「誰もが不正トラフィックから利益を得ている」:あるメディア監査人の告白

広告詐欺をめぐる論議がかつてないほど盛り上がっているが、その撲滅に至るまでに、デジタルメディアは長い道のりを進む必要がある。

業界人に匿名で本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、ベテランのメディア監査人に、現在のデジタル広告にはびこる詐欺を一掃するために必要なことを聞いた。

以下のインタビューは、一部を編集、要約している。

――監査人として、広告詐欺の蔓延をどう考えるか?

我々が担ってきた役割は、企業が提供するサービスの効果が業界のガイドラインにそって測定されているのを保証すること。つまり、人間のオーディエンスに広告が届いているのを確かめることだ。自発的に監査を受ける企業はたいていクリーンだ。広告詐欺の問題は、中間とロングテールの企業に広がっている。市場が大手と同等の説明責任を求めてこなかったので、悪質な企業が不正を隠す余地が生まれているのだ。

――パブリッシャーはトラフィック偽装にどんな手を使う?

もっとも広く使われているのは「トラフィック誘導」だ。ここに不正が蔓延している。トラフィック誘導それ自体が悪いわけではない。だが、オーディエンスを増やすためにトラフィック誘導を利用する場合、カウントされるオーディエンスは、実際にはボットの可能性がある。

――広告主はほかに何を警戒すべき?

一部のパブリッシャーは、トラフィック誘導しか能がない。こうした手合いはコンテンツが乏しいのが特徴で、一発屋のパブリッシャーが多い。彼らは不正を行っていることすら自覚していない。パブリッシャーは概して人手不足なので、自社サイトのトラフィックを十分に監視しているわけではない。最近、ある新興パブリッシャーの監査をしたところ、サイトにGoogleアナリティクスのタグを3つ埋め込んで、トラフィックを過大評価していた。タグは1つだけにすべきだ。パブリッシャーが新しいタグを追加する際、古いタグを削除する必要があるのに、それを知らないケースもある。

――広告主はほかに何を問題にしている?

透明性だ。広告主は、どこに広告が表示されるのかも知らされない。取引の際、パブリッシャーが出稿先を詳しく説明してくれないのだ。

――これら一連の問題に対して、監査人には何ができる?

我々は、監査対象の企業がしかるべき情報を開示しているかどうかを確認する。対象がデマンドサイドプラットフォーム(DSP)の場合は、広告主の求める基準に満たないインプレッションにまで値段をつけていないかを検証する。サプライサイドプラットフォーム(以下SSP)は、提携パブリッシャーの質を保証する責任を負っている。我々は、SSPがパブリッシャーを査定する基準を持ち合わせているかを確かめる。一部のネットワークは、ポルノや暴力的コンテンツでも喜んで受け入れる。だが、監査を受けている企業はごくわずかだ。

――監査を受ける企業が増えないのはなぜ?

こうした監査の費用は、高額になる場合もある。メディア評価評議会(Media Rating Council)の基準に準拠した監査の場合、費用は数十万ドル(数千万円)にのぼる。パブリッシャーはこれを出費とみなし、投資とは考えない。マーケター側から監査を求める必要があるのだが、まさにそうした働きかけが欠けている。デジタル広告がサプライチェーンに入ってきたとき、その売上は微々たるものだった。いまやデジタル広告がテレビ広告の売上を超える時代だ。しかし現実には、変化を促すインセンティブが存在しない。変えようとするパブリッシャーは、売上の面で大打撃を受けることになる。誰もが不正トラフィックから利益を得ていて、広告主がそのツケを払わされているのだ。

一般消費財メーカーP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)のグローバルマーケティング責任者、マーク・プリチャード氏は、インタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:IAB)の年次リーダーシップミーティングで、より高度な説明責任を求める声明を発表した。それがP&Gの方針だ。しかし、他社のマーケターがこれに同意するという話は聞かない。マーケターらは、広告枠を大量に購入する傾向があり、その一部が詐欺であることを受け入れている。ビジネスをするうえでの単なるコストとみなしていて、犯罪者に大金を渡しているという意識がないのだ。

――広告詐欺防止や、広告インベントリの説明における透明性向上の取り組みをどう評価する?

広告詐欺対策に取り組む業界横断団体トラストワージーアカウンタビリティーグループ(Trustworthy Accountability Group:TAG)が設立されたのは前進だが、ほとんどの企業はガイドラインに従わない自主監査を行っている。私は、自主的に監査していたと考えられる企業に監査に入り、現在彼らは改善要求に対応している。この企業は、ガイドラインを順守しているかのように市場で振る舞っていたが、実際はそうではなかった。要件のひとつに四半期ごとの監査の実施があるが、実際には実施していなかったのだ。

――その企業は例外的なケースだと思うか?

私の推測では、自主監査の企業を調べたら、ほぼ間違いなく問題が見つかるだろう。どの会社もそうだ。

――クライアントの監査に入るときはどんな雰囲気?

たいていの場合は丁重な応対をしてもらえる。ただし、険悪な瞬間もある。抜本的な改善を求め、証拠を示すと、普通は受け入れられる。反論の芽ごと摘み取るからだろう。

――ワイロを持ちかけられることは多い?

古き良き時代には、パブリッシャーは監査人のご機嫌取りをしたものだ。ランチをおごって、多少の難を見逃してもらおうとした。いまでもランチの誘いは珍しくない。だが、20ドルの食事で買収される人間にこの職業は向かない。

LUCIA MOSES(原文 / 訳:ガリレオ)