Facebookへの警戒、いまだ怠らないパブリッシャー:「得るものより与えるものの方が多い」

Facebookがパブリッシャーを支援するために取ってきたすべての措置に関して、ふたつの新しいレポートが出た。実際に市場を掌握しているのが誰かについて、はっきりと思い出させてくれる内容だ。

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まずは、トラフィック分析企業パセリ(Parse.ly)のデータ(上図)だ。2500サイトを抱える同社のネットワークでは、パブリッシャーにとって参照トラフィック元としての地位が低下したFacebookを追い抜き、Googleが最大の参照トラフィック元になっている。次に、ソーシャルアナリティクス企業バズスモー(BuzzSumo)は、2017年1月以降、パブリッシャーやブランドからの投稿8億8000万件において、Facebookのエンゲージメントが20%低下したと報告している。

Facebook絡みの売上は平均3%

パブリッシャーはこれまで、Facebookに対して不安を抱いてきた。パブリッシャーは、Facebookで頑張り続けるためにさらに多くのことをしなければならない時期に来ているが、一方で、世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)の調査によると、売り上げのうちFacebookが見返りとして払う分はほとんどなく、平均では3%にとどまる。

こうした理由については、さまざまな説がある。Facebookによるアルゴリズム変更がパブリッシャーに不利に働いている、Facebookがパブリッシャーにプロモーション費用を払わせたがっている、Facebookで直接視聴される動画に力点が置かれ、パブリッシャーの自社サイトへのリンクが入り込む余地が減った、などの説だ。

動画に関する説の証拠として挙げられるのは、Facebookがパブリッシャーに対して、同プラットフォーム用の動画を制作するよう促しており、動画投稿の方がテキスト投稿よりもエンゲージメントが高いことだ。Facebookは、新しいタブ「Watch」向けにテレビ風の番組を制作するパブリッシャーたちにいくらかの金を出しているが、パブリッシャー側はそれが一時的な措置だと見ている。Facebookは、パブリッシャーのニュースフィード動画の途中でも広告を流してきたが、そうした構想はまだテスト段階で、どの程度成功するかは現時点でまだわからない。パブリッシャーは、Facebookが求めている動画の提供にリソースを投入できるが、それが売り上げにつながるとは限らない。

パブリッシャーが陥るジレンマ

動画の売り込みによって、パブリッシャーはジレンマにも陥っている。オーディエンスを自社サイトに引き付けて、直接的なつながりを構築する必要があることはわかっているが、Facebookがユーザーを自社プラットフォームにつなぎ止めたがっているからだ。

Facebookはオーディエンスにリーチする一手段として評価されているが、2017年に行われたアルゴリズムの変更と、売り上げに対するその影響は問題だと語るのは、コンプレックス・ネットワーク(Complex Network)で製品およびオーディエンス、事業開発を担当するバイスプレジデントを務めるスコット・チャーキン氏だ。

「Facebookは明らかに動画を優先しており、オーディエンスをできるだけ自社プラットフォーム内に留めておこうとしている。メディアブランドにとってはそれが実に問題だ」と、チャーキン氏は指摘する。「動画は分散型メディアであり、パブリッシャーのサイトではなくソーシャルプラットフォームで主に視聴される。なので、テキストや写真であるか、動画であるかに基づいて、オーディエンス開発に関する考え方を変えることが大事だ。動画にシフトするなかで、完全に分散型モデルの採用を検討するのが一部のパブリッシャーのあいだで流行っていた時期があった。だが、最近は、自社が管理するサイトでオーディエンスと一対一の関係を育みたいという方向に、流れが戻ったと思う」。

対話は増えたが、警戒は怠らない

Facebookへの依存度が比較的低いことを誇りにしているパブリッシャーにとっても、Facebookは主客転倒だ。コンデナスト(Condé Nast)は、22ブランドのウェブサイトの速度を向上させてきたが、これはFacebookがパブリッシャーに奨励していたことだ。ブランド全体では70人以上がオーディエンス開発に取り組んでいる。かなりの時間がFacebookに費やされ、Facebookに投稿する動画の量に気を配り、動画があらゆるタイプのコンテンツのなかでもっともエンゲージメントが高いことに彼らは気づいていると考えるのが妥当だ。その甲斐あって、60%を超える同社ブランドで、Facebookからの参照トラフィックが前年比で増加していると、デジタル担当ゼネラルマネージャーであるマット・スターカー氏は言う。

今年重要なのは、Facebookが自分自身のPR面で危機的状況に陥っていることだ。測定間違いやフェイクニュース、ロシア工作員による政治的な広告、人種差別主義的な広告などが問題になった結果、Facebookは信用を回復し、パブリッシャーの事業を支援するために、聞き取りツアーや、インスタント記事のマネタイズ手段の追加、有料サブスクリプション機能の計画的テストなど、さまざまな措置を講じてきた。そのなかには、象徴的な措置もあれば、実質的な措置もあった。

パブリッシャー側は、Facebookと以前より生産的な対話をしていると渋々述べているが、それでも警戒は怠っていない。

Facebookにとって良いPRとは?

ニューヨーク・メディア(New York Media)のデジタル担当ゼネラルマネージャー、マイケル・シルバーマン氏は、「Facebookのインスタント記事に全面的に進出してはいない。自社の標準的なモバイルページよりマネタイゼーションが劣っているからだ」と語る。「Facebookとその大きな影響力には警戒を続けている。FacebookとGoogleによるデュオポリー(2社による独占)の力と、両社が掌握するデジタル売り上げのシェアは、パブリッシング業界全体にとって大きな問題だ。彼らは、エンゲージして意見を聞くことに以前よりも意欲的になっているようだが、実際に何を変えるつもりなのかは、これからわかるだろう」。

パセリの共同創設者でもある最高技術責任者(CTO)、アンドリュー・モンタレンティ氏は、これまでFacebookやGoogleにはアルゴリズムの変更が付きものだったが、消費者の信頼という問題を抱えている点が以前とは異なると述べる。Facebookの場合、フェイクニュース問題に関してユーザーの信頼を取り戻すために、もっと頻繁にアルゴリズムを微調整して、1種類のニュースソースを優遇していないように見せるかもしれない。このことは、アルゴリズムをもっとオープンにするようパブリッシャーが求める際に利用できるかもしれないと、モンタレンティ氏は指摘する。「期待しない方がいい。だが、そうするのに適したタイミングのように思われる。そうすれば、GoogleとFacebookにとって良いPRになるだろう」。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)