「俯瞰」だらけのレシピ動画、差別化に挑む新興サイト:「クッキングパンダ」の挑戦

俯瞰撮影の料理動画は、Facebookアルゴリズムの特徴を生かして大量のビューを稼ぐ、もっとも簡単な方法かもしれない。だが、新興料理サイトの「クッキングパンダ(Cooking Panda)」は、差別化が必要なことを理解している。

料理動画界の新顔

「クッキングパンダ」は、Facebook料理動画の世界では、どちらかというと新顔だ。米パブリッシャーのレンダーメディア(Render Media)に買収された2015年末の時点では、Facebookページのフォロワー数は70万人。当時、このページは主に、ほかのWebサイトに掲載されたレシピへのリンク集として使われていた。

アナリティクス企業チューブラー・ラボ(Tubular Labs)によると、現在のフォロワーは530万人にのぼり、今年7月の動画再生回数は約8120万回だったという。Facebook料理分野の巨人、BuzzFeedの「テイスティ(Tasty)」や「テイストメイド(Tastemade)」の足元にも及ばない(7月のテイスティの動画閲覧数は18億回、テイストメイドは6億8300万回)とはいえ、この短期間で「クッキングパンダ」が目覚ましい成長をとげたのは確かだ。

「クッキングパンダ」の動画は現在、調理風景を俯瞰撮影したものが80%以上を占める。これと同じ撮影スタイルは、Facebook上に料理動画を掲載するほかのパブリッシャーにも広がっている。俯瞰撮影動画は、「クッキングパンダ」のFacebookページの成長に貢献したが、さらには、いくつかの関連ページも派生させることになった。具体的には、「フードパンダ(Food Panda)」「ベーキングパンダ(Baking Panda)」「ティプシーパンダ(Tipsy Panda)」などだ。それでも、創業5年、従業員数35人のレンダーメディアは、競合する集団から自社ブランドを差別化するため、さらなる取り組みが必要だと認識している。

俯瞰撮影からの差別化

「みんな似たり寄ったりだと、はっきり認識している」と語るのは、レンダーメディアの共同創業者で会長のアイタン・エルバス氏。同氏は、「Googleアドセンス」を共同で立ち上げた人物としても知られている。「料理動画をたくさん見ているうちに、その動画を掲載したのがどこなのか、わからなくなるかもしれない」。

差別化をはかるため、レンダーメディアは、新たなコンテンツのスタイルで実験を始めている。「クッキングパンダ」は、2つの動画シリーズのパイロット版を公開した。「 クッキングパンダの冒険(Adventures of Cooking Panda)」と題したアニメーションと、旅行・ライフスタイル番組「ワンダーラスト(Wanderlust)」だ。

ただし、これらの動画は、まだ俯瞰料理動画の人気には遠く及ばない。「クッキングパンダ」のFacebook動画の再生回数は平均約130万回だが、「クッキングパンダの冒険」の初回エピソードの再生回数は、1週間でわずか9万1000回だった。

高エンゲージメントが追い風

ほかの料理パブリッシャーも、Facebookにおける差別化の必要性を認識している。たとえば、ロンドンに拠点を置くFacebook料理ページ「ツイステッド(Twisted)」は、ユニークなレシピで違いを見せようとしている。一方、「テイストメイド」は、旅行・ライフスタイル動画シリーズを制作し、Facebookの「ライブ動画」を大々的に活用している。

レンダーメディアのエルバス氏は、「いまから1年後にチェックしたら、我々のページでも、業界全体でも、俯瞰料理動画は減っているはずだ」と語る。

エルバス氏によれば、「クッキングパンダ」にとっての追い風は、エンゲージメント率の高さだ。チューブラー・ラボによると、「クッキングパンダ」Facebook動画の「いいね!」、コメント、シェアの数は、テイスティを16%、テイストメイドを40%上回るという。また視聴の3分の2は10秒以上なので、かなりの人が実際に見ているようだ(Facebookの基準では3秒以上がパブリックビューとされる)。

いまのところまだ成長フェーズ

動画での差別化だけでなく、レンダーメディアは、ほかのプラットフォームでも「クッキングパンダ」の勢力拡大を進めている。チューブラー・ラボによると、インスタグラムにおける「クッキングパンダ」のフォロワー数は14万4000人、Vineでのフォロワー数は12万1000人。7月の動画再生回数はそれぞれ9万8000回、890万回だった。さらにSnapchat(スナップチャット)にも進出している。

「5つの主要ソーシャルメディアプラットフォーム、すなわちFacebook、YouTube、Snapchat、Vine、インスタグラムはすべて、我々に力強い成長の機会をもたらしている」と、エルバス氏は話す。「Facebookが大きくリードしているが、我々は当然、すべてのソーシャルプラットフォーム上で取り組みを強化したいと考えている」。

レンダーメディアは、動画チーム11人とソーシャルチーム4人の体制で、「クッキングパンダ」のコンテンツとソーシャル戦略を統括している。少数精鋭の組織で臨んでいながらも、「クッキングパンダ」はまだ利益を出していない。これは、レンダーメディアが成長を優先させていることが一因だ。

ブランデッドコンテンツに賭ける

とはいえ、クッキングパンダの売上は好調だ。レンダーメディアは、「バンブルビー・ツナ(Bumblebee Tuna)」「スターファインフーズ(Star Fine Foods)」など、6社ほどの小規模広告主とブランドコンテンツ契約を結んだ。彼らのほぼすべてが契約を更新したと、エルバス氏は明かす。

「現時点で我々がソーシャルで売上を出す方法は、ブランデッドコンテンツしかない」と、エルバス氏は語る。「だが、今後2年ほどで、さらに多くのブランドがソーシャルでのブランデッドコンテンツに参入するので、(その売上が伸びて)大きな利益を出せると見込んでいる」。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)