ハースト、「エレガントな武器」でグローバル展開を加速:独自のメディアOSの強み

ハーストはプリント出版の老舗だが、現在はそれがグローバルなデジタル化拡大路線の足かせにならないよう注力している。

リソースの保全・共有を行うべく、編集やビジネス面における技術的なバックボーンを構築中の同社。2014年には米国で、いわゆる「メディアオペレーティングシステム(メディアOS)」を本格稼働させ、現在は国をまたいだ46に及ぶマーケットで、「コスモポリタン(Cosmopolitan)」「マリクレール( Marie Claire)」「エル(Elle)」など、300以上のタイトルに実装している。

国際化路線を走りながら、新規市場への参入を支えているのが、この「メディアOS」だ。同社によれば2016年3月、米国外に有する月間読者数は、2億3000万人にのぼり、前年比28%増となっている。「私はこれをエレガントな武器と呼んでいる」と、ハースト・マガジン・インターナショナル(Hearst Magazines International)のチーフデジタルオフィサー、ゲーリー・エリス氏は語った。

このところハーストは、米国を拠点とした数タイトルで、単独路線から協調路線へと切替中だ。最終的にはサイト内コンテンツの20%を、グループ内の別タイトルから提供してもらうようになる。中央のニュースデスクがハーストのサイトネットワークを隈なく探索し、ほかのサイトで利用可能な内容を見つけ出すのだ。

その技術を今度は、世界に向けて利用するという。たとえば、ヨーロッパやアジアに広がる編集チームは、ほかのエリアで好反応を得た記事を見極め、それぞれのマーケットでローカライズするものを決める。そうすることで余分な手間を省くことができると、エリス氏は語った。

「グリーンフィールド」プロジェクト

中央オペレーティングシステムの導入により同社は、未開拓市場に参入する足掛かりを得たことになる。そのような「グリーンフィールド」プロジェクトを、現在ハーストは、ナイジェリア、スカンジナビア、台湾、そして日本において進行中だ。

ハーストのネットワークとつながるデジタルマガジンをローンチすることで、編集と営業チームの効率化を図ることもできる。ナイジェリアを例に挙げれば、デジタル限定の「コスモポリタン」を展開した結果、広告主と拡大するモバイル・インターネット人口を引き合わせることができた。米国の市場調査会社イーマーケター(eMarketer)によれば、ナイジェリア国内の携帯電話所有者は約1億人。そのうち2700万人がスマートフォンを利用しており、2018年には3400万人まで増加する見込みだという。

米国外の雑誌ブランドは、グローバルオペレーティングシステムへと移行中で、「エル」については6月末までにイギリス、オランダ、イタリア、スペインのプラットフォームで展開を開始する。「ウーマンズ・デイ(Women’s Day)」のデジタル版は、スペインで配信開始したばかりだ。

動画への転換

多くのマーケットにニュース担当チームを配置することにより、専門知識の共有という利点が生まれる。これは動画にも有用で、ハーストが資金面でも力を入れている分野だと、エリス氏は言う。たとえば、ハーストはスペインでグルメ・レシピ動画の分野における地盤を固めており、ネットワーク全体への配信を検討中だ。一方アジアやイタリアでは、週刊のファッション関連動画が数多くあり、ほかのマーケットとも共有可能だ。

「私たちには真の専門的技術の引き出しが多くあり、いかにしてそれらを活性化させていくかを、当社ネットワーク上でどのように共有するかという観点から模索しています」と、エリス氏は話した。

地域拠点

ハーストにとって米国に次いで大きなマーケットはイギリスであり、インターネット調査企業コムスコア(comScore)によると月間の読者数は1500万人に上るという。そこでロンドン支部はヨーロッパにおける地域拠点となり、またオンライン売上の推進力となっている。

エリス氏はさらにプログラマティック取引を強化すべく、数カ月のうちに50名のアドテクスタッフを増員し、製品開発、技術面、広告管理、コンテンツ管理、そしプログラマティック広告取引へと、その役割を拡大していく。同社はさらに東京でも同様の地域オペレーティングモデルを構築する予定だ。

Jessica Davies(原文 / 訳:Conyac
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