウンロードを達成している。ここまで成長できたのは、幅広くさまざまなプラットフォームでポッドキャストを制作してきたからだ。事実、かつては自社サイトとiTunesに頼りっきりだったが、最近ではスティッチャー(Stitcher)やサウンドクラウド(Soundcloud)などのプラットフォームでもポッドキャストを展開している。

「エコシステムはポッドキャストを中心に成長している」と、FTにて広告開発、動画と音声部門を統括するカヨデ・ジョサイア氏は米DIGIDAYに語った。「多くの人が開発余地のある分野や隙間を見つけてビジネスを展開しようとする。それこそが確実に生き残る市場の証だ」。

どんなコンテンツを提供しているか?

現在、FTは所有している14本のポッドキャスト番組を通じて、週に20本ほどのポッドキャストを配信している。例として「FTニュース(FT News)」を見てみよう。このポッドキャストは、その日の最新ニュースや出来事を教えてくれる8分ほどのもので、1日に2回配信される。

2016年に入ってからは、FTのコラムニストが職業相談から資本主義に至るまで、幅広い質問に答えてくれる「ミセスマニーペニーと聞く失礼な質問(Irreverent Questions with Mrs. MoneyPenny)」と、「FTポリティクス(FT Politics)」の2本をローンチしている。両方とも週に1度配信され、尺は30分から40分程度だ。

「FTポリティクス」は英保守派メディア「スペクテイター(The Spectator)」の元ジャーナリストであるセバスチャン・ペイン氏によって進行されていて、ダウンロード数がもっとも早く伸びている。また、このポッドキャストはアジア圏で制作されているため、グリニッジ標準時間で土曜日の早朝に配信することができるのだ。「これこそが、ほかのポッドキャスト企業が見逃していた市場の隙間だった」と、FTのインタラクティブ部長マーチン・ステーブ氏はコメントしている。

ジャーナリスト教育の賜物

FTには音声のみしか取り扱えないプロデューサーやジャーナリストが大勢いる。しかし、ジャーナリストたちのほとんどがポッドキャストを扱えるのだ。これは、世界のどこにいても記者たちがiPhoneなどを使用して「FTニュース」を制作できるようにジャーナリストたちを訓練したからだ。「制作工程を民主化した」と、ステーブ氏は話している。「私たちはひとつのリソースに頼ったりしない」とも、彼は付け加えている。

ソーシャル動画のように、FTはポッドキャストを常に無料で提供してきた。新たな潜在顧客を発掘するために、ブランド力を見せているのだ。どのプラットフォームであろうと、最優先事項はリスナーの耳にリーチすることだ。現在、FTはスティッチャー、iTunes、サウンドクラウド、スポティファイ(Spotify)やオーディオブーム(Audioboom)でポッドキャストを配信しているが、最近では新たにスウェーデンの新興プラットフォームであるエーキャスト(Acast)でも配信を行っている。ちなみに、エーキャストはFTの技術提供企業でもある。

「エーキャストのおかげで、ポッドキャストを配信するすべてのプラットフォームでプリロール広告を挿入することができるようになった。また、過去のバックナンバーにまで挿入することができる。たとえば、『FTマネー(FT Money)』シリーズのすべてのエピソードで、広告主が広告を掲載することができるようになったのだ」と、ジョサイア氏は話す。ほかのプラットフォームでは、それぞれのエコシステムにのみ広告の掲載を許可しているのが現状だ。

ポッドキャストにおける今後の課題

ジョサイア氏も、ポッドキャストがさらに進化するには、より革新的な広告形式が必要だと認めており、さらにしっかりとした指標も必要だと話している。「これから多くの動画や音声コンテンツが収束していくだろう」と、彼は言う。「広告主用の指標や広告の透明性など、ポッドキャストが強く意識していることは多くある」。

現在、多くの動画はストリーミングによって消費されているが、ポッドキャストはいまだにその多くがダウンロードだ。これが主要指標となっている。しかし、スティッチャーなどのプラットフォームがストリーミング配信サービスなどを始めていて、流れは変わろうとしている。リスナーが離脱するタイミングなど、ストリーミング配信へ移行することによってパブリッシャーはさらに多くの指標を得ることができるのだ。

同様に、音声にも映像などの要素が足されていく。「音声コンテンツを、映像を重視するプラットフォームで売り込むことは難しい」と、ステーブ氏は言う。「これから、音声コンテンツを売り込むための偽動画が増えることだろう」。

このTwitterで拡散された統合運動障害についてのコンテンツのように、現在FTはソーシャルメディアでオーディオグラムを実験している。「Facebookの動画自動停止機能が登場した後に字幕付きの動画が流行したが、これはそれのまさに逆だ」と、彼は最後にコメントした。


もちろん、アトリビューションは解決するのに難しい問題だ。2016年、FTはリスナーを特定のURLに誘導する実験を繰り返し行うことにより、ポッドキャストと購読契約の直接的関係性を探ろうとしている。

Lucinda Southern(原文 / 訳:BIG ROMAN)
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