米「Engadget」、デザインとともに編集方針を一新 〜テーマを広げ 収益拡大を目指す

AOL傘下のテック系サイト、「Engadget」は、単なるテクノロジー・ブログ以上のものになりたがっている。

「Engadget」の米・英国版は、新デザインを採り入れたサイトを公開するとともに、ガジェットのレビューにとどまらず、音楽や芸術、文化、政治、プライバシー問題などの分野でテクノロジーが果たす役割に焦点を当てるという新しい編集方針を明らかにした。

ハフィントン・ポストの元CEOで、現在はAOLのコンテンツおよび消費者ブランド担当プレジデントを務めるジミー・メーマン氏は、次のように語る。

「私たちはいままで、アーリーアダプターたちに向かって語りかけてきた。しかし、コンテンツという視点で考えるならば、テクノロジーは、さまざまな分野で人々の生活の中心を占めるものとなった。新しくなったサイトを見れば、それがお分かりいただけるだろう。そしてもちろん、この刷新により収益化の機会も広がる」。

オタク系だけでは持続できない

編集方針の拡大は最近よくあることだ。米新興メディア企業Vox Mediaの傘下にある「バージ(The Verge)」は先ごろ、そのルーツであるオタク系の話題から大きく踏み出し、技術と社会の交わりを取り上げるようになった。事実、「バージ」のなかで自動車を取り扱うセクションは、トラフィック全体の30%を生み出している

インターネット調査企業のコムスコア(comScore)によると、「Engadget」には、米国で1100万人弱、英国では140万人の月間ユニークビジターがいる。同サイトはここ数年、ガジェットを紹介するブログから、姉妹サイトである「ハフィントン・ポスト」のように、より独自性の強いニュースを伝えるサイトへと変貌してきた。

オリジナル動画も重要な戦略

オリジナル動画もまた、前面に押し出されはじめた。ホンダのようなブランドが、「Engadget」でもっとも人気のある動画、たとえば、オランダの非営利団体マーズワン(Mars One)が進める火星移住計画の入植最終候補者5人を取り上げた「シチズン・マーズ(火星市民)」シリーズなどのスポンサーについている。

人気のアドバイス番組「ディア・ベロニカ(Dear Veronica)」の第2シーズンが12月第1週にサイトに登場したし、編集者が街に出てテクノロジーを自らテストする新作動画「アフター・アワーズ(After Hours)」も同じ週に始まった。

読者をつなぎ止めることが重要

記事として取り上げる内容を広げてより多くのオーディエンスにアピールしていくことには、当然ながら、野心的な収益化プラン、特にネイティブアドを通じた方法がついて回る、とメーマン氏は言う。これは、プログラマティックに実行できるインストリームな「ネイティブアド」ユニットだけでなく、カスタムメイドのブランデッドコンテンツとの提携も意味する。

「オーディエンスにそっぽを向かれるような広告を置きたくはない。オーディエンスを効果的に収益へつなげるとは、彼らをそこにつなぎ止める方法を見つけることを意味し、ここでネイティブアドとブランドデッドコンテンツがうまく機能するのだ」とメーマン氏は説明する。

もちろんモバイルファースト

サイトのデザイン一新は米国と英国では12月2日に始まり、ドイツ語版、スペイン語版、中国語版、日本語版では2016年に行われる予定だ。

モバイルもまた強く意識している。モバイルにおける広告のチャンスは、通常のディスプレイ広告ではなく、動画に注力するとともに、コンテンツとスクリーンサイズにうまくなじむ広告体験を提供することになるという。メーマン氏は、「バナー広告は理想的とは言えない」と述べている。

広告主は関わりを求めている

これは、時代を先取りし過ぎた動きというわけではない。広告世界6位ハバス(Havas)でパブリッシング部門を率いるドミニク・フォークス氏は、「広告主は、コンテンツをただ眺めるだけの人たちではなく、オーディエンスとの関わりを求めている」と述べた。

さらに、よりパーソナライズされたコンテンツ体験を生み出すことに目を向けているという事実によって、「Engadget」は、広告枠の買い手にとっていっそう魅力的な場になるだろうと語った。いままでの「Engadget」のサイトは失望を禁じ得ないものだったという。

米国外の展開をどう改善するか

広告世界5位電通イージスのカラ(Carat)でグローバル最高デジタル責任者を務めるジェームズ・ハリス氏は、「Engadget」は米国外で広告経由の収益化に苦戦していると話す。米国中心のテクノロジープラットフォームというイメージを買い手がもっていることもあって、そこに費用をつぎ込もうとする広告主の数も限られているという。

「テクノロジーというのは、ある点を超えると収益化が非常に難しくなる分野なので、リーチを広げればより多くのパートナーを見つけられるだろう」。

「ハフィントン・ポスト」は、たとえばフランスの「ル・モンド(Le Monde)」など、その地域ですでに確立されているブランドとの提携を通じて、迅速な国際展開をしてきた。だが、このやり方には、こうした提携先のメディアと売上を分け合わなければならないというデメリットがある。

国際的な存在感を拡大する戦略

ハリス氏は、「今回のことは、『Engadget』の売上増加の道を開くとともに、『ハフィントン・ポスト』と並んで国際的な存在感を拡大することを目的とした戦略なのかもしれない」と述べている。

さらにハリス氏は、AOLというのは面白いが理解しにくい組織であり、これがAOLグループ全体の「文化とコード(culture and code)」戦略に歩調を合わせるための計画の一部だとすれば、よい方向に進むステップだとも語った。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via DIGDAY US